第19話『二人の嘘つき』
一応、ネタバレ回なので初めて読む方は、少し前か初めから読む事を推奨します。
次回からスットクの関係で一話ずつの投稿になります。御遠慮して下さい。
第19話…
もしも登校する時に、右ではなく左に曲がって、
女の子にぶつかったら……
~始まります
第19話『二人の嘘つき』
……………………………………………………
「……昔の事…つか、少し前の事なんだけどね…」
それは…牧師がとある組織の一員…情報屋であった時の事である…
「…僕とその組織のリーダーとは親友の真柄だったんだ…
だから随分と楽もしたし…その分働いたりしたさ……
そんなある日…彼は僕にこう言って来たんだ…
『もしも…不思議な力…非現実…常識ではありえないものが存在したらどうする?』って…
…その言葉の意味は最初は理解出来なかった…
話を聞いてい見ると、どうやら彼は不思議な力に目覚めたらしい…
僕は初めは半信半疑だったけど…彼の能力を見せられて…
僕自身、その場で覚醒したから…信じるしかなかった………」
現実では…常識ではありえない力を得た二人…
「全ては順調だった…リーダーの能力は…とても強力で…ナイトメールを倒せたかもしれなかった…」
しかし…これまたとある日の出来事だ…
「リーダーは……その強力な能力すら超えた力……
r2に覚醒したんだよ…」
r2能力…即ち、
―覚醒(“r”ouse)&覚醒(“r”ouse)…“r”が“2”つ…
そして、“r”ank“2”と言う意味である。
「r2は…大きな力を与えてくれる……
ただし…
その分、大きな代償を払わなくてはいけない…。
リーダーは失ってしまったんだよ…リーダーとしての“勇気”が……」
そうして……リーダーは立ち向かう事を恐れ…戦う勇気のない組織は崩壊したのだった…
「……じゃ、じゃあよお!!
今の牧師の話が本当だとよぉ!!!
積川さんがさらわれたのも……魁斗の奴が…そのr2ってのに目覚めっちまったせい…なのか?」
「……ああ…」
和琴の質問に…首を縦に振る牧師…出来ることなら横に振りたかった…
「何時からだ……?…何時から知っていたんだ…?
俺がr2に目覚めるって…」
「初めからさ……早乙女君…。
僕は知る事ができる“眼”があるからね…」
初めから…?
その言葉が意味することを…百合野は気づいた…
「え…それって…まさか、この部活の真の目的って…」
「そうだ…僕の真の目的は…ナイトメールを崩壊させる事じゃない…
r2への覚醒を防ぐ事が…僕の真の目的だ…」
「ッ?!ま…待てよ?!牧師!!!!!!!じゃあ!!!!!!」
「……早乙女君だけじゃない……ここに居る皆……r2に目覚める恐れがあるんだよ…」
明かされた真実…
この部活の目的……だ…
「本当なのか…牧師?…俺はr2…なのか?」
魁斗は…無意識の内に牧師に訊ねていた……これが現実だとは理解してたが…嘘であってほしかったのだ…
「……ああ…間違いない…君はr2に目覚めている…」
だが現実は現実…
現に既に…代償は支払ってしまっている…今さら夢や嘘の筈がない…これが運命だ…
だから…だからである…
嘘や夢ではないのなら…この現実を…代償を…運命、過去、常識を受け止めなくてはいけない…
悲劇(それら全て)を乗り越える為には…それしかない…
「なあ…牧師…俺のr2能力についても牧師の能力で解るか?」
「…解る…」
「なら…教えてくれ…俺の…力(代償)を…」
アスカがさらわれてしまったのが…己の代償のせいならば…
素直に受け止めよう…
それは変えれない運命(過去)なのだから…
ならば…超えてみせよう…その運命(過去)を…常識を…
この力で…
「早乙女君…君のr2は………
『次元を切り裂く能力』……代償は『愛する人』…」
…………………………………………………………
場所は変わり…薄暗い部屋である…
そこには…金髪の少女…アスカと…
「まっ…………君が怒りたい気持ちも…私は解る…」
段々と話し続ける…死んだ筈の男…長官である…
アスカは初めは…この男は能力で長官に化けている偽物か…
はたまた…可笑しな催眠術でも掛けてられているかと思ったが……
そんなことはなかった……間違いなく彼は…アスカの知る長官であった…
彼は二人だけの秘密から最後の別れまで知っていたし…
何より、長年の間…自身の親代わりとして共に暮らしていたアスカは…その雰囲気で彼が本物だと…理解していた…
「けどね…アスカ………
そんな事は…長い人生の中じゃ……些細な事だよ……
君のお陰で……世界は全て変えられるんだから…」
世界が変わる…?
自分のお陰で……?
だがそんな事どうでもいい…
そんな事の為に…組織は…
そこに居た…仲間たちは…?
「何故です…」
「うん?」
「何故、世界の為に仲間は!!!!!
組織は失わなくちゃいけなかったんですか?!!」
組織には思い出があった……
組織には仲間がいた……
皆……みんな…長官の事を…信頼していた…
なのに……何故?
何で…ナイトメールが…長官の手自ら……?
