9話
泣くクリカを美砂とチャロンでその場凌ぎの処置をして一番近くにあった宿の一室を俺達は取った。
本当は別々の部屋にしたかったのだが、どうも祭が近いようで、部屋に余裕がないらしく、下手に移動したら寝る場所を確保も怪しいということで俺も混ぜて4人部屋ということになった。
窓の近くのベットで窓から見えるお星様を見つめながら声なく泣くクリカを俺達はどう扱ったらいいやらと頭を抱えているとチャロンが思い出したかのように俺に呪いを解く方法を聞いてくる。
「それでクリカの呪いは解けるのか?」
詰め寄るように聞いてくるチャロンのワンピースが弛み、起伏の乏しい中が見えそうになり、それを見た場合のリスクを考えて頭を押さえて、「落ち着け」と苦笑する。
勿論、隣でニコニコしてる少女に何をされるか分からない為である。
その話題が出た所でクリカの肩がピクッと動く辺り、廻りを気にする程度には、意外とそれほどダメージはないのかもしれない。
「呪いを解くというより進行を止める方法な?」
そう言いつつ、俺はカバンに触れる。
「やれやれ、ワシの言う言葉に続け」
俺は感謝を告げる意味で、ポンポンとカバンを叩く。
『まず勘違いを正しておこうか。チャロンの妹のクリカがそうなってしまってるのは呪いじゃない。肉体の時間が現実より早く動いてしまう、そういう現象が体に刻まれている。おそらく、そうなる前に空間に生まれた穴に入った事があるはず』
そう言われたチャロンがクリカに問おうと振り返るが、クリカが既に話に着いて来れなくて目を廻してるのを見て、チャロンは涙目になりながら項垂れる。
「クリカに3日前よりももっと前の事を聞こうとした私が馬鹿だったのだ」
そこまで残念なのかと俺と美砂が苦笑したが、気を取り直して続ける。
『まあ、本人確認はできないようだが、おそらく間違いない。で、治す方法なんだが、2つある。1つは、その穴と対になる減速する空間に入る事』
「それはどこに行けばあるのだ!」
『分からない。しかも、仮に穴を見つけても、それが減速する穴か加速する穴かを見分ける方法がない』
チャロンは俺の胸倉に縋りつきながら、「そんなの分かっても意味ないのだ……」と言いながらズリズリと滑り落ちるように膝を着く。
そんなチャロンを後ろから抱き締める美砂が、励ますように言う。
「チャロンさん、まだ諦めないでください。旦那様は2つあると言いました」
美砂に言われたチャロンは弾けるように俺を見てくるので、俺は力強く頷く。
俺は、頼むぞ、という思いを込めてカバンを触れる。
「ケンタロウ! その最後の1つを教えて欲しいのだっ」
『ああ、それはな……』
俺はカバンの説明を聞いて、思わず噴き出してしまい、鼻水が出る。
慌ててチャロン達に背を向けて、小声でカバンに問う。
「冗談はよせ、ちゃんと本当の事を話せよ」
「馬鹿モン、ワシは大真面目じゃ。治す方法はこの2つじゃ」
カバンと言い合う俺を後ろから見てる3人が声をかけにくそうに呼んでくる。
「何か気に障るような事を言った?」
上目遣いで縋るように見てくるチャロンは可愛いが俺は進退窮まるといった状態であった。
俺はカバンに信じるからな、と心で叫ぶと覚悟を決めて、チャロンからクリカに視線を移し、確認を始める。
「大変聞きにくい事なんだが、クリカは男とその……イタしたことはあるのかな?」
「イタした? お父さんに何度も叩かれた事あるのですぅ。あれは痛かったのぉ」
俺は、「ちが――うっ!」と被り振り、再度アプローチに出る。
「そのだな、男と夜の営みの経験はあるのか? って聞いてるんだ」
そこまで言うとチャロンは分かったようで顔を真っ赤にさせる。あの反応でチャロンはまだなんだろうなと分かるが本命のクリカを見る。
だが、クリカはまだ分からないようでクエスチョンマークを乱立させて深みに入ろうとしていた。
俺は、ストレートの言葉しかないかと腹を括る。
「つまりだ、クリカは、せ、せ……」
「旦那様は、クリカさんに、『セ(ズッキューン)』をした事があるのかとお聞きになられたいようです」
俺は横にいる美砂を見つめて額に浮かぶ汗を拭う。
恐るべし美砂である。普段は大和撫子のように清楚なのに、攻める時はアグレッシブである。
だが、美少女がそのセリフを言うと破壊力がでかかったが、ナイス編集。(信頼と安心のバイブル印)
ここまでストレートな聞き方をされて分からない残念さんではなかったようで、真っ赤な顔をしてアタフタし出す。
「それが何の関係があるのぉ? く、クリカが初めてだったらどうなるのぉ」
顔を真っ赤にさせて目をグルグルさせる。
