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砂漠の星 郵便飛行機乗り  作者: 降瀬さとる
第4章 動く世界・三人の友情編
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救出作戦

あれほど鳴り響いていた銃声と爆発音は、すっかり鳴り止んでいた。


おそらく、途中で別れていったロサーリオ・ベットーレが何かしたのだろう。まだ彼がアストリアの味方だと思われているのならば、兵の配置を僕達に都合のいいように変えるくらい、造作もないことだからだ。


ベットーレのことをまだ完全に信じたわけではないが、僕はこの静けさの原因をとりあえず、そう思っておくことにする。


「ふふっ……」


と、その時リッツが不敵な笑いを漏らした。

そして、


「いや。やめましょう。初めましてなどと……自分で言っていて、白々しくなってきましたよ。あなただってそうでしょう? ラシェットさん」


と尋ねてきた。

僕はそれを聞いて、あの時の場面を思い出す。確かに、僕達は一度あの場で顔を合わせているのだ。


「そうですか。あなたも覚えていらっしゃったんですね?」


「ははは。忘れろという方が無理でしょう。あの場で、あんなことをするなんて、前代未聞でしたからね」


リッツはそう言って、髪を掻き上げた。

僕はそんな仕草を自然とする男を初めて見た気がした。


「前代未聞…やはり、あなたも不敬な男だと思いましたか? 王族の一員として」


「まさか。面白い人だとは思いましたが、不敬だ、などとは思いませんでしたよ。僕はそういう王族の自意識というものが嫌いなんです。まぁ、もっとも、あなたが、よもやサマルくんの古くからの友人だったとは、その時は知りもしませんでしたが……」


