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銀河舞踏会 ガンマ・ジュリエット  作者: やまなし
第十話 「ダークファンタジへの招待状 : vs. Pack Robin-Godfellow」
75/112

chapter 5


   5


「いいかげん、機嫌直したらどうだ」兎田軍曹がさすがに声を掛けた。すでに上半身は裸である。引き締まった腹筋から、筋肉の声が聞こえてきそうだ。

 ジュリエットの言い分は次のとおりである。

「だって、パックの居場所はつかんだんでしょ。しかも学校にでしょ。じゃあ、いくでしょ」

「いくな」すかさず軍曹がツッコんだ。

「魔法使いはぼくだけだよ。しかもぼくのせいで……」

「責任、は感じている、ようね」猫山曹長が長い緑の髪を耳にかける。

「そりゃあね。ぼくだって人並みの責任感はあるよ」

 どの口が言うか、と曹長・軍曹の心の声が共鳴した……。

「それなのに、なんなのこの部屋はさ」ジュリエットはベッドの上に立ち上がり、一つ一つを指して言う。「薄っすーい粗末なベッドマッド。猫も通れないような小さな窓。壁なしの便器丸出しトイレ。なにより、ドアには鍵、外側からねっ。これじゃあまるで、独房じゃあないか」

 猫山曹長も、兎田軍曹も、あえてツッコミはいれない。

「これじゃあまるで、独房じゃあないか」

 しーん、という音にならない音が聞こえた。

「もうこうなったら、力ずくでドアを開けてやる」

 こういうときだけ、猫山曹長と兎田軍曹の動きは素早い。というか、忘れがちだがそれが二人の任務なのである。

「おやおやぁ、お二人とも、ぼくを止めるつもり」

「あったりまえだ。だれが好き好んで独房でご休憩かよ」兎田軍曹は拳を作って両腕をあげる。

「やめて。こんな、狭い部屋で」猫山曹長は二人の間で仲裁に入る。

「姐さんもいいかげん、この自由人にアッタマに来ているところだろ。いい機会じゃあないか」

「拳闘かい、軍曹。いいよ、付き合うよ。こっちは魔法有りだけど」

「おうおう。それじゃあ噂に聞くフレームワークとやらを見せてくれ。全力でかかってこい、小娘よ」なんとなく、兎田軍曹の台詞は三流の雑魚ボス風だ。

 そんな二人に猫山曹長の冷静なツッコミ。

「馬鹿なの」

「いいだろう。そっちがその気なら乗ってやる。それがジュリエット・メアリ・キャピュレットだ」

「煽り耐性ゼロの若者」

「ライドー」

 これは再演の拍手。

 ジュリエットは情報という概念の兵装をダウンロードする。

 頭の高い位置でくくった自慢の赤髪に、黄金のティアラがそっと乗る。

 花咲くように広がるドレスには繊細な花の刺繍が刻まれて、羽織ったマントは炎のようにゆらいでる。

 ヒール紐は白い腿までリボンのように結い合わせ、オトナセクシーに演出した。

 瞳の星はやっぱりおまけ。

 そして決まりのセリフで締めくくる。

「不屈の光は赤の焔。魔法男子、ジュリエットPM。バージョン1.05」

 ぺっかーん、と背景に星をちりばめて、ジュリエットはおめかし――、もといフレームワークを展開した。

「ウルトラ早き替え……」

「馬鹿なの」

「さあどうだ。これで鉄格子だろうとコンクリの壁だろうと、穴をあけて脱出してやるぜっ」

 そこで猫山曹長がぱんぱん、と両手を二度打った。あきれた様子で、ふーんと鼻から長く息を吐く。

「はい、そこまで。二人とも、イライラしない。特に、ジュリエット、寝てないでしょ」猫山曹長は鉄格子の扉に手をかける。「コーヒー、と食べ物。あと遊び道具。もって来てあげるから。我慢。我慢、ね」

 すうっと猫のように音を立てず、猫山曹長は部屋を出て行った。

 残されたジュリエットと兎田軍曹は、仲良く声をそろえた。

「鍵開いてるぅー」

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