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8/23

姫様来訪3日目 3

『姫来て』の第8弾を公開します。


 元々、今日は更新する予定では無かったのですが、ちょっとした気まぐれってヤツを起こしてしまいました(^^)


 それにしても、このサイトは良いですねえ(^^)

 今、支援BIS先生の作品、『辺境の老騎士』の100話目まで読み進めていますが、本当に面白い\(^o^)/

 その他の先生方の作品(mrtkのブックマークって皆様にも分かるのかな?)も、読み始めたら止まらなかったり・・・


 皆さま、テンポが良いですねえ・・・

 mrtkの作品のテンポが遅い事・・・・

 という事で、今回も地味に進みます(^^;)

「隊長、釣れました! 一緒に食べましょう」


 春奈は皆の処に戻るや否や、開口一番にリクに声を掛けた。リク達が仕掛けた罠は残念ながら一匹も捕まえる事が出来なかったので子供達は大喜びであった。


 藤田は予想以上の釣果に慌てて炭火を4箇所に分散した。1箇所は少し離している。警護員達の炭火であった。彼らは警備の都合も有るので二人ずつ交代で焼く事にする。

 春奈が読んだ書物に書いてあった知識では、炭火を大きめにして遠火で焼くとおいしく食べられるらしいので、更に炭を増やしてもらう。

 春奈と美月とダントンとクレスが魚をさばきに下流に下って行く間に、子供達全員で昼食の用意を始めた。それぞれが座りやすい石を拾って、焚き火の周りに集まる。

 さばき終わった魚を4人が持って戻って来た頃には藤田が起こしていた炭火もいい具合だった。春奈が釣った一番大きな32cmのイワナは太郎のもので、次に大きな30cmのイワナはリクのものになった。後は年齢順で大きさを決めていく。それぞれの魚を自分の前の地面の刺して焼けるのを待ったが、子供達は大はしゃぎであった。


 いつもの子供達だけの遊びならパキだけの昼食だが、春奈達が作った沢山の玉子焼きと、目の前で焼かれる魚の美味しそうな匂いがなんとも言えずに食欲をそそる。

 彼らにとって、今日の川遊びは最高のものとなっていた。


「さあ、そろそろいいぞ。でも熱いから、ふーふーしてから食べろよ」


 焼け具合を見ていたダントンが声を掛けると、歓声が上がって直ぐに静かになった。みんな冷まそうとして必死に「ふーふー」をしていた。小さな子供の魚は上級生が代わって冷ましている。春奈はリクの弟リオの分を冷まして上げていた。

 そろそろ良いかなと思う頃に、待っているリオの顔を見たら、真剣な顔で見ていた。彼女はにっこり笑って手渡した。


「お待たせ、美味しそうだね」


 リオが恐る恐る小さくパク付いた。どうやら猫舌の様であった。十分冷めていたのか直ぐにもう一口噛り付いた。たっぷり10秒間味わって飲み下した後で目を輝かしながら春奈を褒めてくれた。


「うまいぞ、はるな。さすがリクのてしただ」

「てへへ、ありがとうね。出汁巻き卵も食べる?」


 満更でもない表情で春奈は自分の出汁巻き卵を二つに割って分けて上げた。


 アマゴとイワナの塩焼きは全員に好評であった。文明を持つまでの人類のDNAの記憶が甦るのだろうか。確かに山の中の川原で、みんなと一緒に釣りたての新鮮な魚を目の前で焼いて食べる事は本能的な満足感があった。