リッツはそこで言葉を切った。

そうして、何やら嫌なものでも見るような目をした後、


「ま、挨拶はこの辺にしておきましょう。それよりも、ここの鍵はお持ちですかね? この木製の扉は壊せますが、地下室のあの分厚い扉は鍵がなければ開けられません」


と話題を変えてきた。

それで僕も、本当は色々と聞きたいことがあったが、頭を切り替え、鍵を取り出す。


「それなら心配ない。鍵はここにある」


僕はだんだんと体がほぐれてきたので、リンダの肩から手を離し、リッツに鍵を渡す。リッツはそれを受け取り、


「おお、流石ですね」


と言う。そして、早速それを使い、入口の小さな木製の扉を開けた。

久しぶりに嗅ぐ階段の匂いは、やはり少し黴臭かった。


「さ、行きましょうか。予定よりも時間が押しています」

「ちょ、ちょっと待ってくれ、リッツ王子」

「王子は要りません。リッツでいいですよ」

「わかった……では、リッツ。ひとつ聞くが、この人数だけで本当にあの三人を抱えて脱出まで漕ぎ着けるつもりなのか?」


僕は階段を降りようとしているリッツに聞いた。

すると、リッツは当然のように


「ええ。もちろん、そのつもりですよ」

と言う。

さらに続けて


「ふふっ、これでも色々を策を尽くしたんですよ? それで集まった戦力がこれなのですから、これ以上を望むのは、ないものねだりというものです」


と言うから、僕はこの救出はかなりの困難を要すると思いつつも、納得するしかなかった。

それに僕を助けてくれたのは、リッツの助力を得たリンダなのだ。あまり文句を言える筋合いではない。


そう思いながら、僕がリンダに目配せすると、

「なに、心配するな、ラシェット。いざとなったら、私が三人とも担いでやる」

と彼女は微笑んで言う。

僕はその自信あり気な顔を見て、呆れてしまった。


「いや、リンダ。有り難いんだけど……それ、女の子が言う台詞じゃないだろ」


「ははは、頼もしいね、グラント少尉。じゃ、さっさと行こうか、皆もお待ちかねだ」


そんなことを言って、僕とリッツとリンダは向き直り、階段を下り始めた。



しかし僕は階段を下りながら、王子であるリッツに一人の護衛もついていないのが、気になって仕方がなかった。


そして、さらに奇妙なのは、この階段に一人のアストリア兵も、研究者もいないことだ。


僕はいつも以上にこの階段の冷たさを背中に感じた。


「妙に静かだな……いや、というか静か過ぎる」


僕がそう言うと、リンダとリッツも頷き


「ああ、そうだな。この非常時にこの警備体勢は不自然だ。まだここまでは我々も攻め込んでいなかったというのに……」


と呟く。


僕はそれを受けて「たまたま襲撃した際、ここに人がいなかっただけか?」と考えるが、ここに人が誰もいないなど、僕がここに来て以来、昼間では一度もなかったから、単なるタイミングのよさの問題ではないと、すぐにその考えを捨てた。


きっと、他に何か理由があるはずなのだ。


この階段に一人の警備もいない、その理由が……



そして、僕達はついに、誰とも遭遇しないまま、地下室の扉の前まで来てしまった。


「もしかしたら、この中で大挙して僕達を待ち構えているのかもしれないねぇ?」


リッツがそう言う。

しかし、その言葉に僕とリンダは顔を見合わせた。

扉が分厚くて、わからない部分はあるが、中から人の気配が全然しない気がしたのだ。


「まぁいい。じゃあ、ここは君が開けてくれ、ラシェットくん?」


そう言うとリッツは僕に鍵を投げて寄越してきた。たぶん、扉を開けたらいきなりズドンッなんてこともあるだろうから、僕にやらせるつもりなのだろう。ま、こんなことは慣れているからどうってことはないが……。


