後夜祭はじまる
夕です。
現実でも文化祭の季節です。
閉会式が終わり、校庭ではちゃくちゃくと次のイベントの準備が進んでいた。
宝岳祭をしめる後夜祭だ。
「はあー」
疲れた。
教室に戻ってきた僕は、ぼんやりと少し暗くなってきた外を眺める。
校庭のど真ん中には木が高く組んである。
所謂、あれだ。キャンプファイアみたいな。
「あ、真実」
下を全速力で走っていく真実を発見。
運動部の人は準備に駆り出されるらしい。
てことは由輝もか。
お疲れ様です。
今教室にいるのは僕だけ。
運動部以外の人もクラスにはもちろんいるけど、みんな手伝いに行ったみたい。
「いたいた、西川」
後ろから声が聞こえて振り返る。
「吉野さん」
タオルを頭からかぶった姿で吉野さんが立っていた。
「南沢がカメラもって走り回ってるのに、西川がいないのってめずらしいなーって、捜してたの」
「いつも一緒にいるわけじゃないって」
吉野さんはタオルを首にかけながら僕のほうへやってきた。
今まで外にいたのか、暑さで顔が赤い。
「でも幼馴染みなんでしょ?咲が言ってた」
「んーまあ、そうだね。家近いし、幼稚園から一緒だった」
「へえ」
並んだ格好で慌ただしい様子の校庭を見下ろす。
風はまだ熱をもっていた。
「………宝岳祭、終わったね」
何気なく言うと吉野さんは外を見たまま頷いた。
ふんわりと笑う。
「3日間なんてすぐよね。もうちょっと、うーん…月から金で1週間ぐらいやっててもいいかも」
「それ賛成。どういう日程で?」
「4日体育祭で1日文化祭」
横目で僕を見ながら言う。
僕が運動嫌いなの知って言ってるな、この人。
「借り物競走は結構がんばったけどな」
狙ったかのように僕にとって一番辛い借り物が当たったけど…。
途中で観客席に姉さんを見つけた時は死にたくなったけど。
それでも2位にはなれたし。
「………で、吉野さんは何してるわけ?」
「え!?」
またまたタオルを頭からかぶっていた。
「……………西川が、美、女…とか…。……思い出した」
タオルの下から、もごもごとそんな声が聞こえた。
またそのこと?
と言いかけて、はっと気がつく。
ちょっと待てよ?あの時はとにかく早く借り物を見つけないとと思ってたし、それで急いでたから、いいとこにいた吉野さんをとっさにつれていったけど。
よくよく考えると結構恥ずかしいことしてたような…。
あの時近くに吉野さんの友達もいたのを思い出す。
「あ、ああああれは…!うん、あれは!」
なんか急に恥ずかしくなってきたぞ!?
今に限って、いつも冷静な吉野さんがこんなだし!
「……でも」
吉野さんがタオルの下で口を開いた。
その時。
「―――それでは!宝岳祭最後の後夜祭を開催したいと思います!!」
いきなりの大音量でスピーカーから司会の声が流れた。
教室のも電源が入っていたらしい。
次いで軽快な音楽も流れ出す。
「……びっくりしたぁー」
本当に驚いたといった表情で茫然としている吉野さん。驚いた拍子にあのタオルは落ちてしまっていた。
そしてその驚いた自分が可笑しかったのか、後夜祭が始まった校庭を見ながら、吹っ切れたと言ったかんじで笑い出した。
なにがそんなに可笑しかったのか知らないけど、涙目になりながらお腹を抱えている吉野さんに、僕も恥ずかしかったことなんてどうでもよくなった。
「で、後夜祭どうする?」
「なんか面倒くさくなってきたわ」
「じゃあ、ここで見てよっか」
「…そうね」
あの時吉野さんがなんて言おうとしていたのかはわからなかったけど、聞いてみようとは思わなかった。
踊らない組。
次は秋雨さん。