 時折聞こえる鳥の鳴き声。この場所では吹く風さえも優しく感じてしまう。

 そして、いやがうえにも食欲をそそる魚が焼けた匂いと川の音。

 淡白でありながら口の中に広がるアマゴやイワナの濃い旨み。

 春香が見付けて、始祖たち第一世代の健康維持に多大な貢献をしたミネラルを豊富に含んだ岩塩がその旨みを引き立てる。

 順番の関係で最後にアマゴを食べていた二人の警護員は皆の視線が痛そうであった。

 仕方が無いので半分ほど分けて上げたほどであった。可哀想な警護員には、美月がおやつ用に残していたサラミのサンドウィッチを分けて上げた。


 みんなを見ながら、美月は思った。


『楽しいなあ。こんな気持ちになったのは久し振り。家の事をあれこれ考えるのも楽しいけど、たまにはいいな、こんな気分転換も』


 春奈は美月の顔を視界の隅で捉えながら(彼女にとっては正面からであろうが、真横であろうが余り意味は無かった)、彼女の楽しそうな笑顔に少し落ち込んでいた。

 この旅の後半に起こる面倒を今は考えず、とりあえず今を楽しむ事にした。


『さて、食後の運動だ』


 春奈は出し抜けに美月に声を掛けた。


「ねえ、泳がない?」

「え、水着を持って来ていないです」

「ありゃ、それは残念」


 その後の春奈の行動を、美月は唖然と見ているだけだった。

 春奈は残念そうな顔をした後でいきなりバスタオルを身体に巻き始めたのだ。



 宮崎太郎でもこの昼食には文句を付けようが無かった。

 子供達の面倒を見る事は、彼には苦手な分野だったが、今日はそんな気持ちにならずにここまで過ごした。

 きっとこの環境が彼の心の垣根を低くしたのだろう。それを子供達は特有の鋭さで気付いて、今迄では考えられないほど慕ってくれる。

 慕ってくれると太郎も、ついつい相手をする。今も一番小さな女の子(ヨウという名だった)が太郎のひざの上ですやすやと寝ていた。寝顔を眺めながら自分の帽子で扇いで上げていた。

 目の端に春奈が身体にバスタオルを巻いている姿が見えた。


「何をしてる?」

「着替えるの」

「水着なんか用意して来たのか?」

「当たり前でしょ? それに滅多に無い休日なんだから」

「学校にも休みが有るだろう?」

「休みの日は休みの日で忙しいのよ。折角、川に来たんだから泳がないともったいないの」


 春奈は器用にバスタオルを巻いたまま着替え終わると、朝のうちにリクに教えてもらった岩に向かった。

 三人の警護員を引き連れた彼女の後姿を見送りながら、太郎は初めて彼女に同情を覚えた。

 はっきりとは言わなかったが、彼女の背負っているものの一端を見た様な気がしていた。

 だが、春奈は泳ぐと言いながら、岩の周りをぐるぐると歩いて回っているだけだった。たまに顔を水につけてはいるが、普通はそれを泳ぐとは言わない。深さは彼女のへその上くらいしかなく、流れも少しだけ急になっているが、危険なほどでは無い。

 太郎はリクに声を掛ける事にした。


「リク、春奈は泳げないみたいだ。教えてやってくれ」


 リクは緩やかな流れの場所で、2年生の男の子に平泳ぎを教えていたが、春奈も一緒に教える事にした。折角上がったリクの中の春奈の評価はまた落ちてしまった。

 彼女は息継ぎに手間取っていた。

 今も顔を上げ過ぎて水中に戻す際に顔を打ち付けてしまい、びっくりした顔を直ぐに上げていた。


『ギャグか? わざとやっているのか?』


 太郎は耐え切れずに身体を震わして笑ってしまった。ひざで寝ていたヨウが『なに?』という顔で太郎を見上げるが、太郎の笑い顔を見て安心したのか直ぐにまた寝てしまった。

 のんびりとした時間が過ぎて行き、帰る時間がやって来た。春奈も満足したのか、リクと2年生の子と一緒に戻って来た。太郎は呆れながら声を掛けた。


「おいおい、唇が紫色になっているぞ」

「え、本当? ダントンさん?」

「そら、この水温であれだけ泳げばなります。病気じゃありませんので直ぐに治ります。さあ、早く身体を拭いて着替えて下さい」


 春奈は言われた通りに着替える前に、荷物の中から手鏡を取り出して自分の顔を見て、のけぞっていた。挙句に美月と笑っていた。また太郎の身体が震えてしまい、今度こそ完全にヨウを起こしてしまった。太郎は優しく彼女に声を掛けた。


「さあ、帰ろうか?」


 両脇に手を差し込んで立たせて上げた。ついでに自分も立ち上がり、リクに声を掛けた。

「リク、ゴミを残すなよ。全部持って帰るぞ」


 ヨウは太郎の手を帰り道の間、ずっと握っていた。小さな手から伝わる体温が太郎にはこのうえなく温かかった。帰り道はみんなで童謡の『故郷』を歌って帰った。歌詞で歌われる場所が違っても、内容はこの土地にぴったりであった。後年、太郎はこの歌を聞いた時には必ずこの日の事を思い出した程の一日であった。


