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砂漠の星 郵便飛行機乗り  作者: 降瀬さとる
第4章 動く世界・三人の友情編
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歯車

ふと気が向いて、カジの病室の場所を目の前を通りかかった兵士に尋ねてみると、案外近かったので、帰るついでに寄って行くことにしたのだが、行くと既にそこには先客がいた。

ナーウッドとミニスだ。二人は僕が入ると振り向いて挨拶をした。


「あれ? 大将、どうしたんだ?」

「あ、ラシェットさん。こんにちはー」


「どうも。お二人共、もう聴取は?」


「ついさっき解放されたところだ。それでここに来る途中でミニスさんに会って……」

「そうそう」


ナーウッドとミニスは言う。

僕は二人に近づきながら相槌を打った。


「そうですか。それは奇遇ですね」

「へへっ、まぁな。で、カジになんか用事か?」


ナーウッドの言葉にカジは苦笑いをしながら、


「いや、用事がなきゃ、わざわざ来ないでしょう? ラシェットさん、見た感じフラフラじゃないですか」


とツッコミを入れる。

が、それよりも僕はこんな病室のベッドの上でも決してサングラスを外さないカジの姿勢にツッコみたかった。そして、それを全く気にしない二人にも。

けど、とりあえずそのことは置いておいて、話を進める。


「別に用事がなくても来ますよ。心配してたんですから。それにカジさんとミニスさんには改めて、キミがお世話になったことについて、お礼を言おうと思っていましたし」


僕かベッドの端っこに腰掛けながら言うと、カジは手を振って


「やめてくださいよ。船の中でも言ったが、あんなのお安い御用だぜ」


と言った。ミニスもカジの言葉に同意する。


「ふふっ、そうね。というか、むしろ私達がキミちゃんに助けられたことの方が多いくらいじゃないかしら? それに……私達はただ職務を全うしただけ。だから、本当に気にしないで、ラシェットさん」


「カジさん……ミニスさん……」


僕は、またお礼を丁重に断られてしまった。

だから、一度だけきちんと心を込めて頭を下げ、それ以上何も言わないことにした。

たったこれだけのことで、どこかまたお互いの距離を、一歩縮められたような気がした。


「ふふっ、なーんか、本当にキミちゃんの保護者みたいね」


そんな僕を見てミニスが言う。

妙に嬉しそうな顔だ。


「えっ? まぁ……ここまで関わったからには、ちゃんとフォローしてあげたいですし……それにキミはまだ世の中に出て一人でどうこうできる年齢じゃないですからね。忘れがちですけど」


「そうね、キミちゃんしっかりしてるから、つい忘れちゃうけどあの子はまだ中等学校に通ってるはずの年齢だものね」


「ええ」


「学校とか、何か考えてるの?」


僕が頷いていると、ミニスがふいに聞いてきた。

だから、僕はキミとの約束について答える。


「はい。本人の希望で、旅が終わったらメルカノンの学校に通おうと……まだどの学校かは具体的に決めてないんですけどね。だいいち、キミの学力もわからないですし、僕の稼ぎと学費のバランスも取らなきゃいけないですし……ま、情けない話なんですけど」