「わかりました。じゃあ、開けますよ?」


そう言うと僕は時間がないので、すぐに鍵を差し込み、扉をちょっとだけスライドさせてみた。


リッツは一歩下がったが、爆発などは特に何も起きなかった。トラップはない。


「うん。よし、どうやらここにも兵はいないらしいね」


リッツはそう安堵したようだが、僕はここに誰もいないという事実に、何か薄ら寒いものを感じずにはいられなかった。


「おかしい……いくら何でも、こんな大事な場所に一人も人を残さないだなんて……」


と、その時。


僕はその、ほんの少しだけ開いた扉の隙間から、何か音が聞こえて来ているのに気がついた。


まだ分厚い扉に遮断され、効きづらくなってはいるが確かに聞こえるのだ。


ピーーッ。


という高い電子音が。


「…なっ!? ま、まさかっ!?」


僕はその可能性に思い至るとビクッとなり、まだ動き始めたばかりの体で、思いっきり扉を押した。


そして、人が通れるくらいまで扉を開け放つと、そのけたたましく鳴る高い電子音は、はっきりと聞き取れるようになった。


「はっ!? そ……そんなっ!?」


僕が扉を開くと、それでようやくリッツも事態を把握したらしく、僕を押しのけ、三人のベッドに向かい一目散に走り出す。


僕とリンダもその後を全力で追った。


「そ、そんな……これじゃ…これじゃあ、約束と違うじゃないかっ!」


リッツは走りながら、うわ言の様に漏らす。


そうして僕とリンダがリッツに追いついた時には、彼はイリエッタのベッドの横で立ち尽くしていた。


僕もベッドの様子を見てみる。

やはりそうだった。


三人の生命維持装置の電源が全て切られていたのである。


そう。ショットは、ここを放棄したのだ。


「…ク…クソッが…………クソがーーーーーっ!!」


リッツはそう声を荒げて叫び、膝から崩れ落ちた。


彼の聞いたこともないような、悲痛な叫びが鳴り響く電子音をかき消すように、地下室にこだまする。


「リ、リッツ……」


僕はかけるべき言葉が見つからなかった。


シャクリ上げ、拳を床に叩きつけるリッツを見、ベットに横たわるヤンの姿を見やると、僕もついそうしたくなる衝動に駆られる。


目の前も真っ暗になりかけた……。


しかし。


僕はこの状況をまだ冷静に見ることができていた。


「まだだ……まだわからない」


と。


なんとなく、僕にはまだやれることがあると、そう直感したのだ。


そして、それはリンダも同じ気持ちのようだった。


「リンダ…」

僕がそう言うと、リンダはこくっと頷く。


「……手分けするぞ。まずは、皆に付いている機材を全部引剥してくれ」

「……了解した」


僕達はそう言い合うと、僕はヤンの体に付いたコードや呼吸装置を。リンダはイリエッタに付いた機材を、それぞれ片っ端から外し始めた。


それをリッツは涙だらけの顔で見上げる。


「な、何を……やって…?」


僕はそんなリッツを一瞥して言った。


「ふんっ…僕はね、諦めがすごく悪い方なんだ……だからかな……最後の最後、土壇場の悪運だけは、昔から強いんだよ」


そして、さらに


「なぁ。ヤン達は、そんなに泣き叫ぶほど大切な友達なんだろう? だったら、そんなに簡単に諦めるんじゃない。ちゃんと、その手で助けてやれ」


僕はそう言った。

そう言いながら呼吸器を外すと、僕はすっかりやせ細ったヤンの口元に耳を当てる。


すると、やはり僕の思った通り……


ほんの微かではあるが、まだ息があった。


僕は念の為に首筋で脈も取ってみる。すると、そちらも何とか確認ができた。しかし、その微弱さから、もうあまり時間がないというのは、動かしようもない事実として残った。


リンダを見ると、彼女もイリエッタの生存を確認できたらしく、今度はケーンの機材を剥がしに掛かる。

それを見て僕は


「ケーンさんのことは頼むっ!」


と言うと、目を瞑って両手に意識を集中させた。


そして、イメージを開始する。

イメージするのは……


「い、生きているのか……っ、皆、まだ生きて…っ!?」


「ああ。そうだとは思ったが、おそらくまだここを放棄して間もないんだろう。発見が早くて良かった。でも、決して油断はできない状態だ…」


「油断って……。な、なんとかならないのかっ!? このままじゃあ…皆…っ!」

「だから、今なんとかしようとしてるっ! 気が散るから話しかけないでくれっ!」


僕はそうリッツに強く言うと、再び集中力を高めた。リッツはたじろいで後ろに退がる。


今、僕がイメージしようとしているのはバルスから教えてもらった物の内の一つ<簡易式人工呼吸器>だった。小型の酸素ボンベのついた持ち運び用のそれは、古代人が手軽にどこででも、仮想世界に長期滞在できるようにと、作られたものらしい。

僕はその情報を教えてくれたバルスに感謝しながら、その設計図から形状を思い描いていた。


「ラシェットッ! こちらの男性の脈も確認できたぞっ!」


リンダの声で僕は目を開けた。


「よしっ、こっちもいけるぞっ!」


僕がそう言って、両手を前にかざすと、そこに黄色い光が集まり始めた。それは、最初はとても淡い光だったが、だんだんと濃く色づき、輝き出す。


「こ、これは…リッツ王子のものと同じ光…?」


リンダが小さくそう呟いたのが聞こえた。

その横でリッツは呆けた顔でその光を見つめている。


やがて、その光は収まり、僕の両手の中にはイメージした通りの人工呼吸器が三つ、無事に転送されてきていた。自分でもまだ信じられないが、どうやら僕は初めて転移術とやらを成功させたらしい。


