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姫様来訪3日目 2

地味に投稿している『姫来た』ですが、第7弾を公開します(;;)


 投稿寸前まで行きながら、うっかりミスで全部が消えてしまった・・・・・

 『次話投稿』機能の説明文の意味が分かんないッス(;;)

『途中保存ができませんのでご注意ください。

 本文を保存したい場合は、まず新規小説作成にて一度保存し、執筆中小説を作成してください。』

 「執筆中小説を作成して」からどうしろと・・・

 もう一度、「リトマス紙」からコピーして、ひたすら添削します・・・

 

「ここだ。着いたぞ、はるな」


 リクに言われた場所は森に入ってから30分もしない場所にある広い川岸だった。緩やかなカーブで川の幅が10mほど。流れも緩やかになっている。川岸が広い為に陽光も注いで明るい。川の中でスマートな美しい魚が泳いでいるのが見えた。

 藤田の下見で地形はイメージしていたが、これなら小さな子供も遊びやすそうだった。気温は21℃ほどで、午後から更に気温が上がれば泳げなくは無さそうであった。


「隊長、ここって泳げる?」

「そこと、あそこは少し深くなっているから泳げるぞ」


 教えてもらった場所は大きな岩が川の向こう岸に接するように何個か川の流れに沿って並んでいた。多分、岩の周りがえぐれて深くなっているのだろう。春奈は釣りをした後で泳ぐ事にした。早速、釣竿をダントンから受け取るが、確認のために尋ねた。


「ねえ、ダントンさんと藤田さん、釣りが上手いのはどちらですか?」

「私の方でしょうね。藤田は違う釣りが得意ですが」


 ダントンの答えはおやじ臭かった。藤田は周囲警戒の目をそのままで足を延ばして、ダントンの足を蹴った。彼はむすっとした声でダントンに注意した。


「教育上良くない事を言うなよ、トム。春奈さん、今のは忘れて下さい」

「教育上の為に忘れたいけど、藤田さんが女の人にもてる事は忘れられないわね。でも、もてないよりは良いですよね」


 藤田はもう一度、さっきより力を入れてダントンの足を蹴った。


「それでは、罰としてダントンさんには私達に釣りの手ほどきをしてもらう事にします。私は書物でしか知らないから。まずは餌を探すのよね?」


 こうして、春奈と太郎と美月の初めての釣りへの挑戦が決まった。

 だが、ここで問題が発生した。警護の者が6人も居る為に釣りの邪魔になるのだ。春奈も含めて7人で相談した結果、半分はここで子供達の警護に当たり、3人が上流に同行する事にした。

 リクにお昼ご飯の時間を決めてもらい、留守役の藤田に魚を焼く準備を頼んで6人は上流に向かった。

 5分ほど歩いた所で、餌になりそうな川虫をダントンに教えてもらいながら3人で探す。春奈の横で中腰になった美月は恐る恐る、川底の石に手を掛けた。目を瞑って石を引っくり返した。ゆっくりと目を開いていく。その時に耳元で春奈の声がした。


