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名前も知らない君に僕は恋をした  作者: 桐生桜嘉
君と過ごした日々 
2/13

君との出会い ~3月25日~

 君と出会ったのは、確か3月25日のことだった。

中学を卒業して、あと少ししたらもう高校入学。

そんな立場にいた浮かれ気味の僕は、ふと思い出したんだ。


…──小学校の頃の、思い出の場所。


そこは小さな公園で、人にあまり知られていなかった。

でも、そこから見る空は絶景だった。

そして、その空を囲むように咲き誇る『しだれ桜』。


しだれ桜の花言葉を聞いたことがある。

僕の妹が言っていたことだ。


「しだれ桜の花言葉って知ってる?

 『優美』っていってね、上品で美しいって意味なんだって!」


花言葉のとおり、優美さを纏うその公園のしだれ桜は、

夜になると、その美しさは一段と増す。


その公園の名前は『桜ノ宮公園』。


僕はそこを、秘密基地のように思っていた。


「…久しぶりに行ってみるか…。」


そしてその日の夜。

僕は桜ノ宮公園に足を運んだ。


するとそこに───



  君がいた──……



ブランコに腰かけ夜空を見上げるその姿は、

悲しいものだったが、美しかった。


腰まである漆黒の髪を靡かせ、

花のように、やさしく…そして儚い…。

そんなふうに君はほほえんでいた。


静かに近寄ると、君の目には涙が浮かんでいて、

その涙は瞳いっぱいに溢れ、やがて頬を伝い、

そして地に落ちていった。



 散りゆくしだれ桜に、君は似ていた──……



僕は、君の隣にあるブランコに腰かけ、

そして君に話しかけた。


「…どうして、泣いてるの…?」


そう聞くと、君は涙を拭い、


「やっと…会えるから…。」


そう静かに答えた。


僕は誰に会えるのかを聞こうとした。

…でもそれを聞いたら、君は…いなくなってしまいそうだった。


僕はただ「そっか…。」と言い、君と同じように夜空を見上げた。


空にはいくつもの星たちが、それぞれの光を存分に放ち、輝いていた。


「きれいだよね…。」


そう言った君に


「そうだね…。」


と、僕は返した。


それしか話さなかったけど、僕には大切な思い出だ。


僕はその日、君の寂しげに笑うその姿を見て、


 君を守りたい──……  


そう思った。



そして誓った。



──なにがあっても、僕が君を守る。


      この命にかえても───……

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