chapter 3
3
「朗報である。メンデルスより〝スポットライト〟の設置に成功したとの報告を受けた」
バグフィルタ計画にて、実行的な舞台であるイノヴェーションズの代表CEO会議は、今宵は異様な高揚感に包まれていた。開会の一言目から、ハムレットははやる気持ちを抑えきれないでいた。まるでバースデイプレゼントの包装を破り捨て、すてきな中身に目を輝かせる子供のようである。もっとも、それはハムレットだけではなかった。
「我々第二世界にとって、大きな一歩ですね」フィディーリは握り拳を作る。
「スター・システムは、あくまで手段に過ぎない。結局のところ、なにをなすかで物事の価値は決まる」とは口にしながら、冷徹なはずのプロスペロの瞳が心なしか燃えている。
こういうときに限って冷静な評価をするのは、パックである。
「いやまだ運転してないしー。ちょっとみんな、気が前のめり気味じゃない」
そして、〈スーパシー〉傘下の五つの第二世界で、空席が一つ。
〈エレガントキメラ〉の代表CEO、コーディリアは不在だった。
「気になるのはもう一点。悪夢ちゃんが肝心の前翼竜の化石を持参してくるかってことだよ」
「これまでの筋書きが、すべてつぎの舞踏会へ収束するよう組まれているのだ。プログラムの変更はありえない」ハムレットは断言する。「それにコーディリア王女は執着している。人は所詮、記憶の奴隷だ」
「まあいいよ。不確定要素が多すぎる。ワルキューレとてすべてを見通せるわけじゃあないんだから、あんまり浮かれないほうがいいと思うけどね。ぼく、いちおうテンション下げておくわ」
「不穏なことを言う……。いずれにせよ、悲願は近い。クライマックスに相応しく、悪夢の王女には華々しく散っていただこう」ハムレットは立ち上がり、一人一人、全員に目を合わせてたら決まりの台詞で締めくくる。「フィラメントを突破するのは、我々イノヴェーションズだ」




