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銀河舞踏会 ガンマ・ジュリエット  作者: やまなし
第七話 「悪夢 と 氷結 : Non Battle」
42/112

chapter 8

 Bパート


   8


「ロメオ様……」

 彼の名を口にするとき、ロザラインはいつだってうっとりと甘味を舌の上で溶かすようだった。

 最近のイライラをコーディリアは自覚している。その原因も判明している。唯一の友人が、ロメオとかいう知らない男に占領されているからだ。自分は、その片手間の関係でしかいない。否、そういう考えは彼女に失礼だろう。とはいえ、嫉妬の感情を理性で抑えることはできそうになかった。

 うじうじ悩むのは性に合わない。

 コーディリアは、そのロメオとやらを見定めることにした。

 話に聞くに、ロメオとやらは実は有名人であることを知った。

 実父であるモンタギュー博士が、宇宙測位システム――いわゆる世界地図――の権威だそうで、その息子であるロメオもまた、若くして数学の分野で数々の賞を受賞する神童らしい。

 ほかにも、フェンシングの腕前は世界大会レベルで、プログラミングのエンジニアとしても一流。重厚なスピルの発現が可能なほど情報処理能力は高く、もちろん、なかなかの男前だそうだ。

 調べてみても、ロメオの悪い噂は聞かない。強いて言えば、ずいぶんと自由奔放な性格らしい――、それも愛嬌の範囲内らしいが。

 二つ名は、〝魔神ロメオ〟

 直接会って話がしたい。

 コーディリアがそのつま先をロメオに向けたとき、浮かない顔のロザラインを見かけるのだった。

「赤毛の女」ロザラインから話を聞いたコーディリアは、思わず声を上げる。

「ちょ、ちょっとコーディリア。声が大きいわ」ロザラインはカフェテリアで注目されるのを嫌って、さりげなく周囲を警戒する。

「あら、失礼」コーディリアは心落ち着かせ、とりあえず紅茶を一口含む。

「いつのころかわからないのだけれど、赤毛の女の子がロメオ様と一緒にいるのを、みんな目にしているの。とてもきれいな子らしいしくて……。わたし、どうしたらよいのか」

「どうしたいの」

「どうも、しないわ……」ロザラインは消え入るような声で言った。

「貴女」そんなロザラインを、コーディリアは叱咤する。「よろしいの。恋人をぽっと現れただけの女に奪われて」

「だって、まだ恋人ではないもの」

「ちょっと……」コーディリアはあきれて鼻息も荒い。「頑固な貴女が、変なところでは弱気なのだから。そのロメオってのも八方美人ね。この様子じゃあ、あっちにも、こっちにも、女を用意しているんじゃあないかしら」

「ロメオ様を悪く言わないで」

「ちょっ、この……」コーディリアは、こういうときだけ強気な乙女の額を指で弾く。

「ひゃんっ」ロザラインが小さな悲鳴。

「だれを心配してやっているとお思いかしら」

「べつに頼んでもいません――、ひゃんっ」悲鳴をもう一つ。

「よろしい」コーディリアは優雅に、そして大胆に立ち上がる。金髪がふわりと広がった。「会いに行きましょう。ロメオよりもまず、その赤毛の女とやらに」

「え……」ロザラインが眉を垂らす。「それはちょっと……」

「手っ取り早いじゃあない。ねえ」

「そんな、ちょっかいだして、もしもロメオ様のお耳に入ったら、わたくし……」

「心配で心配で、研究も手に付かないんじゃあないの」

「うっ、それは……」図星のようだった。

「一言、言ってやればいいのよ」

「なんて」

「『貴女、わたしのロメオになのつもりよ』って」

「むりむりー」ロザラインが首を横に振る。

「ただの学友かもしれないじゃない。それどころか、仕事上の取引相手とか、親類とか、妹かもわからない。ねえ」

「ねえって言われても……」

「どこにいるのよ」これぞ王侯貴族。コーディリアは平民をひれ伏す圧倒的なプレッシャをかけて詰問する。

「た、たいていは学内で、あと中央図書館とかで目撃情報が」

「名前は」

 すっかり怯えた子犬のような目で、ロザラインは小さく答えた。

「確か……。ジュリエット」

「そう。赤毛のジュリエット、ね」

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