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名前も知らない君に僕は恋をした  作者: 桐生桜嘉
君と過ごした日々 
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5/13

君との約束 ~3月28日~

 次の日。僕は友達に誘われ、ゲームセンターに行ったり、

ボウリングをしたりと騒ぎまくった。

 金を使い果たし友達と別れ、家についた時には

夜の9時を過ぎようとしていた。

 夕食を食べていないため、今から食べるとすると

9時を過ぎることになる。


 やばい…これはやばいぞ…


少しでも長く、君と一緒にいたいと思う僕にとって、

君と過ごせる時間が削られるというのは、

結構大きな問題なのだ。


僕は急いで夕食を腹に流し込む。


「ちょっと外出てくるっ!」


そう言って家を飛び出したのは、9時15分だった。


僕は走って公園に向かう。

腹の中で渦巻く食べ物に、気持ち悪くなりながらも走り続けた。



──やっとの思いで公園に着き、

いつも君がいるほうを見る。


そこには、昨日僕があげた絵を見つめる君の姿があった。


「…もって、いて…くれ、たんだ…。」


息切れで途切れ途切れになりながら、

君に話しかける。


すると君はほほえみながら


「お気に入りなの。」


そう言った。


その言葉を聞き安心するのと同時に、

素直に嬉しいと思った。


「よかった。…気に入ってもらえて。」


ただじっと絵を見つめていた君は、

絵の中の星たちを、撫でるようにそっとふれる。


そして──


「…友達…だよね…?」


そう僕に問いかけた。


僕は笑顔でこう答える。


「そうだよ。」


すると君は話してくれた。

…なぜ、星空を見上げているのかを…。


「星をね、見てると落ち着くんだ。

  私は一人じゃないって思えるの…。」


君は目を細め、ほほえみながら話を続ける。


「…私ね、友達っていう存在が一人もいなかったの。

でも、今は翼がいる。

 翼に会えてよかったって、思ってるよ。」


そう言って君は、僕に笑いかける。



 ───なんでだろう…。



 君は…君の顔は笑っているのに

  どうしてこんなに──



 ──悲しそうなんだろう──……



「……──んで───」


「…え?」


「なんで、そんな悲しそうなんだよ…。

 まるで、『別れ』みたいじゃん…。

  僕がいる。…ずっと一緒にいるよ?


 ──僕が君を守るから…。 」



「本当…?」


「本当。」


 すると君は笑って


「約束。」


そう言って、自らの小指を僕に向けてきた。


 そして僕は


「約束。」


そう返し、自らの小指を君の差し出した小指に絡めた。




  ……──その約束が、


   果たすことができないことを



      知らずに────………







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