最終日、突入
こんにちは、プー太です。
夏休みなうってやつですが、今年はなまけません!
そういうわけで今回も頑張ります。
とうとうこの日がやってきた。
宝岳祭最終日―――体育祭が。
3日の中で一番の盛り上がりをみせる迷惑きわまりない行事である。
天気に恵まれすぎてかんかん照りのなか入場行進から魔の1日は幕を開けた。
「あちー」
濡らしたタオルを顔にかぶせ、ぼやく。
「暑いのはみんな一緒なんだよ。そこ、わかって言ってる。ん?」
「はは、そうだよね。みんな暑いよね」
俺たちの出る借り物競走は午後。それまではクラスの応援という名目でテントの陰に居座る。
午前中はリレー競技が大半をしめているため、俺たちの出番は皆無。
持参したうちわや扇子で涼みつつ、帰ってきたクラスメイトも扇ぎ、邪魔な存在にならないような程度にだらけていた。
「やっぱり陸部とサッカーは速いな。ま、勝ったけど」
「野球も負けませんっていいたいんだろ」
「あったり前でーす」
隣で冗談で笑いあっている真実を盗み見る。
笑っていてもその目線の先には中元がいる。
恐らく茜や朝弥は気付きはしないだろう一瞬の目の揺れ。
なにもできない自分が悔しい。どうしようもなくいたたまれなくなり、気付けば立ち上がっていた。
「トイレ?」
「……そう、トイレ。一緒にいく?」
「オレ行くー!そんで水も飲む」
「僕はパス。その間うちわはもっておいてあげる」
「オレのもたのんだ。じゃあいってきまーす」
「いってらっしゃーい」
真実と茜に見送られ、なるべく日陰を選んで校舎内のトイレへ向かう。
うわあ、別に出したくなかったんだけど。
朝弥もいるし、行かないというわけにも。
一人で考えていると横から視線が突き刺さっていることに気付いた。
「由輝さ、さっきからソワソワしてっけど腹がいたいのか?ならオレ、別のとこ行くけど」
「ちがう!変なとこで気を使うなばか朝弥。同じトイレで大丈夫だ」
「なんでばかって言われねえといけないんだよー」
悪気はなかった、気付かずに着いてきてごめんと語るくりくりした2つの目が俺を見て、眉はハの字になっていた。
変なとこで誤解された。言いようのない羞恥心に顔が熱を持つ。
さっさと用を達して冷水機で喉の渇きを潤してテントへともどる。
比較的涼しい校舎から一歩出るとうだるような暑さにめまいがする。
「いまなら液体に融けれそうな気がする」
「そんなことないよ。脱水にはなるだろうけど」
「中元か。驚いた……って、砂だらけじゃん。こけた?」
独り言のつもりで呟いた言葉に返事がくる。振り向くと、体操服を茶色く染めた中元がいた。
「退場のときに緊張が抜けてうっかり。いま、初流ちゃんたちが絆創膏もらいに行ってくれてるの」
「うわ痛っ。ひりひり痛むパターンのやつだ、それ」
擦り剝けて出血しているのは両手の手のひらと、膝小僧。どちらも酷いけがではないが、今の時代、このまま放置するのはよろしくないだろう。
「そうなの。ズキズキはしないかな。じゃあ傷口を洗わないといけないから、もう行くね。みんなも怪我しないように気をつけてね」
それにしても、パターンってなんだ。痛みに種類はあったとしても、パターンって。
片足をひょこひょこさせながら中元は近くの水道へと歩いて行った。
「由輝おいてくぞー」
先を歩く朝弥に促されようやくテントに戻る。
「おかえり。さっき中元と話してたけど、大丈夫そうだった?」
「一応は。心配なら声かけに行けばよかったのに」
「……。タイミングを逃したから行きにくかったの」
真実は開口一発目から中元というワード。
茜に「の、なんて言っても可愛くないよ。それにほっぺ膨らましてもダメなものはダメ」と指摘を受けて、ちゃらけて見せるが心配していることは簡単に見て取れた。
「茜がいじめる、助けてー」
「僕はいじめてなんかないよ。一般的な意見を述べているだけです」
元の場所に座りこむと、真実に抱きつかれた。
「いじめてるよな、これ」
「さあ?男が女言葉使うのはあまりねえ。日常からそうならまだしも」
「由輝も茜と同じだとは思わなかった!離婚!」
「いや、結婚してないし。暑さでやられた?」
泣き真似をしながら俺は突き飛ばされた。朝弥が腹を抱えてゲラゲラ笑う。
「由輝なんて、由輝なんて……!」
「真実、キモい」
いつも通りに振るまえていただろうか。
騒ぐ3人にその不安を悟られないように思考を巡らせた。
こんなかんじでいいかな。
久しぶりにみんなの絡んでいる姿を書いた!なんかちょっと楽しかったです。
お次は緋絽さん。
よろしくお願いします。