「それは…“運命”さ…」
「“運命”…?」
「そう…全ては必然…
当たり前の結果…決められた未来…それが“運命”…」
ここで…一瞬…話しが途切れた…少し間が空き…
また話し始める…
「……さっきさ…力について…r2について説明したよね?」
r2…それは大きな代償を払って得る力だと聞いた…
自分が此処に居るのもそのせいだと……
魁斗がその能力に覚醒したせいだと…
そして………明らかに…
長官は…魁斗のr2能力を欲しがっている………
「感づいたかい?
そう…君の考えの通り…私は魁斗君の能力が欲しい…………
けどね?可笑しくないかい…?」
「え…?」
可笑しい?何が…?
「だって考えてごらんよ?
この伊里町だけでも…どれだけの人口だと思っているんだい?」
「……?」
「君が…魁斗君と出会って…私の求める能力に目覚めるなんて……
高層ビルから飛び降りて死なない確率よりずっと低いと…私は思うんだけどね?」
「長官…?」
即ち…
有り得る筈がないのだそんなこと…
奇跡としか言いようがない…
そんな奇跡の為に…組織を滅ぼしたのか?
自分の目の前でベタな嘘をついたのか?
覚醒するか解らないのに…あれだけの刺客を送り込んで来たのか?
そんな筈はない…
それでは……まるで……
「だから言ったろ?
これは“運命”だって…
君と魁斗君が出逢うのも…魁斗君がr2に覚醒したのも初めから運命だったんだよ」
「…な、何を言っているんですか…?」
「…フっ…君は賢いからね…気づいている筈だ…気付かないフリをしているだけで…」
聞きたくない…聞きたくない…嘘だ…そんなのは嘘だ…
「“運命”には…多数の別れ道がある…人はその道を迷い…自分の進みたい道…“運命”に迷う事になる…」
何かの冗談だ…
「“運命”と言う迷い道に迷う事なき少女…それが君だよ…アスカ」
悪い夢だ…覚めろ…覚めてくれ…
とは…思いつつも…もう…頭の中では…答えに気付いていた…
こんな出来過ぎた話しはそうそうないと…こんな御都合主義な展開が有るとしたら…
それを可能にするのは一つだけだ……
「君もとっくにr2に覚醒しているんだよアスカ。
『運命に迷わない能力』にね…その代償は『居場所』」
これが……“運命”だ…。
これが現実なのだ…。
………………………………………………………
場所は戻り部室である…
「僕は…気づいていた…積川君が既にr2能力に覚醒している事に……けど…」
喉が…つまる…
「…言えなかった…『居場所』を失ってしまったばかりの積川君は…
一見…平気なそうにしてたけど……明らかに精神的に参っていてさ……僕はどうしてもその事を言いだせなかったんだ…」
後悔…後悔する牧師…伝えれば幸せだったかは別として……
伝えない方を選んだと言う選択をしたにも関わらず…こんな結果のなってしまった事に…
「……まあな…そんな辛い話…聞く方にも…話す方にも…残酷過ぎるぜぇ…」
「どうして……どうして……なんで……こんなことばかり……ボクたちは……」
和琴も…百合野も…辛い……
「上手くいかないもんだね……こんな感じの…人の為に吐いた嘘って…」
部長だって…辛い…
皆…辛いのだ…
だから………だから魁斗は……
「…皆……頼みがある……」
頼んだ……
「俺は……アスカは助けたい…。
俺はアスカを守りたいんだ!!。
俺自身のこの代償を運命(過去)を超えたいんだ!!!!!
……だから…だからさ!!!
…力を貸してくれないか…?」
危険な事を…頼んでいる……
自分勝手かもしれない…
無茶苦茶かもしれない…
だけど…
「俺一人じゃ…アスカを助けられない…超えられないんだ…」
魁斗は弱い…人として…弱い…
弱いのだ!!!
誰だって弱いのだ!!!
人は誰だって弱い!!!!!
だから支え合えるのだ!!!!
人は!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「なーーに、水くせぇ事言ってんだ、魁斗さんよぉ?」
「そうですよ。ボクたちは仲間じゃないですか魁斗先輩」
「百合野…和琴…」
「そうだよ、魁斗君。男なら尻の穴構えて、掘r、」
答えを聞くまでもない!!!!
ナイトメールを許せない気持ちと!!!!!
アスカを助けたい気持ちは皆同じであった!!!!!!!!
「…少し待て…早乙女君…」
「な…何だよ牧師…」
「積川君を助けるにしても…具体的にどうすんだい?」
「それは…」
「相手は大企業…ただ闇雲に突撃するなんて…死にに行くようなもんだよ?」
確かに…
ではどうする?
どういった作戦ならば…大企業をこの人数で相手できる…?
だが…その答えは案外、実に単純で簡単な答えであった…
「父さんも意地悪だな…僕たちに出来る事と言ったら…突撃ぐらいしかないじゃないか?」
「フっ…そうだね…」
ただの突撃なら死ぬ…
しかし突撃しかない…
では…その答えは?!!!
「“ただ”の突撃じゃなければいいんだよ…」
これからは行うのは…
常識を超えた突撃…
「いいかい…よく聞くんだ…
これから作戦を話す…作戦名は………
『生の突撃作戦』だ…」
それは実にアホらしくて馬鹿らしい…ダサい名前で…
最も単純で…解りやすい…信頼できる作戦名…
第19話…完
次回、第20話『生の突撃作戦』