 そして、明日は更に500m上流の支流にある滝まで行く事になった。リクがぽろりと漏らした言葉に春奈が反応したのだ。

 さすがに険しい道を行く為に、明日はリク達が同行しない事も決まった。



 100mは離れている場所から監視をしていた、迷彩を施した2人組はなんとも言えない表情をしていた。上流の待ち伏せグループの一人が強力なケリュク放射を使われたと報告を送って来ていたが、眼前で繰り広げられた光景はずっと長閑そのものであった。

 一団は昼食を食べて4時間経過してから帰って行った。

 唯一の変化は監視対象以外のイレギュラー因子がなんとか泳げる様になったと云う事だけだった。

 今度、会った時におめでとうとでも言っておく事にする。教官殿はどんな顔をするだろう? 


 結局、一団が帰るまでの間にそれ以外の変化は無かった。



 帰り道の間、美月は春奈からラミス料理と日本料理の違いについて色々と話を聞いていた。今は日本料理の分類の説明をしていた。


「でね、和食と中華料理と洋食に大きく分けられるけど、洋食と言われる中には更に“フランス”料理や“イタリア”料理や“スペイン”料理や“イギリス”料理などなど、それはそれは沢山の種類があるの。すごいよね。もっとも材料が手に入らないからどうしようもない料理も多いけどね、今、我が社がしている事は可能な限りそれらの料理を再現する事なの」


 彼女は活き活きと説明していた。更にそれぞれの料理の特徴を説明していく。それは春奈の膨大な料理知識のほんの一端だった。美月には、同い年でこれだけの知識がある理由が分からなかった。

 ただ、今までの彼女の言葉のあちらこちらに会社経営に関与している節が見え隠れしていた。本当にただの料理好きなのか、仕事なのかは判断し難いところだった。


 美月は自宅に戻った足でそのまま厨房に向かった。料理の下準備の進み具合を確かめる為だった。特に問題は無さそうだった。着替える前に少し手伝う事にした。

 その頃、春奈は脱いだ水着を手早く洗って、部屋に干していた。干し終わると、すぐさま厨房へ向かう。厨房では美月が玉ねぎのスライスを作ってくれていた。

 今日の一品は春香伝来の『肉玉』であった。本来であれば、『肉じゃが』と日本では呼ばれていた料理であったが、“ジャガイモ”が手に入らないので『肉玉』となってしまっていた。

 本来の材料は玉ねぎくらいだったが、春香はなんとか代用食材を使って味の再現をしていた。“しらたき”も日本で使っている“コンニャク”芋と違って“インド”原産の亜種なので、“こんにゃくマンナン”が少なくて、春香曰く『微妙なしらたき』と書いていた。“ニンジン”も彩りの“グリーンピース”や“さやえんどう”も無かった。“グリーンピース”は春香の『入手断念食材リスト』の内容を読む限り、彼女も好きではなかった様なので気にしていなかったが。


 夕食に出された『肉玉』は好評であった。この村は人種的・食材的にどうしてもラミス王国の料理が多いし、材料の確保に手間の掛かる日本料理は余り作られる事は無かった。

 美月は春奈の手伝いをした時にすすめられて味見もしていたが、一つの料理として食べる『肉玉』は優しさに溢れた料理だった。出汁巻き卵の時も思ったが、和食の基本の醤油と出汁とみりんの使い方は色々と参考になりそうだった。ラミス料理が香辛料を多用するのとは対照的だった。

 だが、美月が一番驚いたのはオーロックスの生肉を薄切りにした春奈の包丁捌きだった。ラミス料理ではあまり調理前に肉を薄く切る事は無い為に、尚更その腕には驚かされた。何気無くスッスッと切っていたが、切られた肉の厚さは一定だった。美月の料理の師匠エキもびっくりしていた。だがきっと薄く切るからこそ、この様な優しさに繋がるのだろう。


 太郎が一番ぱくついていた。彼の事前の予想と違って意外と美味しい。春奈はその食べっぷりをニコニコしながら見ていた。


 ダントンはその夜、藤田と交代で寝る直前に姫様へ久しぶりに命令した事に気付いた。相談を受けて、答えたりする事はある。

 だが最近の春奈は常に先読みして行動していたので、要請という名の命令は久し振りだった。



 寝返りを打ちながら口の端が自然と上がっていた。

如何でしたでしょうか?


 3回分の投稿でやっとこ1日しか進まない物語なんて・・・・・

 次回は4日目に突入です。

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