「よかった……なんとかうまくいった。じゃあ、リッツ、これを皆に付けてやってくれ。これでまだ少しは保つはずだ」


僕がそう言ってリッツに呼吸器を差し出すと、彼はまだ信じられないといった顔をしたが、それも一瞬のことで、すぐに持ち前の生意気そうな顔つきに戻って、


「……わかった。ありがとう」


と言い、作業に取り掛かってくれた。


「スイッチは右の側面に付いている。酸素ボンベの栓を開けるのも忘れないでくれ」


僕はリッツの背中に向かいそう指示を出すと、次にやるべきことのためにコンピューターの前に行く。

すると、それを見たリンダが


「そっちに行ってどうするんだ? ラシェット」


と聞いてきた。だから僕は辺りを探しながら


「ヘルメット型の端末を探しているんだ。あれを使って、皆を呼びに行く! ちゃんと意識があった方が助かる見込みが増す気がするんだ」


と応えたが、リンダはそう言われても何のことか、さっぱりといった感じだった。まぁ、それも当然なのだが。


僕は身を屈めて下の収納棚を漁る。しかし、いつもはそこにあるはずの端末は忽然と消えてしまっていた。おそらく、研究員が持ちだしたのだろう。クソっ、こんなことならば、僕が使っていたあの端末を持ってくればよかった。そんなことも計算に入れていなかった自分に、僕は腹が立った。


「ちっ…でも…今からあそこに取りに戻っている時間なんて……」


僕がそう考えていると、突然リッツが


「トカゲッ!」


と声を上げた。


ト、トカゲ?


と僕は思う。すると……


「…はい、リッツさん…」


と、なんとトカゲが部屋の真ん中に姿を現したではないか。


僕は驚きのあまり目を見開いた。


そうか。どうりでリッツに護衛がいなかったはずだ。既にリッツには、トカゲという護衛が、姿の見えない形でついていたのだ。


「トカゲ、お前の持っている僕の端末を、ラシェットさんに貸してやってくれ」

「……かしこまりました」


「ぼ、僕の…端末?」


そう僕が疑問に思う暇もなく、トカゲは大きな革の鞄の中から、僕の使っていたものとは少しデザインの違う端末を取り出すと、素早く僕の前まで持って来てくれた。


僕はその姿を、なんとも複雑な気分で見つめる。


だって彼は、散々僕を振り回し、そしてキミを人質に取ろうともしたのだ。

僕はそれを忘れることなどできない。


「クックック…お久しぶりです。ラシェットさん」

「ああ、久しぶりだな……なぁ、この場合、ありがとうと言うべきなのかな?」

「クックッ……ご無理はなさらずとも結構ですよ。あなたの仰りたいことはよくわかります」

「…そうか。じゃあ、これは僕の貸しいちでいいんだな?」

「ええ。もちろん。クックック、それで構いませんよ?」


トカゲはそう言うと端末を差し出した。

だから、僕はそれを受け取り


「わかった。じゃあ、この作戦が終わったら、色々と聞かせてもらうぞ…」


と宣言すると、それ以上は言わず、早速端末を被った。端末を被ることにはもう、以前のような躊躇はない。


そして、リンダに向かって


「リンダッ、呼吸器を装着できたら、僕と皆の意識が戻らなくても脱出を開始してくれ。予定より、担ぐ人数が増えてしまって悪いけど……」


と言ったのだが、リンダは僕の言葉を鼻で笑って


「ふんっ、一人増えたくらい、私にはどうってことないさ。ちゃんと全員担ぎ出してやる。だから安心しな」


と言った。

相変わらず、女子の発する言葉ではなかったが、僕はそれを物凄く頼もしく、また温かく感じた。


「…ありがとう。じゃあ、よろしく頼む。リッツとトカゲもな」


僕がそう声を掛けると、皆頷いた。

僕はそれを確認すると、手近な椅子に座り、端末のスイッチを押す。


ついさっき、こっちに帰って来たばかりだというのに……。


           ☆


またいつもの暗闇だ。


しかし、暗闇には、バルスもサマルもいなかった。


「まぁ、当然か」


いや、わざと姿を見せないのか?


