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銀河舞踏会 ガンマ・ジュリエット  作者: やまなし
第九話 「自動人形の罠 : vs.Morgan」
66/112

chapter 5


   5


 羽衣が謎の紳士からプレゼントを受け取り、嬉しさのあまり〝感動の舞〟を居間で舞っているころ、ジュリエットはまだ天宮医師が運転する車の中にいた。

 ウェスカーはさきに自宅前で降りている。

 ジュリエットは後部座席に座り、後ろから休む間もなく運転席の天宮医師に喋りかけている。二人きりの車内で、ふつう、友人の父親と話す話題などないのだが――というかこういうシチュエーションなら友人と一緒に娘の羽衣も同乗するが――人見知りしないジュリエットは親しい親戚のおじさんくらいの感覚で会話が弾んでいるのだから最強クラスのコミュ力である。

「――てな感じで、うぃーってば、ぼくにいっつも要所々々で鋭い指摘を入れてくるんです。なんていったかな、つー……」

「ツッコミ」

「そう、ツッコミとボケ。ってだれがボケじゃ」

「強い口調だけど悪意はないんだ。これからもよくやってほしい。レッドマ――、いやジュリエットさん」

 天宮医師が、ジュリエットの部隊内コードネームを口にしかけ、そこでジュリエットはやっと空気を学園生活側から基地生活側へもどすことにした。

「レッドマジシャンで構いませんよ、天宮医師」ジュリエットの顔がバックミラーに映っている。浮かれた女子高生の顔ではもうなく、表情に影を抱えた顔である。

「いや、基地の門を潜るまでは、娘の友人のジュリエットさんでいてあげてください」

「怒られるんじゃないかって、思ってました」ジュリエットには珍しく、殊勝な声色だった。

「――というのは」

「だって、ぼくは六つ世界から追われる犯罪者、灰炎のジュリエットですよ。大事な一人娘に近づかれてよい気分はしないのがふつうです」

「そう、ですかな……」天宮医師はすこし、返答に窮したようだ。「では聞かせていただけますか」

「なにをです」

「なぜ娘に近づいたのです」

 バックミラーごしに、ジュリエットは天宮医師と目を合わす。

「それは……」言いかけて、ジュリエットは違和感を覚えた。「逆に聞きますが、この灰炎のジュリエットがなんらかの目的を持って接触を図るほど、お嬢さんには特別ななにかがおありなのですか」

 天宮医師は無言だった。

 車は基地へ続く湖に掛けた橋のゲート前まで到着した。

 優しいマイナスの加速度を全身で受け止めて、車はそっと停車した。ゲートは目の前だが、止まるにはまだ手前過ぎる。詰め所から、たぶんこちらはすでに監視対象になっているだろう。

「特別です」天宮医師が答えた。顔は前を向いたままだ。後部座席に座るジュリエットからは表情は窺えない。

 天宮医師は繰り返し言った。

「特別ですとも」

 優しげな父の顔で後部座席を振り返る。

「私の、一人娘ですから」

「そうですね」ジュリエットも自然と微笑みで返した。「ぼくはうぃーが好きだから、好きなうぃーと一緒にいます。それだけです」

 天宮医師には礼を言って、ジュリエットは彼を見送った。車が見えなくなると、静かな夜に湖の波打つ音だけが聞こえる。もうちょっと寄り道をしていたい気持ちもあったが、番兵に気遣わせるのも悪いから、ここは大人しく帰ることにした。

 ジュリエットは二メートルほどの鉄柵を飛び越えて、基地施設領内に着地。

 いちおう詰所の衛兵に声を掛けて帰宅を知らせた。

「ただいま。美少女でーす」

 詰所の当直だった若い兵士は、ものすごく嫌そうな顔をした。

「あの、門をジャンプするの、やめてもらえます」

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