君との出会い ~3月25日~
君と出会ったのは、確か3月25日のことだった。
中学を卒業して、あと少ししたらもう高校入学。
そんな立場にいた浮かれ気味の僕は、ふと思い出したんだ。
…──小学校の頃の、思い出の場所。
そこは小さな公園で、人にあまり知られていなかった。
でも、そこから見る空は絶景だった。
そして、その空を囲むように咲き誇る『しだれ桜』。
しだれ桜の花言葉を聞いたことがある。
僕の妹が言っていたことだ。
「しだれ桜の花言葉って知ってる?
『優美』っていってね、上品で美しいって意味なんだって!」
花言葉のとおり、優美さを纏うその公園のしだれ桜は、
夜になると、その美しさは一段と増す。
その公園の名前は『桜ノ宮公園』。
僕はそこを、秘密基地のように思っていた。
「…久しぶりに行ってみるか…。」
そしてその日の夜。
僕は桜ノ宮公園に足を運んだ。
するとそこに───
君がいた──……
ブランコに腰かけ夜空を見上げるその姿は、
悲しいものだったが、美しかった。
腰まである漆黒の髪を靡かせ、
花のように、やさしく…そして儚い…。
そんなふうに君はほほえんでいた。
静かに近寄ると、君の目には涙が浮かんでいて、
その涙は瞳いっぱいに溢れ、やがて頬を伝い、
そして地に落ちていった。
散りゆくしだれ桜に、君は似ていた──……
僕は、君の隣にあるブランコに腰かけ、
そして君に話しかけた。
「…どうして、泣いてるの…?」
そう聞くと、君は涙を拭い、
「やっと…会えるから…。」
そう静かに答えた。
僕は誰に会えるのかを聞こうとした。
…でもそれを聞いたら、君は…いなくなってしまいそうだった。
僕はただ「そっか…。」と言い、君と同じように夜空を見上げた。
空にはいくつもの星たちが、それぞれの光を存分に放ち、輝いていた。
「きれいだよね…。」
そう言った君に
「そうだね…。」
と、僕は返した。
それしか話さなかったけど、僕には大切な思い出だ。
僕はその日、君の寂しげに笑うその姿を見て、
君を守りたい──……
そう思った。
そして誓った。
──なにがあっても、僕が君を守る。
この命にかえても───……