僕が頭を掻いて言うと、ミニスは首を横に振った。


「ううん、十分立派よ。そこまでしてあげられるなら」


と。さらに、ちょっとの間考えて


「……そっか……なら心配なさそうね……一緒に住むの?」


と、今度はちょっと寂しそうにミニスは言った。


僕はその真意がちょっとわかった気がした。

きっと、ミニスは僕がキミのことを引き受けないなら、自分が引き受けてもいいと考えてくれていたのだ。


僕はそのことがミニスの表情と質問から伺えて、なんだか自分のことのように嬉しい気持ちになった。


「はい、一応そのつもりです。けど、僕は仕事柄、家を空けがちなので……そこは不安ですが」


「そう」


「……あの……もし、ミニスさんが…」


と、僕が言おうとすると、ミニスはそれを遮って、


「ううん……私はボートバルから離れるつもりはないんです」


と突き放すように言った。

が、続けて


「けど……寂しくなったら、いつでも遊びに来てって、キミちゃんに伝えてください」


と言ってくれたから、僕はほっとした。

やっぱり、ミニスは僕と同じようにキミの保護者になってくれるつもりようだ。

僕はそんなミニスの優しい言葉に小さく、けど力強く頷いて、


「はい、必ずそう伝えます」


と応えた。

すると、ミニスはにっこりと笑った。それで、彼女の中にわだかまっていた不安もこれで晴れたのかもしれいなと、僕も安心した。


「ま、いざとなれば俺様もいるしな」


すると、唐突にカジが話に加わる。

が、それをミニスはじろっと睨んで


「あんたなんかに、任せられるわけないでしょ。給料、バイクに注ぎ込み過ぎて貯金もロクにないんだから」


と無碍もない。

カジはぐうの音も出ないようで


「とほほ……やっぱ、そろそろ生活を見直そうかな……」


と力なくうなだれた。

そんなカジの様子を大笑いしながら見ていたナーウッドは、落ち込むカジの肩に手を乗せ、


「まぁまぁ、借金がないだけマシだろう? 俺なんて、稼いでも稼いでもタミラへの借金が膨らむばかりで、火の車だぜ。あっははは」


とあっけらかんと言う。

ミニスはそんな二人を見て


「バカ二人組……」


と呆れたように呟いていたが、それは二人には聞こえなかったようで、互いに「ですよね?」「そうさそうさ」と慰め合っている。僕も、大変失礼だが、この二人には絶対に頼るまいと心に誓った。


「あ、そうだ。忘れるとこだった。俺は今日、これをカジに返しに来たんだった……」


しばらく僕とミニス、カジとナーウッドで雑談していると、思い出したかのようにナーウッドが言い出した。


何かと思えば、ナーウッドは懐から一丁の銃を取り出す。かなり大型のオートマチックのハンドガンだ。よく接収されなかったなと、僕は思う。

それをナーウッドはカジの手へと渡した。


「これ、返すぜ。こいつのお陰でだいぶ助かった。ありがとうな」


銃を受け取りながらカジは目を丸くする。どうやら貸していたことなど、すっかり忘れていたらしい。

だからかは知らないが、カジは銃をナーウッドの方に押し返した。そして、


「いや、この銃はナーウッドさんが持っていてください。なんか、その方が良い気がするんです。それにやっぱり俺には二丁拳銃は無理そうですし……」


と言う。

それを聞いてナーウッドはでもよ……と言ったが、すぐにその言葉を飲み込んで


「へへっ、なら有り難く、もう暫く借りとするかな」


と銃を懐に戻した。


「いつか、気が向いたら返してください。いつかでいいんで」

「おう。いつかな。約束するぜ」


それは「生きて帰る」という約束のようにも僕には聞こえた。


そんなやり取りを終えるとナーウッドはおもむろに立ち上がる。

それを見てミニスが


「なに? もう帰るの?」


と聞いた。

僕もそう思う。が、ナーウッドに


「ああ。これからの方針も決めなきゃいけないからな。だから悪りぃが、大将も借りてくぜ」


と言われてしまったから


「えっ? あ、そうか。まぁ、そうだな」


と、僕もミニスとの話を切り上げ、立ち上がる。


「そっか。もう旅立つのね?」


「ああ、明日にでもな。でも、その前にまず、最初の目的地を決めないといけねぇからよ」


「……そう。なら、私達には、もう及ばない話になるわね」


ミニスは言う。

それに僕とナーウッドは、残念だが頷くしかなかった。


「ええ。ここからは僕達の個人的な旅になるので」


「ああ。でも、俺はあの時、カジとミニスさん、二人に命を助けられて、今ここにいる。だから……うまく言えねぇが……これからも、ずっと一緒にいるつもりで行ってくる。そんな気持ちなんだ。わかってくれるかな……?」


