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chapter 1
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彼女は研究室が好きではなかった。自分の研究テーマに熱心に取り組むほど、小さくあざ笑われるのを知っていたからだ。指導教官すらも、その若さで挑戦するような題材ではない、と断言した。
「いいえ。わたくし、テーマは変えません」
儚く、細い容姿の彼女だったが、存外、執着心と意固地さは人並み以上。
もともと人付き合いは苦手で、なにかと悪く思われがちの彼女だったから、善意の忠告も無視して氷に魅了される姿が、まるで古い物語に登場する魔女のように見えたのかも知れない。
ついたあだ名が、
――氷結のロザライン。
ロザラインがそんなふうに呼ばれはじめたころ、彼女はとある噂話を耳にした。年頃の少女たちと、興味の矛先がちょっとずれていると自覚している彼女でさえも、その話は妙に耳に残った。
なんでも第二世界の王女様が留学にいらしたのだとか。
それも曰く付きの王女様で、彼女はこんな不名誉な名をつけらたらしい。
悪夢の王女、と。
「どんな方かしら……」




