君と過ごした特別な日 ~3月31日~
待ちに待った土曜日が、ついに来た。
「…ちょっと早かったかな…。」
予定より30分ほど早く来てしまった僕は、
ブランコに座り、空を見上げながら君が来るのを待った。
その日の空はいつもと違い、眩しいくらいの晴天だった。
咲き乱れるしだれ桜の間からは、
いろいろな形をした雲が流れていくのが見える。
「──ごめんっ!待たせちゃった…?」
突然そんな声が聞こえ、その方向に目を向けると君がいた。
いつもは部屋着のような服装だが、
今日はオシャレに力を入れたようだ。
──僕と同じように。
「ううん、今来たとこ。」
僕は決まり文句を言い、そして歩き出そうとしたとき、
君の持っていた缶の箱に気づいた。
「…その箱、どうしたの?」
すると君は照れるような表情で、
「タイムカプセルにしようと思って…。」
と言った。
「でも僕、手紙とか書いてないよ?」
「大丈夫。
これ、ここに埋めとくから2週間後ぐらいかな?
翼の高校の入学式の日に掘り返してね。いい?」
そう言いながら持って来たシャベルを使い、
その缶の箱を2つのブランコの間に埋めた君は、
そこにシャベルを置き、
「これが目印ね」と言った。
タイムカプセルにしては2週間という短い日数や、
なぜ僕が今年高校生になるのかを知っているのか気になったが、
君の笑顔を見たら、僕は頷くことしかできなかった。
「じゃあ いこ?どんな所に連れて行ってくれるの?」
「それは行ってからのお楽しみ。」
「遊園地は行くでしょ?一番最初は何に乗る?」
「ジェットコースターとか?」
「え…。─コーヒーカップとかにしよーよっ!!」
そんな会話をしながら、僕たちは目的地へと向かった。
最初はやっぱり遊園地。
いろんな乗り物に乗って騒ぎまくった。
そこで思い出の品を買って、
次はゲームセンター。
全てが初めてだったのか、君は慣れない手つきで遊んでた。
君が欲しがってたくまのぬいぐるみを僕がとってあげると、
君はそれを抱きしめたまま放そうとしなかった。
その後は僕も初めてだったプリクラを一緒にとって
思い出の一枚にした。
──僕たちが桜ノ宮公園に戻った時には、
すでに日が落ち、空にはたくさんの星たちが
輝いていた。
そこで僕は、ある計画を実行する。
「──これ、プレゼント。」
そう言って僕が君に差し出したのは、
金色に輝く、桜の模様が施されたペンダントを
下げたネックレスだった。
「え…?」
動揺する君に、僕は「後ろ向いて」と言い、君の首にネックレスをやり、
金具をとめる。
君はペンダントを持ち上げ、僕に問いかけた。
「…これ、もしかして開けられる?」
僕は頷き
「開けてみて。」
と言った。
扉状のふたを開けた君は、目を見開き
「──すごい…。」
とつぶやいた。
──僕は息を整え、
ゆっくりと自分の気持ちを伝える。
「──君のことが好きなんだ。
僕が君を守る。
だから、付き合ってほしい。」
……──しばらくの間、沈黙が続く。
そしてようやく君が口にしたのは───
「──ありがとう──」
ただ、その一言だった。
でも僕にはわかってしまった。
君が言ったその一言には、
もう一つの言葉が込められている、ということが。
『──気持ちには、こたえられない──…』
そんな言葉が──…
「──じゃあ、また…」
そう言ってその場を離れた僕は、少し後悔した。
──気持ちさえ伝えなければ
いい思い出になったのに──
と……。




