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銀河舞踏会 ガンマ・ジュリエット  作者: やまなし
第十一話 「魔法使い 対 魔法使い: vs. Valkyrie Ori」
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chapter 4


   4


「ちょっと、聞いてないよっ」

 ジュリエットは両手をグーに、ガードポジションで構えるボクサースタイルでおやんズ(親父の複数形)に猛抗議した。そんな彼女を一瞥しただけで、当のおやんズはジュリエットを完全無視。二人でなにやら深刻そうな面持ちで打ち合わせを続ける。

「ちょっとー、無視しないでよー」

 たまらずおやんズの間に割って入るジュリエット。それこそボクシングで、選手二人の間に躰をねじ込むレフェリー様々だ。

 宝亀将軍は露骨に顰めっ面をする。

「ならばあとにしてくれんかね、ジュリエット嬢」

「ぼくは怒っているんですよ」

「なににかね」

「うぃーの……、あ、えと……。あまみぃ――」

「天宮羽衣の件ですかな」基地副司令の平田大佐が助け船を出す。

「そう、天宮うぃー。マジで名前忘れてた」

「隠していた、というよりか報告する義務がありますかなぁ」などと惚け面で平田大佐は呟く。人の良さそうな彼だが、なかなかのくせ者なのである。

「いかにも、我々の包囲網を突破した〈ツバメ〉が高校生に接触したのはたしかだ。ほかにも近隣の飲食店や温泉施設に立ち寄ったことが判明しているが、まったく目的は不明である。なにせ天女様には目もくれんかったのだからな」宝亀将軍は真顔で皮肉を口にする。「彼のディナーのメニューも調べがついているが、聞きたいかね」

「じゃなくてっ。なんでパックがうぃーとランチなんだよ。おかしいと思わないの」

 なおも追撃するジュリエットに、娘のわがままを窘める親父のような寛容さで将軍は答える、

「件の学生がジュリエット嬢の友人というのは承知している。しかし〈ツバメ〉が接触した民間人は学友だけでないのだぞ。心配する心持ちは理解できるが、杞憂と言わざるを得んな。友人に怪我やなにかでもあったのかね」

「いや……、それはないけど……」勢いとともにジュリエットの躰も小さくなる。「いやないけどー、やっぱうぃーに接触した目的がー」

「ジュリエット君」平田大佐の一言が、ジュリエットの口を塞ぐ。「我々がなにか隠し事でもあると貴君はお考えだな。そのとおり。他国の民間人に情報の完全公開などありない。それに、一方的に協力だけをもとめ自らはだんまり。我々はお人好しではないのだよ」

「ぐぬぬ……」ぐぅの音もでないジュリエットの口からぐぬぬの音が漏れる。「わかったよ。じゃあねっ」

 仕方なくあきらめたジュリエットは、負け犬の遠吠えとばかりに去り際まで二人のおやんズを睨みながら、『ぐぬぬ』と喉を唸らせて退出した。それでも部屋の扉は丁寧に閉めるあたり、彼女の性格が表れている。

「ふう……、小うるさい娘の相手は疲れるな」

「まったく。その点、天女様も同類ですが」

「また〝おねだりモード〟か」宝亀将軍が嘆息する。「こんどは」

「等身大のお人形、であります。それも、できるだけ精巧な造りで、間接の可動域が広く頑丈な代物ということです。寂しさに話し相手をご所望、ということでしょうか」

「若い娘の考えることはわからん……、いや天女様は我々よりずっと長生きだったか。ともかく、〈レッドマジシャン〉は鼻が利くようだ。使い物になるかどうかわからんが、〈エンジェル〉の育成まで気取られるわけにはいかん。わかっているな、大佐」

「引き渡しは、およそ遠くないかと」平田大佐の細目が開く。その人相を見れば、ジュリエットは最大の警戒をするだろう、があいにく彼は本性を隠す術をよく心得ていた。


 さて、将軍の執務室を後にしたジュリエットは、鼻息も荒く大股で基地を闊歩していた。すこしくらい教えてくれたってイイじゃないか、というのが理由だったが、自分の素行は棚に上げるあたり彼女も相当である。

 天宮羽衣が軍となんらかのつながりがある……。

 確証はないが、確信はある。

 しかし天宮羽衣本人に、その自覚はなさそうだ。もしそれすら隠していたら、彼女もなかなかの役者だが……、

「女の子ってのは、総じて油断ならないな」ジュリエットは独りごちる。

 思い切って羽衣本人に問いただすのも悪くないが、まずは口が軽そうな人から当たってみよう。探していたわけではないが、コーヒーを飲みに食堂に立ち寄ると、偶然にも目当ての人物を発見した。観月智一博士である。

「学校は。行かなかったの」ジュリエットはサーバからコーヒーを一杯手にして、観月と相席する。

「お前こそ」観月は少し早い昼食を頬張りながら答えた。

「博士は聞いていたかい。先日のパック騒動の件だけど、あいつ、うぃーに会ってたんだって」

「その情報、どこから」

「本人から」

「なるほど」

「で」ジュリエットはずいっと顔を寄せる。会話にのめり込むと、物理的にものめり込む彼女の癖である。「博士なら、知っているんじゃないの。知ってて、ぼくに黙ってた」

「まーな」

「ぼくは隠し事はできない性格だからね。単刀直入に聞くけど、パックが狙うほど、うぃーになんの重要性があるの」

「代わりに君の秘密を教えてくれるのなら」観月は分厚い肉を一口。ジュリエットから詰問されるこの状況は想定済み、といった冷静さである。

「むーん」対して、ジュリエットは将軍に副官、さらに観月にまで軽くあしらわれお冠である。「すくなくとも、うぃーに秘密があるってのは確かだね」

「ないかもしれんよ。なくてもあるようにみせる。交渉の常套手段だ。天宮本人は、なんて言っているんだ」

「なんとも。ふつうにお昼を一緒に食べました、しか言ってないよ」ジュリエットは頬杖をついて、つまらなさそうに嘆息する。

「そうか……」それ以上、観月はコメントするつもりはないようだった。

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