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銀河舞踏会 ガンマ・ジュリエット  作者: やまなし
第七話 「悪夢 と 氷結 : Non Battle」
36/112

chapter 2

     2


 観月は待合室の窓から、ベッドに横たわったままぴくりとも動かないジュリエットをじっと見守っていた。もともと白い肌のジュリエットが、より白く、陶器で作られた精巧な人形のようにみえる。恐ろしいほど美しい。

 彼女が胸の上で手を組んでいるのは、猫山曹長のいたずらだろう――、まるで魔女の毒リンゴを食べ、長い眠りの呪いにかかったお姫様のようだった。

 一行が銀河舞踏会から戻って、かれこれ六十時間ほど経過している。

 ジュリエットはそれいらい眠り続け、目を覚ます気配はない。

 見た限り彼女に外傷は認められない。が、軍医の見立てによれば、心拍数、脳血流量、体温が異常に低い。彼女のバイタルは、恒温動物の休眠活動を示唆していた。つまり、冬眠である。

 覚醒すれば連絡をもらえる手はずになっているが、数時間おきに理由もなく、こうして観月は見舞いに来ている次第である。

 そうすると、決まってジュリエットの監視役にからかわれるのだ。

「キッス、でも、してみれば」猫山曹長はタブレットに視線を向けたまま言った。

「俺が王子さまならね」

「案外、天女様ならしゃれた答えを用意しているかもわからいっスよ」兎田軍曹が口の端をにっと持ち上げる。

 そうなのだ。はじめから天女様に目覚まし時計を借りてくれば済む話だが、彼女に願うと、おねだりモードになってしまってお手上げだった。〝天地を貫く光の刃〟をご所望である。なんのことやら……。

「博士は暇人ですね。俺はもうちょっと、レッドマジシャンに眠っていてもらいたい」兎田軍曹は楽観的な物言いだ。「休めるときに休まねぇと」

「わたしも。読んでない漫画、たまっていたから。読書、ちょうどいい」

「姐さん、漫画は読書っていわねーんだよ」

 脇腹を突かれた兎田軍曹が乙女のような高い声で笑う。弱点だったようである。

「冷たいな二人とも。ジュリエットが心配じゃあないのか」観月が抗議するが、二人の反応はぱっとしない。

「あれで彼女も、冷たいわ」と猫山曹長はたんぱくに言う。

「いまは体温的にもな」兎田軍曹の親父ギャグ。

「あんたはジョークも、冷えてるよ」

 わっはっは、と二人が笑い、絶妙なコンビネーションを魅せる。

 観月はでこぼこコンビに腹を立て、大股開きで治療室をあとにした。

 大きなため息を一つ。

「学校でも行こうかな」そんな気分でもなかったが、それ以外にすることもなかった。

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