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銀河舞踏会 ガンマ・ジュリエット  作者: やまなし
第六話 「本日解禁 正式兵装版 : vs. Edmund. Part 2」
26/112

chapter 1

      1


 観月智一博士の朝はいつも楽しい。

 なにを食べようか、と考えながら着替えるのが日課だ。

 うきうき気分で自前のトレー(食堂のトレーの二枚分ある)を手に、食堂に到着。

 朝食はいつもバイキング形式。

 観月がはじめに手にするのは、箸とスプーン。これがなくちゃあはじまらない。

 つぎに向かうのがサラダバー。二十四種類の新鮮野菜がステンレスのボールに入っているから、彼は二十四種類をトングでひとつまみずつ皿に盛る。ドレッシングはかけないのが観月流。

 日替わりスープに、白米を大盛り。

 袋詰めのクラッカを二つ。

 今朝のメインは照り焼きのチキン。その他もろもろタンパク質を皿に盛って、いっぱになったら席に座る。もちろん、カウンタから近い席を選ぶ。なんどもお代わりをするからだ。

 軽快な足取りで定位置に向かう途中、赤い頭を発見した。

 ジュリエットだ。

「おはよ、ジュリエット。珍しいな。きょうは早起きだ」観月は声をかけながら、彼女の正面に相席した。

 ジュリエットはゆっくり顔を上げる。

 だが、どこか焦点があっていないような目で、観月を不思議そうに見る。無言で。

「ジュリエット……」不安になって観月が彼女の顔の前で手を振った。

「あっ、ああ、博士。おはよう」ジュリエットはいま気づいた、というような反応だ。

「おはよう。寝ぼけてた」

「うん……。だから、コーヒーをね」

 コーヒーをね、というよりもコーヒーだけだ。

「そんなんで昼までもつか。低燃費な躰だとしても、少なすぎるだろ」

「博士は多すぎ。ちょっとは痩せないとね。大病の原因」

「もう百万回は言われた」

「小さな子供が二人くらい入ってそうなお腹してさ」

「そうそう。だからダイエットしたくても走れなくて困ってるんだ」と言いながら、もりもり朝食を口に運ぶ。言ってることとやってることが真逆である。同じ口なのに。

「一日だけでもいいからジュリエットと躰を交換してみたいぜ。さぞや足取りが軽いだろうな」

 とうぜんジョークのつもりだったが、ジュリエットには珍しい社交的な苦笑いをみせた。

「使い慣れた自分の躰が一番だよ」

 性的なハラスメントに当たる発言だったろうか。

 ちょっと自重しよう。しかし意味不明な返答である。

 それにしても、今朝のジュリエットは覇気がない。

 無邪気で明るい彼女だが、ときおりしゅんと萎む姿をみせる。もちろん、事情が事情である。同い年の少年少女よりもディープな問題を抱えているのだから、そんな気分もあってとうぜんかもしれない。今朝に限らず、名を呼んでも反応しないことが、彼女にはままある。

「なんだか、心ここにあらずって感じだけど、大丈夫か」

「うまいこと言うなあ、博士は」

「魂が半分抜けかけているような顔してたぞ」

「座布団二枚目だね」

「おっと、だいぶ芸を覚えたようだ」

「つぎに天女様にお会いできるとき、つまらない奴だと帰されないようにね」ジュリエットがコーヒーカップに口をつける。ふっくらとした赤い唇。血色がよく、紅を引いているように魅力的だった。

 思わず見とれた観月だが、一つだけ注意した。

「その話、あまり基地内でしないほうがいいよ。とくに駿河少尉の前では」

「なぜさ」

「君を疑ってるから」

「へえ」目を細めて、ジュリエットが見つめる。「博士は」

「この間、披露できなかったサプライズってのを待っている」

「ありがとう、博士。君のそういうところが好きだよ」一口にコーヒーを飲み干して、ジュリエットは席を立った。「おさきにごちそうさま。また学校でね」

 やっぱりどこか元気がない。

 世界を敵に回して、むしろ元気満々なほうが異常なメンタルではあるが……。

「さて」

 赤い髪の後ろ姿を見送ると、観月は厳かに腰を上げた。

「お代わりだ」

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