俺はカバンの説明を思い出しながら話し出す。
「現実的な話でクリカの症状を止める方法は、クリカの初めてを体験する事で活動する女性ホルモンの反応と肉体に刻まれた加速がぶつかり合う事で加速を止めるという方法なんだ。つまり、クリカが既に経験した後でその症状になってるなら、止める術は厳しい」
クリカは廻りに助けを求めるように見渡すが、チャロンには「さっさと言って楽になるのだ」と見捨てられ、美砂にはニッコリと笑われるだけといった状態で追いこまれる。
瞳に涙を浮かべながら、観念してクリカは小さな声で吐露する。
「は、初めてですぅ」
俺は、処置する方法がある事を喜び、ホッと溜息を吐く。
「それは良かった。後はクリカの恋人か婚約者がいるなら話が早いんだがいるかい?」
静かに首を振るクリカ。
「じゃ、気になる男とかいないか? この方法は嫌な話だが、レイプや嫌な相手だとまったく効果ないらしく、興味がない相手も分の悪いカケになるんだ」
再び、首を振るクリカは一度引っ込んだ涙を流し始める。
それに俺はギョッとして仰け反る。
「フェェン、そんな相手もいないし、それにクリカはもうお嫁にいけませんっ」
俺がへっ?と首を傾げると、悲しそうにしたチャロンが泣いて喋れなくなってるクリカの替わりに説明してくる。
「今日、壁に挟まってる時に男共に如何わしい目的で弄られたのだ。あれでも致命的だったのだ。しかも、そ、その、ケンタロウにお洩らしする所を見られた以上、まともな貰い手はないのだ」
「はぁ? そんなの俺達が黙ってたら分からないだろう?」
俺がバカバカしいと言うと真剣な顔をしたチャロンが詰め寄る。
詰め寄ってきたチャロンの悲しみに満ちた瞳に飲まれそうになりながら、話始めるチャロンの言葉を聞く。
「例え、ケンタロウ達が口が固いとしても、精霊に問えば真実は伝わるのだ」
精霊に問う方法以外にも色々あると説明される。
それでもおかしいと思う俺は諦めずに聞く。
「男なんて沢山いるんだから、その中にはそういうのを受け止めるのもいるだろう?」
俺がそう言うとチャロンは怪訝な顔をして俺を見てくる。
「何を言ってるのだ? 去年の国の調べで10人、国民を集めたら3:男、7:女 という調べが出てるのだ。廻りを見渡してもも女の方が多いのだ」
チャロンの言葉に絶句する俺を見て、美砂が気付いたように説明してくる。
「旦那様が居られた場所では、殿方の方のほうが多いんですね。今、チャロンさんが言われたように女の方が多く殿方は女を選ぶ立場なのです。なので、少しでも良い条件の女性を選び、沢山娶る事が男性の価値とされてます」
辛そうに説明する美砂にも心を痛めるが、「でもっ!」と言う俺の手を握り言ってくる。
「旦那様、思い出してください。私が穢されたと疑われた時の廻りの男性の態度を……」
本当に辛そうに唇を噛み締める美砂を見て、俺は項垂れる。
確かに、あの掌返しは酷かった。俺は上流階級だけかと思っていたが、あれはこの世界の常識だったようだ。
この比率が、1:9とかだったら立ち位置が逆転して男が守られる女の立場が強いモノだったかもしれないが、この比率はそういう意味では絶妙かもしれない。
そうか、この世界の男性は基本ハーレムなんだ、と考えているとカバンが声をかけてくる。
「今、男は結婚100%だとか思っただろう?」
「違うのかよ」
俺は小声でそういうとカバンの口が溜息を吐くように震える。
「お前の頭はおめでたいな。女とて頭を使って生きておる。お前の世界のような結婚スタイルでならそれもあるだろうが、嫁の数は男が決めていい世界なんだぞ? 女だって順位さえ気にしないなら良い男に嫁ぎたいと思う分、結婚事情は、お前の世界より酷いと思ったほうがいいだろうな」
さっきまでこの世界の男は酷いと思っていたが、今はこの世界の非モテの男に同情で涙が溢れる思いである。
良かった、俺は少なくとも美砂という美少女が嫁でと噛み締める。
「そうか、俺が無知だったようだ。でも、進行を止める方法はこれしかない。救いはクリカはエルフだから人と違って捜す時間の余裕はある。頑張ってみないか?」
俺は真摯の態度でクリカに伝えると目を反らすように床を見つめる。
それを見て、思ってるより絶望的な事だったのだろうかと思い、俺はどうしたらいいのだろう、と悩み始めるとチャロンに見つめられている事に気付く。
チャロンに向き、どうした?と聞こうとする前にチャロンが話し始める。
「ケンタロウ、クリカを嫁に貰ってやってはくれないか?」
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