「発見。よっと、2匹捕まえたよ」


 思わず真正面を見たら、春奈が器用に二本の指で川虫を2匹摘んでいた。そのまま木で作った小箱に放り込んで、美月の顔を覗き込んで来た。


「怖くないよ。それに魚を釣らないと、皆に食べてもらえないし、隊長に褒めてもらえないから頑張ろう、ね?」


 美月にとっては、リクに褒めてもらう事はどうでも良かったが、春奈に頑張ろうと言われた事の方が大事だった。

 結局、4人の中で一番捕まえたのは美月だった。


 とりあえず小箱一杯に集まったので、更に150mほど上流に上がったところにあった支流に入って行った。支流に入って3分後にダントンが一旦全員にしゃがむ様に言った。

 警護員達がケリュクを使って神経を過敏にした状態で周囲の気配を探りながら、鋭い視線で見渡す。

 彼らが使った手法は、ある程度の適性ときちんとした訓練を受ければ、使える“能力”だった。欠点は持続時間が短い事だった。

 特に異常は無さそうだった。人間の気配とそれらしき形状は見受けられない。

 美月や太郎には詳しい事は分からなかったが、初めて感じたケリュクの波長変動だった。

 1分ほど様子を確認してから、ダントンが指を刺しながら説明する。


「人影を見せたら魚は釣れないのです。あのコースを通って更に川沿いに上がってから少し下りましょう。きっとアマゴが居ますよ」


 それまで殆んど無言だった2番地の警護員が思わず突っ込みを入れた。


「例の奴らじゃ無いのか? 真剣に探したぞ」

「春奈さんが気にするなと言っているから、気にしなくて良いさ。どうしても知りたかったら探してもらうが、どうする?」

「クレスさん、桑原さん、どうします? いつでも“視ます”よ?」


 名前を呼ばれた二人の警護員はお互いの顔を見て、相手の表情を読んだ。プライドもあり、保護対象にそんな事をされたくないと互いの顔に書いてあった。


「それなら折衷案で、視ないけど5秒間の“放射”をしますね。それで良いですか?」


と、春奈が提案した。


 確かに監視している者が居た場合、そんな事をされたら行動の自由度が一気に狭まる。

 自衛隊隊員として、前線基地で嫌という程こなした偵察任務での経験と、その後の訓練から考えても、十分な威嚇になるだろう。

 問題は自分達に対する影響だが、短時間なら影響は軽いと判断して了解した。春奈は皆に聞こえる程度の小声でカウントを始めた。


 監視対象の一団には発見出来ない場所に潜んでいた一曹は、自らは動かずに彼らが動き出す瞬間を待っていた。

 視線はわざとずらしていた。人間は非保持者であっても、自分に向けられた視線(意識)は例え背後からであっても『感じ』てしまう。

 周辺視野に納めた6人は辺りを警戒している様だった。警護員と思われる3人のケリュクが能力の使用時独特のケリュク波長変動をしていた。焦燥感を押し殺し、諦めるまで待つ。時間がじりじりと流れる。

 やっと納得したのか能力の使用を止めた後で、彼らは上流に上がるコースの相談をしている様だ。

 少し会話をした後でいきなりその奔流が訪れた。有り得ない事だが、50mは離れているのにそのケリュクは彼まで届いたと感じられたほどだった。慌てて意識を暗証番号に集中する。


『教官殿、これはひどい。反則ですぜ』


 ほんの5秒ほどで止んだが、下手に意識を向ける愚挙は犯せなかった。


 彼が動き出したのはそれから10分後であった。当然だが一団の姿はもう見えなくなっていた。


 その頃、6人は釣り場のポイントへ中腰で接近していた。ここに来るまで太郎は春奈にひとしきり文句を言っていた。


「良いか、もうするなよ。ましてや子供達の前ではするな。悪い影響が出たらどうする」

「ごめんなさいね、こんなに影響が出ると思わなかったもん」


 さすがに文句を言われ続けて、春奈も反省していた。

 元々「ケリュク保持者」、正確には「ケリュク発生能力保持者」(その他に幼児期だけケリュクを放射する「ケリュク発生能力保有者」も居た)の誕生は古代ラミス系人種の進化上の大きな分岐点だった。

 少数の個体数で石器時代から鉄器時代まで進化出来た事はその証であった。


 現代科学における脳の各部位の役割の研究は研究者の努力も有り、徐々に進んでいた。

 だが、観察機器の技術の進化と手法の発達により、かえって複雑化の様相を見せ始めていた。

 それでも脳の秘密を探る研究は年々発達をしていた。

 しかし、ここにはケリュク保持者のサンプルは捨てるほど居るが、機材が無い為に満足な研究が出来なかった。唯一の仮説は守家始祖が市議会で発表した私見が元になっていた。

 その内容の前半部分は議事録に残っている。


『これから説明する話は、ある大学病院の教授に秘密裡に依頼して検査した、たった3個体の検査結果から仮説を組み立てたものなので絶対正しいとは言いません。ましてやその教授が病死してしまったので、その後更に進歩した機器での検査を行ってもおりません。

 教授は、まず諸説ある脳機能局在論でも説明できない働きをする固体を能力者としていました。その特徴は脳の各部が独自の変化をしている事です。MRI等での研究の結果、前頭葉の優位半球と劣位半球の機能区別が通常の脳と違っており、そして両半球の前頭葉間では特殊な二種類もしくは三種類の脳波が出ていると教授は考えていました。

 一種類の脳波は測定器で測定可能で、通常の脳波に近い性質でした。教授が一番解明したかった他の脳波は結局、同じ脳構造を持った者同士でしか感知できませんでした。被験者の証言からこの脳波は直接外部に出る物と体内の神経系統を逆流する物が有ると考えられました。

