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銀河舞踏会 ガンマ・ジュリエット  作者: やまなし
第七話 「悪夢 と 氷結 : Non Battle」
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アバンタイトル

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 おおよそ、最大全長三メートル、横二メートル。

 エメラルド色の美しい海のような色をしたソリッド・ファイア――〝氷結の焔塊〟には、海中を切り取って固めたように、二人の人間を生きたまま閉じ込めていた。

 ジュリエットの恋人、魔神ロメオ。

 コーディリアの唯一の友人、氷結のロザライン。

「いいか、ジュリエット」コーディリアは自慢の金髪が乱れるのも、上等なドレスが煤まみれになるのもいとわず、憎き赤の魔女の名を呪うように吐き捨てる。「どれほどの悪事もいずれ明るみに引き出される。正当な裁きを受けず逃れる罪人などありはしない」

「ぼくは――」ジュリエットは反論しかけて、しかし口を噤んだ。

 コーディリアはイベントホライズンの輪を潜るまで、強くジュリエットを睨み続けていた。

「ぼくは……。じゃあどうすればよかったんだよ……」イノベーションズが全員撤退したあと、残されたジュリエットは両手で顔を覆い、懺悔するように呟いた。

 銀河舞踏会はもはや限界だった。空間がクッキーの家のように、あちこちのように亀裂が入り、崩れ落ちている。

 手を伸ばせば触れられるのに、後方では観月が懇願するように叫んでいた。

 わかっている、

 わかっているがしかし――。

「ジュリエット嬢、撤退を」

「このままじゃあヤバい。それだけはわかる」

 苦渋の決断を迫られたジュリエットが取った行動は、

「ええい――、撤退するッ」

 それ以外に、道はなかった。

 開いたゲートに、ジュリエットは二人を抱えて飛び込んだ。

 間一髪だったといえるだろう。

 あと数瞬とどまっていれば、空間ごと躰を切り裂かれていたか、あるいは帰り道を失って遭難するところであった。

「ぶへぇえ――」観月は勢いあまって顔面で着地する。

 ヒダカミドウ側のゲートから、無事に通常空間に三人は戻った。

「ま、間に合った……。今回は急展開過ぎて、なにがなにやら……」身を起こした観月は、ジュリエットの目を見て悟った。「ジュリエット。お前まさか」

「義理は果たした」

 いつもの愛嬌たっぷりのブルーアイズではない。

 目が本気だ。

 すぐにでも引き返すつもりでいる――ッ。

「やめろジュリエット。いまの君は平静じゃあない」

「はなしてくれ、博士」

「将軍、電力の供給を遮断して――」駿河が援護を求めた声が、途中でとまった。

 その理由を、観月もすぐ理解することになる。

 白い手がぬっと顔を横切った。

 なおも暴れるジュリエットの額に、その指先が触れる。

 ジュリエットと〝彼女〟の目が合った。

「ワ、ワルキューレ様――」

 その言葉を最後に、がくりと全身の力を失ってジュリエットが崩れ倒れた。まるで糸を切った操り人形のように。

 観月はジュリエットを支え、ゆっくりと床に寝かせる。

 天女はちらりとジュリエットに目をやっただけで、音もなくきびすを返す。そのままゲート格納庫を後にした。

 残された観月はずり落ちた眼鏡を直して独りごちた。

「濃い一夜だなぁ」

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