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白紙に綴る夢  作者: 緋絽
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僕達らしく、あけましておめでとう


本当は元日に書き終わりたかった。

あけましておめでとうございます。

夕です。



「で。来たのはいいけどさ」

ちらちらと雪が舞い始めた頃に神社に着いた。

時刻はだいたい10時半。

結局、早すぎるよね。という話になって10時前まで、家族が出かけててやりたい放題なうちで過ごした。

長い長い階段を登りきって息を吐くと真っ白だった。

「なんだよ茜もう疲れたのかー」

「これだから。やっぱり若者とは思えませんわ!」

「本音はきっと紅白が見たかったのよ!」

「うるさい。まだやってたの、それ」

朝弥と真実には膝カックンがクリーンヒット。

でも由輝には逃げられた。

なんだそのドヤ顔。腹立つ。

「…。…それで、年越しまで何するの?えーと、1時間半?」

首をコートにちぢこめる。

あー寒い。そういえば僕風邪引いてるんだよ。三人とも覚えて…なさそうだな。

「絵馬!」

朝弥が持ってきた絵馬を掲げた。

「とりあえずこれ飾りに行こーぜ!」

「なんだっけ?無病息災? 朝弥は病気になんてなりそうにないけどなぁー」

「なりますー。去年はインフルエンザで死ぬほど苦しみましたー」

ああ、そんなこともあったね。

中学のころインフルが流行って、みんなばたばたうつってく中で朝弥だけなぜか元気で。

結局うつらずじまい、南沢すげー朝弥すげーってなったと思ったら忘れた頃感染。

クラス全員で呆れたという。

「そういや、今年はクラスでインフル出なかったな」

確かに。由輝の言うとおりだ。

「ここらで大流行すんじゃね?」

「…ちょっと。なんでみんな僕のほう見るのさ」

インフルじゃないとは言い切れないけどさ。熱はないし。

「また朝弥だけなったりしてね」

中学時代の話を真実と由輝にすると、やっぱりあの時と同じ呆れたような哀れむような視線を朝弥は浴びていた。

「それ、絵馬の意味ねーじゃんかぁ!」

「まあまあ。所詮は願掛け、なるかどうかは朝弥の体調管理次第ですから」

「うっせ、由輝。 あ。絵馬ってあそこだな」

人だかりができているほうへ朝弥が走っていった。

僕たちは早いほうだと思ってたけど、結構先客が。

祭ほどじゃないけど屋台とかあるからかな。

「一番上にしようぜ。そのほうがご利益ありそうだ」

あるかないかは知らないけど、一番上は受験生に譲ってあげれば?と言いかけて言わなかった。一番上に秋良さんの絵馬を見つけたからだ。

『生きていれば何とかなる』

はは…。なんて壮大な。

ていうか願い事ですらない。

由輝を小突いて無言でそれを指差すと返ってきたのは苦笑いだけだった。

「あの辺か。よし」

狙いをさだめて朝弥が背伸び。

「…………………あれ?」

もう一度背伸び。

「………………………おお?」

僕の後ろでふたりが必死に笑いを堪えている。

気づけ朝弥。5センチは足りてない。

そして君はこの中で一番背が低いということに。

「由輝が行ったほうがいいって。後ろ混んでるし」

「だな」

真実に言われて由輝が絵馬を奪い取った。

「由輝なにすんだよー」

「現実見てるだけー」

「なんだそれ」

由輝が一番高い列に絵馬を結んだ。

こっそり秋良さんのから離して。

「よしよし」

安心したといった風に真実がうなずく。

「さて次は?どうする?」

朝弥がうるさくなる前に切り出しておいた。その朝弥は自分の書いた絵馬を見上げて唸っている。

「店!」

はい!と手を上げる真実。

「温かいもの欲しい」

それに賛成した僕達は、誰も口に出しては言わなかったけど早く来すぎたことを後悔しながら、だらだらと出店を見て回ることになるのだった。




時間を確認して携帯を閉じた。

「あと10分…あー今10分きった」

神社の石段に邪魔にならないように腰かけて、買ってきた甘酒をちびちび飲む。

流れで買ったけどなんとなく苦手な味かもしれない。

「僕、将来絶対お酒とか無理だと思うな」

居酒屋で飲んでる自分が想像できない。

「なんで甘酒で将来の話に展開できるんだ」

そんな僕とは対照的に朝弥は平気らしい。いるならあげるよ、と紙コップを差し出すとすぐに奪い取った。

「オレは飲めるほうかもな!」

弱そうだけどね。

「でも、まあ。甘酒が飲めてもね。甘酒って酒じゃないし?」

「「え」」

朝弥と声がハモる。

同時に横を向くと、真実が寒むーと言って腕をさすっていた。

「え?」

僕達ふたりの視線とおかしな声に気づいて真実が振り向く。

「…もしかして、知らなかった?」

うん、とこれまた同時に頷く。

由輝が呆れたように息をつきながら空になった紙コップをいじっていた。

「あのなぁー。これがほんとの酒だったら俺達は飲めないだろ?お酒は二十歳から、だぜ?」

「僕はこれが初だし。姉さんが不味い不味い言ってたからなんとなく避けてた」

「年末年始だから二十歳からルールがなくなるんじゃねーの!?」

二十歳からルールってなんだろう…。

どうやら朝弥は根本的なところで勘違いしていたらしい。

無礼講だー子供も飲めー……みたいな。

「朝弥は大人になっても飲まないほうがいいかもなー」

「なんだよ由輝!オレはいけるぞ!」

「いや、なんか、逆に酒に飲まれそう。茜も弱そうだな」

「そういう由輝は余裕そうだね。真実も」

「俺んちは付き合いで飲まないといけない感じになるからなぁ」

「そっか、格式ある花・屋だっけ」

「おい朝弥。なぜに強調した?」

「ぎゃー真実が怒ったー」

「棒読み過ぎるだろ!おまっ、お前!バカにしてるな!してるだろ!」

「まあまあ、落ち着けよ。ハゲるぞ」

「ハゲるよ」

「お前らも怖えーよ!今から毛根死滅…」


ゴオォォォーン


真実の言葉を遮るように大きな音が響き渡った。

お腹の底がびりびりするような音。それと歓声、拍手も。

「あけましておめでとー!」近くを通ったカップルが言っているのを聞いた。

慌てて携帯を開くとちょうど0:01に変わるところだった。

お互い顔を見合わせたあと朝弥が叫んだ。

「あ゛ー!!カウントもなんにもしなかった!!」

「俺なんか去年最後に発した言葉が毛根死滅だぞ!!」

あーあ、やらかしちゃった。

それを抱負にすればいいとかいって真実を怒りを買っている由輝や、それがツボに入って笑い転げている朝弥を見て思う。

これが僕達らしいといえば、僕達らしいよね。

まあ、何はともあれ。


今年もこんな感じでよろしくお願いします。





リレー小説隊を今年もよろしくお願いします。

次は秋雨さん、どうぞ。

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