 更に後頭葉と頭頂葉にも前頭葉の変化を補完する進化が見られました。ただし、側頭葉に関しては直接の関係は薄いとの意見でした。

 教授はこれらの特徴を進化なのか突然変異なのかで悩みましたが、結論を出す前に亡くなりました。ちなみにそのサンプル個体は私と私の姉妹です。

 そしてこの場で明らかにしますが、我が家の遠い祖先はこの地の出身者である事が判っています。もっとも見ての通り外見上は全くの日本人ですし、祖先が交配できた事から宇宙人と云う訳では有りません。当時は未だ遺伝子解析が進んでいなかったので、今の水準で解析すればもっと詳しい事が解った筈なので、これ以上の研究が出来ずに残念です』


 最初は異端扱いをされたこの証言は、その後のラミス王国との接触や交流過程で徐々に正しい事が明らかになって行った。

 ラミス王国との交渉が認識を改める最初の場になった。特殊な脳波を出せない始祖達はラミス王国側から徹底的な冷遇を受けた。

 しかも、信じていなかった所為でケリュクの影響をまともに受けてしまった。交渉にならずに、ただ懇願するだけになってしまっていた。本来であれば、そのまま始祖達は新たな奴隷階級と化してもおかしくはなかった。


 後年、新狭山市でもラミス系との混血が進むにつれてケリュク保持者の誕生が相次いだ。

 彼ら混血の者同士では、始祖達には見えないものが見えると証言した。それを彼らは「オーラ」「生体エネルギー」「思考波」「影響圏」「固体識別波」などと表現した。最後まで懐疑的だった一部の始祖達も、ついに信じるしかなかった。

 最終的に、その特殊な脳波は「ケリュク」というラミス語に統一された。

 そして、秘密事項がこの時に発生していた。


 現在では保持者は大きく3つの分類に分けられていた。


Ⅰ 純血第一世代とラミス系保持者の混血第一世代のタイプ。発生を無~有へ変化可能。このタイプに純血第一世代・第二世代を掛け合わせても結果は同じであった。関根春香・守義弘・優梨子の三名も同じタイプとして分類されている。

Ⅱ 混血第一世代に更にラミス系保持者を掛け合わせた混血第二世代以降のタイプ。発生状態を変化させられるが、常態的にケリュクを発生させている。先祖に純血第一世代が入っている場合はこのタイプの保持者になる為に、始祖が分かっている市民はこの分類になる。

Ⅲ ラミス系保持者。常態的に発生させていて、発生状態を変化させられない。ラミス王国からの移民者に多く、Ⅰ・Ⅱとの混血が無い限り変化は無い。



 彼ら保持者に関する詳しい事や影響が判って来ると色々な制度と制約が発達して来た。

 その中の一つに、第Ⅰ分類と第Ⅱ分類の保持者のうち、一定レベル以上の保持者は過剰なケリュク放射による弊害を防止する為に、物心が付く年齢になると訓練を受ける事が義務付けられていた。

 過剰な放射は保持者自身の脳内温度を急激に危険なほど上昇させる。記録によると1分間に満たない時間のケリュク放射で死亡した保持者もいた。通常のケリュク発生でも、第Ⅰ分類と第Ⅱ分類の保持者では、長時間に亘って最大発生をさせた場合には同様の問題が発生した。

 また、ケリュク放射は劣位の保持者や非保持者が周囲に居た場合、その人物の精神に影響を与えてしまう事も問題となり、通常は慎むべき行為であった。影響の内容と強度は人により違うが、最も多い内容は放出者に対する感情変化であった。


 春奈が自宅で受けた訓練は祖父が見てくれた。だから他人に対する影響を見誤ったのだ。5秒くらいなら大丈夫と思ったら警護員達に予想以上の影響を与えていた。

 想像以上の放射を受けて、3人は文句を言う気力を無くしていた。

 影響を最小限に抑える為に目を背けて、意識をブロック(個人によって微妙にやり方は違うが、記憶上の映像や文字列もしくは数列を思い出して、それに意識を集中する方法が基本)したが、かなり侵蝕されてしまった。

 ケリュクの利用訓練を受けたプロの彼らがそんな状態になったのに、それでも文句を言える太郎はある意味大物であった。

 美月も太郎と同じく、影響をあまり受けなかった。単純にびっくりしたというのが真実だった。

 ただし彼女の場合は元々が侵食されている様なものだったので、どっちにしても変りは無かったのだが。


 数分後、彼らの眼下には大きな岩や小さな岩がごろごろと転がっている幅4mほどの支流があった。

 美月は川面に目を凝らした。純粋な肉眼では6匹ほどしか見えない。水面の反射や水中の屈折が邪魔だった。小さい頃に遊んでいた時に偶然気付いた水の中を見る裏技を使ってみる。

