chapter 2
2
「羽衣ちゃーん」舌足らずな少女の声はウェスカーである。
始業まえの時間帯、彼女は羽衣の前に小さめのレジ袋を片手に駆け寄った。
「ウチさあ、ポテチーの新しい食べ方考えたんだけどぅ、聞きたい」
「このまえはなんだっけ。チョコ味の麩菓子をパンに挟んでチョココロネ、だっけ。ふざけんな」
「今回のは画期的なんだから。ポテチをね、細かく砕いてね、ごはんに掛けるの」
「それただのふりかけや」
中学からの親友は、こういうちょっと抜けたところがあって、おせっかいな羽衣がウェスカーと仲良くなるのは自然な流れであった。
「でも悲しいよねぇ。どの駄菓子もね、年々ちっちゃくなっちゃうの。お菓子のインフレねえ」
「そうなん。あたしあんまり食べんからなぁ」
「ギョーザ棒なんか、ウチ、小学校の遠足のときかならず買ってたけど、こんなんちっちゃくなかったもん」
「そーか。割とはじめからそんななもんじゃね」
「これだから最近の若い子は」
ウェスカーは目をバツ印にして訴えるが、興味ない羽衣はさらりと受け流す。
「あそう。ていうか、朝からお菓子ばっかり食べてたら、あいつみたいになるよ、ってわあッ。びっくりした。ジュリエット」
赤毛の少女は、お菓子でいっぱいの口をもぐもぐしなら、にこっと笑う。
「おはよ」
「おはよじゃないわ。あんたずっと休んで、なにしてたのよ」
「なにって。まあ」視線を斜め上に考える仕草をしてから、「舞踏会」とやや疑問系。
「ふざけてんのか」
「ジュリエットちゃん。これ納豆と一緒に食べたらおいしいよ」
「ナットーてなぁに。それもお菓子」
「ううん。腐った豆」微笑むウェスカー。
「しゅごい……。モッタイナイ精神……」
なんとなく、他人とズレた二人だが、彼女同士では絶妙にマッチしているのだ。通じているようで、たいてい通じてはいないのだが……。
「ところでジュリエット――」と声を掛けたところで、予鈴が鳴った。
「おっと着席しないとね」ジュリエットは慣れた仕草でウィンクして、自席へ行った。
観月に目を向ける。目が合って、彼は慌ててよそを向く。
「あれは『俺に聞いてくれ』というフリなのか」羽衣は小さく呟いた。
――にしても、昨夜の夢に見たジュリエットの涙の姿が、現実の彼女でなくてよかったと安堵する羽衣だった。