ナーウッドが言うとミニスは笑い、カジはうんと頷いた。


「ふふっ、ナーウッドさんは、相変わらず不器用ね。けど、今度は私がいなくてもラシェットさんもついてるから、その点は心配なさそうね」


「だな。俺様がいなくちゃダメかと思ったが、お二人なら大丈夫そうだ」


二人はそう言う。

僕は決意を新たに、


「ありがとうございます。また必ず、お会いしましょう」


と言い、ナーウッドは


「ああ。必ずな。じゃあ、行ってくるぜ」


と言って扉に手を掛けた。

そして、カジとミニスの


「幸運を!」


という言葉を背に受け、僕達は病室を出る。

本当に、この二人には感謝してもしきれないと思った。



ーー行くところもないので、僕とナーウッドは結局僕の病室へと帰ることにした。

その道すがら、僕達は話し合いをする。


もちろん、これからのことを。まずはどこに向かうかだ。


僕は真っ先にサマルの待つ『記憶の遺跡』なるもののある島に行きたかったが、ナーウッドはその前に行くべきところがあると主張する。

やはりというべきか。ナーウッドはまだ諦めていないのだ。サマルの望みを叶えることを。そして、そのためには……


「アンチオリハルコンかい?」


「そうだ。大将も聞いたと言ってたろ? サマルはショットのやつにオリハルコンを飲まされ、不老不死の体になっちまった。それを破ることができるのは、アンチオリハルコンだけなんだ」


それは聞いた。

これまでにナーウッドと話を擦り合わせている際に、何度も。けど、これも何度も言うが、問題はそこではないのだ。


「殺さないでサマルを救う手段はないと思うのか? ナーウッドさんは」


これを言うと話はいつも暗礁に乗り上げてしまう。

けど、今日はそこから話が少しずつ進み出す感じがしていた。


「……そんなこと……できるならやってるに決まってるだろ。サマルだって、そんな方法があるなら手紙に書いてる。だが、あいつはショットの手から逃れ、自殺を選び、そして俺達に失敗した時の保険を託した。その気持ちがわからねぇとは、俺は言わせないぜ?」


ナーウッドはいつになく凄んで言う。

けど、僕は引かない。


「気持ちはわかっているつもりだ。けど、そこをもう一回考えてみないかと言っているんだ」


「ああ。考えてみようじゃねえか……でもよ、大将のしようとしてることは、ただ無闇にサマルの所に行けば何とかなると、そうとしか考えてねぇって、そんな気がしてならないんだが……違うのか?」


「そ、それは……」


そう言われてしまうと僕は弱かった。

確かにそうなのだ。サマルは殺したくないけど、そのために何をするべきかのアイデアはないのだ。

僕はサマルに会えさえすればなんとかなると、そんな希望的観測しか持ち合わせていない。


僕が言葉を詰まらせていると、ナーウッドはほら見たことかと言う。

言われっぱなしというわけにもいかないので、僕はなんとか口を開く。


「でも、だいたい……それならサマルだって、なんの手段もなく行ったんだろう? なにか方法が遺跡にあるはずだって。なら、もしかしたら助かる手段だって、その記憶の遺跡にあるかもしれないじゃないか」


だが、またしてもナーウッドは首を横に振った。


「かもしれないじゃ、ダメだろ。そこら辺を大将は全然理解しちゃいない。いや、しようともしていない」


と。


「いいか? それでもし、何の用意もせずサマルのところに行って、それで助けることも殺すこともできなかったらどうするつもりだ? それで手遅れになったら? それこそサマルの友人として、その願いを聞いた者として、一番しちゃいけねぇことなんじゃねぇのか?」


