プロローグ
妖怪や魔物は今でも存在し、それらを退治する祓魔師が暗躍している!
そう主張する人物が身近にいたらどう思うだろうか。
おそらく、大多数の人間は口をそろえて否定するしそれは最もな反応だ。
しかし、もし事実なら彼らはいったいどんな姿なのか想像する人がいるかと思う。
聖書を声高々に唱え華麗に退治する手練れのエクソシストや、日本刀で妖怪を一刀両断する麗しい美女もしくは美少女巫女。はたまた使い魔と息の合った連係で打ち破る青年陰陽師………と、まぁこんな感じだろう。
俺だって物心着く前はそんな感じの存在に憧れ、本気でなろうと思った時期もあった。
そして今、職業的に不可能ではない立場に就いているが俺は実現せず、憧れは憧れのまま終わらせた。
なぜかと言うと
「銃火器に勝るものなどあんまり無しっ!!!」
俺が銃火器オタク、略して銃オタの道を歩んでいるからだ。
そして俺が今やってる行為なのだが
「ゲヒャヒャヒャヒャ!」
「うるせぇんだよコンチクショウがっ!!」
下品な笑い声を上げる極端にやせ細った醜悪な人のようなもの、強欲な亡者のなれの果てである「餓鬼」。
その餓鬼に対して数ある俺の愛銃の一つ。怪獣からファンタジー生物まで対応可能な戦後初の純国産バトルライフル「64式小銃」にタクティカルライトと銃剣を装着し、マガジンを30発入りに変更した64式カスタムを発砲して退魔儀礼済み7.62mmNATO弾が餓鬼を再び冥界へと強制送還し
「ヒャアッーヒャッ!」
「だから黙れつってんだよ!!」
上から飛びかかり俺に齧り付こうとするたぶん74体目の餓鬼を避け、着地した瞬間にこれまた俺の愛銃の一つ。100年近く経った今でもアメリカ人の魂をガッチリと掴んで離さないコルト・ファイヤーアームズ社最高傑作のオートマチック式拳銃、「コルトM1911A1」をホルスターから引き抜いて退魔儀礼済みの.45ACP弾を胴体に叩き込む。
退魔儀礼済みの弾丸を叩き込まれた餓鬼はうめき声を上げながらのたうち回るが、しばらくすると体から火災現場のような真っ黒な煙をモクモクとだして灰になっていく。
「こいつで、ラストかな?」
マガジンをそれぞれ新しいものに交換し、今いる町はずれの廃工場内を軽く一周して残党が居ないことを確かめるついでに、空薬莢を回収してズボンのポケットから携帯電話を取り出して電話を掛ける。
数回のコール音の後に出た年中お気楽な同僚に退治が完了したことを告げると通話を終了する。
そして外に出て別のポケットから小さなガラス瓶を出して、工場内に向けて放り投げて瓶が割れる。
割れて中身の無色透明な液体が空気に触れた瞬間、火をつけたガソリンのように激しく炎を巻き上げると停めておいた私物の原付バイクのエンジンを掛けて帰路に就く。
使用した64式カスタムとコルト・ガバメントだが、格安で購入した中古のサバゲー用ガンケースに入れて背負っている。
真っ黒な煙を上げる廃工場がバックミラーに映り、途中でけたましくサイレンを流す消防車とすれ違うが、明日の朝には〈煙草の不始末による火災〉として全国のお茶の間に知られるだろう。
餓鬼との戦闘の証拠隠滅と知るのは俺と、俺が所属する機関だけだ。
そういえば自己紹介がまだだったな。
俺の名前は稲木 祐太。
一般的なイメージとはだいぶかけ離れた、銃オタの祓魔師さ。
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