とにかく僕はこの空間は、やたらと時間を食うのをわかっていたから、彷徨うのは止め、すぐにイメージに入る。


目指すは、あの山小屋だ。


            ☆


僕があの山小屋に姿を表すと、三人は意外そうな顔したが、やがて顔を引き締めて


「これで二度目の来訪ね。ということは、サマルの言っていた通り、もう帰っていいってことかしら?」


と言った。

僕はその言葉に頷き、そう言ったヤンに向かって


「そうです。そうなんですけど……帰ってもいいからって聞かれると…」


と言いかけると、今度はその言葉を拾ってケーンが


「……そんなことない…つまり、事態はもっと深刻ってことですかね?」


と聞いてきた。さすがに察しがいい。だから僕は、それにも大きく頷かざるを得なった。


「ええ……残念ながら。実は今、僕達は脱出作戦を決行中なのですが……その前に、皆さんの体の残りの体力が尽きようとしているんです」


「なるほど。そりゃあ、最悪ですな」

「はぁ…後は気力でカバーってとこかしら?」

「ふふふ、そうね」


僕は割りと真剣なトーンで言ったつもりだったが、皆は事実を知らされても、なぜかのほほんとそう言った。

それを聞いて僕は


「ちょ、ちょっと皆さん、冗談じゃないんですよ? もっと緊張感を持ってください」


と言う。

が、そう言ってみたあとに、それもなんだかバカバカしくなってしまった。


だって、きっと三人の、こののんびりと構えた感じは、仲間を信じているということの証拠なのだから。


サマルが

「きっとラシェットという男が助けてくれる」

と言えば、それは彼女らにとっては、疑いようもない予言なのだ。僕はそんなに信頼されているサマルを誇らしく思った。


「で、あっちでは誰が助けに来てくれたわけ?」

そんなことをヤンが聞いてきた。


「リッツと、それと僕の友人です」

「そっか。リッツね。まったく……あの野郎、遅すぎだっつうの! ねぇ? イリエッタ?」

「ふふっ、そうね。まぁ、リッツくんらしいけど?」


ヤンとイリエッタはなんだか嬉しそうに話している。

それを僕が呆れた様子で、口をへの字にして見つめていると、ケーンが見かねたのか僕の隣に来て


「あなたと、あなたのご友人の方々にも感謝しなければなりませんね」


と言ってくれたので、僕はその言葉がむず痒くて、頭を掻いた。


「そう言っていただけると、あいつらも喜ぶと思います。しかし、その話はちゃんと助かってから、改めてしましょう」


それから僕が、今一度気を引き締めるためにそう言うと、リッツの話をしていたヤンとイリエッタもこっちに向き、


「ええ。そうしましょう」


と力強く拳を突き出す。


僕とケーンはそれを見て目を合わせると、二人に歩み寄り、同じように拳を突き出した。


そうやって4人で拳を合わせると、僕達はニコッと笑い合う。


「じゃあ、また現実で会おう」


そして、そう言うと目を閉じ、それぞれ暗闇の中に戻って行った。


僕は暗闇で考えていた。


そういえば……あれから、ここにバルスは来たのだろうか? と。


無事に脱出できたら、皆に是非、聞いてみなきゃな……。


            ☆


そんなことを考えていると、僕はいつの間にか現実の世界に戻って来ていた。


どうやら、二度目からはあの扉のようなものは現れないらしい。


しかし、僕は目を覚ますと、そんなことを考えている余裕など、すぐになくなってしまった。


物凄い揺れを感じるのである。


そして、なにやら体にはじんわりとした温かみが……


あ、あれ?


僕は目をパッチリと開け、今の状況を認識した。

が、なんてことはない。僕は誰かにおんぶされていたのだ。

そりゃ、こんなふうに背負われて、全力で階段を駆け上がられたら、揺れるはずである。僕はその揺れで、雲の中を突っ切る時のレッドベルの揺れをなぜだか思い出した。


しかし、本当に驚くべきは背負われているという事実そのものではなかった。


なぜなら、僕を背負ってくれていた人物は、リンダでも、リッツでも、トカゲでも、そしてベットーレでもなかったからである。


その男は広い背中を持つ、金髪のロングヘヤーの男だった。


「ナ、ナーウッド!?」


「よお、大将。起きたかい?」


僕がそう声を出すと、ナーウッドはこっちを振り返る。


どうやら、また頼もしい男が一人増えたようだった。


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