 まずは水面の反射を減らす為に意図的に視覚をいじった。一瞬で視界の色が飛んでモノカラーの世界が広がる。次に水面の反射が無くなる様に更にいじる。徐々に反射が消えて、水中の岩などが歪みながらもクリアに見えた。見つけた魚を心の中で数えてみた。


 しゃがんだ姿勢のまま、美月が小さな声で囁く。


「結構居ますね。ここから見えるだけで13匹は居ますよ」


 ダントンも水中を探るが、十匹弱の魚影を確認出来ただけであった。彼女は能力レベルの応用を使っているとしか思えなかった。彼は春奈にも確認した。その答えはそのレベルさえ超えていた。


「30匹は居ますよ。まさか全部釣るの?」

「春奈さん、そんなに釣れないと思いますが、17匹釣れたら全員に行き渡ります。塩もそんなに持って来ていませんし、根こそぎ釣るのは資源保護の為に避けましょう」

「そうだよね。17匹までにしようね」


 彼らは春奈の言う場所と数を参考に接近ルートを決定した。

 釣果は丁度17匹だった。一番多く釣ったのは春奈で、彼女の目には魚の姿や行動が丸見えの様であった。そうでもないと、日本での基準で言えば貧弱な釣り道具でこれだけの釣果を上げる事は不可能であった。


 美月は上には上が居ると改めて思った。帰り道で春奈にコツを聞いてみたが、全く思いもしない方法を使っていた。詳しい方法までは教えてはもらえなかったが、彼女は祖父直伝(という事は春香が元祖という事だが)の手法を会得していた。

 まあ、『ラミス神国の黒水晶』を授かって生まれた段階で、常人とは違うのだろうし・・・・・

 でも、美月は幸せだった。美月にしか聞えない小声で喋ってくれていたが、最後の一言は彼女との距離を更に縮めたからだった。


「絶対に秘密よ。誰にも言わないでね」


 釣れた魚の大きさは25cmから32cmの2種類で、1種類はえらの後ろから尾びれまで中心線に灰色の縦長模様が8個ほど並んだアマゴであった。もう1種類はお腹の部分は橙色で赤みがかった小点が散らばっていた。彼らには分からなかったが、その魚はキリクチと呼ばれる奈良県の十津川水系にしか生息していないイワナの亜種であった。キリクチ自体が奈良県指定天然記念物であり、絶滅寸前種であった。

 もしこの光景を奈良県レッドデータ策定委員会のメンバーが見ていたら無念の涙を流さざるを得なかったであろう。

 もっともそれ以前にアマゴやイワナがこの様な亜熱帯気候に近い暖かい土地で繁殖している事の方が驚きであった。この地は高地帯とはいえ、夏の水温は20℃を軽く越えるだろう。

 更には森林も彼らが住む植生では無い。春奈たちにはただ居ると云う事でしかなかったが、突然変異が発生したのか、非常な幸運が重なって生き残ってくれた事だけは確かなようだった。勿論日本の種類に比べれば味の劣化は有るであろうが、それでも十分に美味しい魚であった。

 全員に行き渡る釣果も上げた事だし、昼食の時間も迫って来たので皆の処に戻る事にした。来る途中にあれだけ文句を言っていた太郎や、警護員達さえも心なしかその足取りは軽やかであった。


 春奈だけは考え事をしていたが、美月以外には気付かれなかった。


如何でしたでしょうか?


 途中の説明がややこしいように思いますが、簡単に言えば金髪の遺伝子と黒髪の遺伝子との関係に近いと思って下さい。

 金髪碧眼の白人と日本人が結婚した場合、生まれてくる子は黒髪&黒目(ブラウン虹彩)になります。

 優性遺伝子(黒髪)と劣性遺伝子(金髪)の事ですが、この場合、金髪の遺伝子は黒髪の遺伝子に覆い隠されるので、機能が劣るという訳では無いのですが劣勢遺伝子となります。

 どうやら、ケリュク発生能力は優性遺伝子のようですが、詳しくは解明されていないようです(なんとなく、サラブレットの掛け合わせのようでもありますね(^^;) 。

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