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名前も知らない君に僕は恋をした  作者: 桐生桜嘉
君と過ごした日々 
11/13

君との別れ ──最後の日──

君の親父さんから聞いた話は、

あまりにも衝撃的なものだった。


でもその話のおかげで、

君を知ることができた。


なぜ星空を見上げていたのか。

そして、僕らが初めてあったあの日、

君が言った言葉の意味。


君の病気のこと……。



〖櫻井 美琴〗という君の名前───……。



ただ一つ、僕にはまだ疑問が残っていた。


なぜ、君は僕に名前を教えてくれなかったのか、

ということ。


「あの…もう一つ聞いてもいいですか…?」


「なんだい?」


「娘さんはどうして僕に、その……

  名前を教えてくれなかったんですか……?」


「あぁ…そのこと…。

 きっと美琴は、

 君に名前を呼んでほしくなかったんだと思う。」


「なぜ──」


「──この世を去るのが…

  君に会えなくなるのが、

 一層つらくなるからだと思う。

 ただでさえ、美琴は君と出会ってから

 死ぬことを恐れるようになった。

 親友である君に名前を呼ばれれば、

 この世を離れたくないと強く思うだろうよ。」



「………………」



……──バカだ……僕は……。


──傷ついてる──……。


……親父さんの──



 ──〖親友〗という言葉に……。



「───〖親友〗……ですか……。」


「あぁ。美琴が言ってたんだよ。

 翼くんは優しい人だって。

 自分の中では親友──


 ──大切な人だと……。


 誇りに思っていたよ。

 ──君に出会えたことを。」


「──そう……ですか…。」



その時、手術室のドアが開き、

中から医師が出てきた。


僕と親父さんは立ち上がり、

医師のもとに駆け寄る。


「──先生っ!!娘は…娘はっ…!?」


そう問う親父さんに、医師は──



 「──残念ながら──……」



そう言って、静かに首を横にふった。


手術室から出てきた君は、別の部屋のベッドに

移される。



ベッドに横たわる君は、

まるで眠っているかのようだった。


「……──美琴……?」


君の名前を呼んでみるが、君は目を覚まさない。


僕は何度も何度も君の名前を呼んだ。


──さっき知ったばかりの君の名を。


──今まで呼ぶことができなかった君の名を。



  ──大切な君の名を──……



「……守ってあげられなくて……ごめん……。

  約束……果たせなくて──……。」


涙がとめどなく流れ落ち、

僕の頬を濡らしていく。


僕は涙を拭い、ぼやける視界をはっきりさせる。



その時、君の閉じられた目から流れる一粒の涙が、

日の光に反射して輝いた。




「───来世でまた会おう……美琴……。


  その時は、僕が絶対に守る──……。」




そう言った僕の目には、



  君が笑っているように見えた──……。




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