chapter 7
7
きょうはきょうとて買い物だった。
観月智一は背中を丸めながら女子の買い物に付き合った。
パーティメンバは次のとおり。
ジュリエットはもちろん、クラスメイトの天宮羽衣、軍部から監視役の猫山曹長と兎田軍曹の、計五人。端から見ると、ちょっと異様なグループだ。
しかも、だ。
猫山曹長と兎田軍曹はビシッと背筋を伸ばして、ジュリエットの両脇を固めるように付き添っている。もちろん周囲を油断なく警戒しながら。ときおり、さっと胸元に手を入れるような仕草を見せて、いやあんたいま拳銃取り出そうとしてたよね――、と観月はツッコミをいれたくなるのをぐっと堪えたりもした。
ジュリエットははしゃぐし、羽衣も振り回されながらもまんざらでもないらしく、いつの間にか幼なじみの親友のようにジュリエットと親しくなっている。
そんなジュリエットらの後ろから、とぼとぼ憂鬱な視線で付いて歩く自分が一番変な奴かな、と観月は思う。
「博士はどう思う。似合う」ジュリエットはにこっと笑って、ポーズを取る。
モール内の洋服売り場だった。
ジュリエットは着替えが欲しい、ということで立ち寄った店で、試着室のカーテンを開けて見せるのだ。羽衣は即興のスタイリストになったようで、ジュリエットをモデルに何着も着せ替えている。
これで何度目だろうか。
なんでもいいような気がする。
「あっ、なんでもいいって言いたげな顔してる、博士」ジュリエットが口を尖らせる。
心でも読まれていたのか、それとも顔に出ていたようだ。
「そんな陰気な顔するなら付いてこなくていーっての」羽衣の言い方はいつも厳しい。「まったく男子ってばねえ」
「兎田軍曹は、どう」ジュリエットの白羽の矢に、もう一人の男子も狙われた。
「顔立ちは派手で髪も明るいからな。あえて服は単色の地味なものを選んで、生地も光沢のない落ち着いた方が似合うんじゃないか」兎田軍曹がさらりとまともなコメントした。
軍曹の意外な返答に、みんな一同に顔を見合わせる。
「軍曹なら、きっと『さっさとしろー』だの『女の買い物は遅すぎる―』だの言うと思ったのに」
「じゃあ聞くな。まあ、こう見えて俺、四人兄妹の末っ子だから。うえは全員姉貴な」
「そう。だから彼、わたしのような、年上の、美女には、弱虫男なの」猫山曹長がしれっと言う。
「年増は間違いないが、美女はどうだか」
そして睨み合い。
漫画でよくある、電撃のような視線が見える気がする。
「いやでも、ジュリ恵、ずっとパンツばっかり選んでるじゃん。あんたなら、そう……、ゆるふわなスカートとかよさどうだけど」羽衣はジュリエットを上から下まで眺めながらつぶやく。
「えへー、スカートって苦手なんだよねぇ。ほら、風が下から入ってくるし」
「女装した男子みたいな感想、パート2」
「まあぼくにしたら、スカートよりズボンで足の長さを魅せた方がきれいでしょう」とジュリエットは自慢げにまたポーズ。
「ちぃ、言い返せない……」羽衣がぐぬぬ、と歯ぎしり。「じゃあつぎはねえ――」
「二人とも、もうそろそろ終わらせてくれないかぁ……」
「だからさきに帰れよ。まだまだ終わらないからね」羽衣が冷たく言い放つ。
「そうするかぁ……」自分もジュリエットの監視を、と観月は疲れた躰に鞭打ったが、あとはプロに任せて帰る方向に意思が傾く。
「博士、疲れちゃったの」
「うん。ここ数日で急激に」
君のせいで、とはさすがに言わなかったが……。
「じゃあ、基地でね」観月が背を向けると、ジュリエットが後ろからこんなことを言い出した。
「このあと、舞踏会のつもりだったけど」
観月が振り返ると、ジュリエットはなんの悪びれもなさそうな顔をしていた。
猫山曹長と兎田軍曹はまだ火花を散らしてる。
事情を知らない羽衣はきょとんとしている。
「今夜、舞踏会ですよ」
二度も言った。
これで悪意があるならまだかわいい。
天然でやってのけるからたちが悪すぎる。
「そういうのは早く言ってくれ……」
「ぶとうか――」
「わかったよ行くよ連れてって」