ナーウッドは真剣だった。


そして、それは最もだと思った。

だから僕は同意する。


本当は、薄々気が付いていたのだ。ちゃんと色々な可能性を考慮して、できるだけ準備をして行こうとするナーウッドの考えの方が正しいのかもしれないと。


「けど……僕はサマルを殺す手段……そんなものを探しに行ったり、持ち運んだり、そんなこと……したくないんだ」


僕が口に出して言うと、ナーウッドは硬い表情を崩した。そして、カジにそうしたように僕の肩に手を置くと、


「そりゃ、俺だって同じさ」


と言い、さらに続けて


「でも、よく考えてみりゃあ、俺達は誰だって人を殺す手段くらい、いつも持ち歩いているだろう? 特に、俺と大将くらいになりゃ、素手でだって殺せちまう。厄介なことだがよ。でも、誰もそんなことしないし、したいとも思わないし、仮にカッときてそう思ったとしても実行したりなんかしねぇ。それがほとんどだ。つまり……俺が欲しいのは手段であって、ただの保険ってことさ。もちろん、いざとなれば俺は躊躇しねぇし、その覚悟もとうにできてる。けど、俺は大将にその覚悟をしろなんて言わねぇ。言えるわけもねぇ。でも、俺には大将とキミさんの助けがどうしても必要なんだ。だから、頼む」


と言う。

僕はそんなナーウッドの目を見つめた。

彼のグリーンの目には哀しみの色が滲んでいた。


ああ、そうか。哀しくないわけないよな、とその時僕は初めて肌で感じた気がした。


「ナーウッドさん……」

「なぁ、一緒に探してくれ」


「……わかりました。では、まずはそのアンチオリハルコンなるものを探しに行きましょう」


ついに僕が折れて言うと、ナーウッドはよしっとガッツポーズをし、


「ありがとうな、大将!」


と肩を組んで僕を左右に揺さぶってきた。


「痛てててっ!こらっ、やめろ! やめんかい!」


僕はニコニコ顔のナーウッドを何とか振り払う。

こいつ、僕が入院中なのを忘れてやがるな……。


「で? それは何処にあるんだ? というか、そもそもどんなものなんだ?」


僕は早速聞く。が、ナーウッドも


「いや、実は俺にもどんなものかはわからねぇ。それに、そのものずばりがあるわけでもねぇ」


と言う。

また出だしから雰囲気が怪しくなってきた。


「……そのものずばりがないってことは、どういうことなんだ? 製造方法でもまずは探すのか?」


僕が言うとナーウッドは指を鳴らす。


「そう! 勘がいいな、大将は。その通り、俺達は製造方法を探しに行くのさ。場所の方は見当がついてる。まぁ、ほとんどアスカ遺跡で得た情報だけが頼りなんだが」


「へぇ」


アスカ遺跡。キミとミニスと行った時の情報か。


「で、どこなんです?」


「まぁ、ちょっと遠いし、厄介な場所にあるんだけどよ」


「遠いんですね」


「ああ。なにしろサンプトリア大陸の奥地にある遺跡で、現地人からは「コゴモ」って呼ばれてるジャングルの中にあるんだ。俺も二回くらいしか行ったことがなくてさ……でも、そこで俺の知り合いのランド教授っていうジジイが調査をしてるんだ。それが、また偏屈なクソジジイでさ、俺のことを見るなり、ちゃんと研究室に入って研究しろって、いつも説教してきてよ……って、あれ? どうした? 大将?」


ナーウッドは振り返って言う。

僕はいつの間にか足を止め、口をぽかーんと開け、呆然と立ち尽くしていた。


コゴモ、ジャングル、ランド教授、だって?


「な、なんてこった……」


僕はそう言うしかなかった。

そして、天を仰ぐ。


そうか。

あの辺りから僕の運命の歯車は回り始めてたってわけか……ええ、そうですか……はいはい……。


僕は自分に納得させるように、頭の中でぐるぐる考えを巡らせる。

そんな僕の様子をナーウッドは


「だ、大丈夫か?」


と心配そうに見ている。


久しぶりに頭が痛み始めていた。



ーーなんとか、正気を取り戻し部屋に帰り着くと、キミが待っていた。


キミの手にはボッシュさんのメモ帳が。

どうやら、暇を持て余して読んでいたらしい。


「おかえり。二人でどこ行ってたの?」


「カジさんのお見舞い。ミニスさんもいたから、ちょっと話をしてきたんだ」


僕が言うとキミはふくれて


「えー、そういうことなら私も誘ってよー」


と言う。


「誘うも何も、どこにいるかわからないんだから仕方ないだろう?」


「テレパシーがあるじゃない」


「あっ、そうか」


僕はつい失念してしまうが、いざとなれば僕とキミは意識の中で話ができるのだった。確かに、それなら呼べたかもしれない。が、そんなに気軽に使いまくっていいものなのだろうか? また倒れるのはごめんなのだけど。


