chapter 10
10
中央図書館は、神々しさすら感じられる古代の神殿さながらの空間だった。一歩一歩進むたびに、石灰質の上等な石材を叩く足音がよく響く。日の光は最小限で、しかし不思議な光量が満ちている。
図書館は情報の墓場だ。
現代のテクノロジがあれば、情報はどこへでも、一瞬で持ち運べる。ペーパメディアに印字された文字を一字ずつ手作業で読み取る、そのなんと非効率なことか。しかし、探し人は読書を好んでいるらしい。
コーディリアは、世界でもっとも貴重な数万のオブジェと書架の間を縫うように進む。その後ろをぴたりと身を縮めてロザラインが続く。この期に及んで、いまだロザラインは躊躇っている様子だ。
すると見えてくる。
まるで絵画のなかの世界。
ステンドグラスを背景に、彼女は足を組み、物憂げに視線を本に落としていた。
息をのむほど美しい、と思った。
彼女が片手で髪を払うと、長い赤毛が焔の揺らぎのように光を浴びて輝いた。
そんな焔の赤い髪もさることながら、対照的に雪のような肌がより際だって白い。均整のとれた顔立ちは中性的で、人工的な外科的手術で作り出せる造形ではないことが見て取れる。手足はすらりと長く、女性的な柔らかさは、まだ未発達のようだ。だから、その長い髪を束ねキャップで隠してしまえば、男の子にも見間違える。とくに、彼女のいまの服装は短パンに無地のTシャツ姿。夏休みの少年のようで、ぜひとも髪型を整え、上等なドレスに袖をほしいと思った――、彼女の瞳を見るまでは。
ジュリエット――とコーディリアは確信した――は二人の気配に気づき、ふと視線を本からコーディリアに向けた。それだけで、コーディリアは半歩後ずさった。わずかでもジュリエットに好意を抱いた、一瞬まえの自分を愚かだと思った。
コーディリアは直感したのだ。その瞳の奥底に潜む、まるで童話のなかの毒リンゴをつくる醜悪な老婆のような残忍さに。
そして、
――ああ、ロメオか。安心してくれたまえ。愛してなどないよ――




