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白紙に綴る夢  作者: 緋絽
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素直に一言

こんにちは、夕です。


文化祭の時期が懐かしいですね。




開き直った真実は強かった。

というか、なんか怖かった。

「優勝おめでとう」

「さんきゅ」

…………。

からかうつもりで功績を讃えたら、あっさり感謝された。

「真実!さっきのなんなんだ!」

「さっきのって?」

相変わらずうるさい朝弥とご機嫌らしい真実。

「コンテスト。どんなひどいかっこで出てくるか楽しみにしてたのに!由輝より女だったぞ」

「俺は女じゃないけどね?」

そして絶妙なタイミングで突っ込む由輝。

「それにあの着物どっから持ってきた」

「あーあれは…」

そんないつもの顔触れで体育館を出た。

昨日は各々、まぁ…なんか…いろあろあって別行動だったから、今日は4人でまわるか、ということになっていた。

―――と、言っても。

「この後どうする?」

僕は特に見たいステージもない。でも2日目の今日は、昨日のような模擬店もないのだ。

「俺は真実の女装でお腹いっぱい」

由輝が頭の後ろで手を組ながら言った。

「でもまだ結構時間あるよなー」

朝弥は体育館の壁に寄りかかって間抜けな顔であくびをする。

つられてあくびしそうになり口をおさえる。

「あ、いたいた!」

その時体育館の中から女子生徒がひとり顔だけのぞかせた。一番扉の近くにいた僕はおもわず飛び退く。

「吉野さんが捜してた。ダンス部のステージが終わったら映研部の映画上映だから4人で見にこいって」

…吉野さんが?

「じゃ、伝えたからね」

その女子生徒は急いでいたのか慌てて体育館の中へ戻っていった。

「そっか、吉野って映研だったっけ」

そう言って体育館を覗き込む由輝。

「あ、今ダンス部のステージやってるぞ?」

言われてみれば、さっきから中で軽快な音楽が流れていたような。

ダンス部の次ということはもう始まるのか。

「じゃ、行こうぜー」

秋弥に引っ張られて暗幕の中へ駆け込んだ。

1回外に出たせいでさっき座っていた席はなくなっていた。

というか、ほぼ満席になっていた。

「ダンス部の皆さん、ありがとうございましたー!」

音楽がやんで、ステージが暗くなる。

あ、もう始まっちゃう。

「立ち見でいいじゃん。今から動き回ったら迷惑だし、吉野さんは映研部であって演劇部じゃないからスクリーンだよ、きっと」




そんなわけで立ち見になったんだけど。

「朝弥、よく思い付いた!」

「おうよ!」

隣の問題児の提案でほんとは立ち入り禁止の二階から見ることになった。

暗いから先生には見つからないだろう。

たまにはこういうのも………いいのか?

「―――次は午前中最後のステージです」

ステージの幕がゆっくり上がっていく。

「映研部の皆さんよろしくお願いします」

スクリーンが現れると大きな拍手が起こった。

なんか依頼を思い出すなぁ。

…―――3、2、1…

お決まりのカウントの後、いきなりスクリーンに大きく吉野さんが映し出された。

瞬間、思わず息を止める。

いつもの吉野さんと雰囲気がまるで違った。

どこかの国の町娘の役らしい。目を閉じ祈りを捧げているようだった。

オリジナルなのか、知らない物語だったけど、吉野さんの完璧な演技は観る者を物語の中へ引き込む。

高坂部長やなつかしい部員の面々も、僕らから見たら、堂々としていて、上手い。

でも吉野さんはその中でも群を抜いていた。

凛とした表情の吉野さんを素直に、綺麗だ、と思った。

「吉野すげーな」

隣で呟いた朝弥に無言で頷いた。

「――この歴史を語り継ぐために…」

吉野さんが最後の台詞を言い終わると、会場は拍手に包まれる。

“すごい”の一言だった。







午前の部が終わって生徒が退場を始める。

それは片付けに時間がかからない映研部も同じで、僕達を見つけると吉野さんは駆けてきた。

「なんで、そんなとこにいるの」

先生に見つかっても知らないからね、と呆れたように笑うと体育館を出ていった。

が、すぐに戻ってきた。

こっちを見上げて小首をかしげる。

「私の演技どうだった?」

「どうって言われても……」

それよりなんで僕に聞いてるの。

視線を感じて3人のほうを見ると、そろって目を背けられた。

「あー…うん…」

「なに?」

「…うん」

うん、と決心して吉野さんに笑いかける。

「綺麗だったよ」

吉野さんは自信満々といった顔でピースしてまた体育館を駆け出ていった。




お疲れ様でした。いうほど長くないですけど。

他のメンバーの皆さんの執筆技術を尊敬します。


次は秋雨さんです。

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