「ごめんごめん、次からはそうする」


「もー。じゃあ、どんなこと話したか、あとで覗いてやる」


「いや、それもどうかと思うぞ?」


僕はキミにそう言うと、どっと疲れを感じて、ベッドに入り横になった。

やはり、明日ギリギリまで休んだほうが良さそうだ。


「ふんっ。で? ナーウッドさんもここに来たのは?」


「明日からの相談ですよ。ようやく、方針が決まったんで」


ナーウッドも椅子に座る。

相変わらずキミには丁寧な言葉使いだ。


「ふーん、タミラさんのところには行かなくていいの?」


「いいんですよ。あいつは今、整備中ですし。それに、あいつのところに行ったら、すぐに請求書の束を渡されますよ。俺と大将の分。せっせと書いてましたから」


ナーウッドは呆れたように言った。

なるほど、足が遠のくわけである。


「そう。なんか可哀想だけど……それで、私達は明日からどこに向かうの?」


「サンプトリア大陸です。ここより、遥か北東にある、あまり人口の多くない大陸で、都市は南海岸に集中しています。そんな大陸の北部にあるジャングルです」


「へぇ。なんだか、人がいなそうね。ジャングルだなんて」


「いないよ。全然ね。ほら、前に話したことあるかもしれないけど、僕はこの旅に出る前に行ったことがあるんだよ。現地人からコゴモって呼ばれてるジャングルで、そこにいるランド教授に手紙と資料を届けに行ったんだ」


「いやぁ、びっくりしたぜ。まさか、大将があそこに行ったことがあるなんてよ。しかも、あのクソジジイに手紙を届けてたって……あ、そのランド教授っていうのは、俺の知り合いなんですよ」


僕達は興奮気味に話す。

けど、キミは至って冷静で


「ふーん、妙な偶然ね。で、そこに行ってどうするの?」


とメモ帳を捲りながら言った。

それには僕が答えた。


「そこに『神話の遺跡』っていうのがあるらしいんだ。キミもアスカ遺跡で聞いたと思うけど、そこにナーウッドの探してるアンチオリハルコンに繋がる何かしらのヒントがあるらしいんだ。まぁ、確かかはわからないが……」


「でもよ、大将。今はとりあえずそれにすがるしかないだろう? もう立ち止まってる暇はないぜ。いつリッツの野郎に先を越されるかわからないんだからよ」


「わかってる。けど、遺跡に行ってたら、どのみち先を越されるのは覚悟しないと……」


僕達がまたヒートアップしそうになると、キミは捲っていた手を止めて、じーっとメモ帳を読み始めた。

そして、やっぱりと呟くと、


「ねぇねぇ、その遺跡なら、もう行かなくてもいいみたいよ?」


と言う。


「は?」

「えっ……? い、行かなくていいって?」


その言葉に僕達は動きを止めた。

そして、キミが


「うん。ほら」


と、突き出してきたページに吸い込まれるように顔を寄せる。


そして、その少し前の新聞記事の切り抜きの内容を理解すると、僕とナーウッドは同時に


「はぁーーーー!?」


と思わず声を出した。


そこにはこう書いてあったのだ。


「ボート帝大ランド教授。ジャングル遺跡にて新発見。近く、メルカノン博物館にて一般公開予定」


と。

僕達はあんぐりと口を開ける。

そんな僕達を尻目にキミは


「ね? 調査終わっちゃったみたい。だから、ここに行けばいいのよ」


と言ったのだった。


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