嘘
緋絽です!
行ってしまった由輝と茜を見て、ちょっと焦る。
こ、これは。いきなり中元と2人っきりじゃないですか。
チラッと中元を見ると、向こうも緊張してるようだった。
まぁ…。緊張してるのは俺だけじゃないのが救いだな。
笑って中元の所へ行く。
「なーかっもとっ」
「東山君」
笑いかける。お互い緊張してるならここはやっぱり男がリードしなきゃならんでしょう!
「どこ行きたい?」
「私は…なんかお菓子食べられるところかなぁ」
お菓子ときたか!
「あっ、やだ!なんか食い意地はってるみたい!」
赤くなった中元が顔を覆う。
思わず笑って中元の顔を覆っている手を掴んで降ろさせた。
初っ端から可愛い。今日は俺、どうかなったに違いない。
「いーよ。俺も菓子好きだし。行こう」
そのまま手を引っ張って歩き出す。
掴まれたままだった手が一回だけ握り返してきた。
う、わ。
顔が熱くなる。
やっぱ、もう誤魔化しきかねぇかなぁ。
───中元が、好きとか。
あんまり、自覚しないようにしてたのになぁ。
でも、もう───。
中元を振り返る。
「中元」
「ん?」
慌てて顔を上げた中元を見てまた笑う。
好きなだけなら、いっか。
「俺さ、あんまり好きな人とか作らないようにしてたんだけど」
「え?」
あのばあちゃんなら、なんか色々首突っ込んできそうだし。
でも、中元なら。
「もーいいかなって」
中元を見て笑う。
途端に中元が首まで赤くなった。
下から中元を覗き込む。
中元が俺の行動に仰け反った。
思わず笑う。
可愛いなー。
「ほら着いた。吉野の店だ」
吉野の名前に中元が顔を慌てて普段のように戻した。若干赤いけど。
中に入るとおしゃれに飾られた室内が見えた。
「いらっしゃいませー」
「海賊さんとその彼女さん入りまーす」
ふざけた言い方に吹き出しそうになりながら席につく。
彼女という言葉にまた顔を赤くしている中元を前に座らせた。
メニューを見るとクッキーとか生チョコとか書いてある。
「中元どれにする?」
「えっと、……ケーキ、頼もうかな」
「じゃあ俺はー。お、ブリオッシュだって!これ、悪ノ王子の時に出たやつだよな?俺これにする」
「お茶は…」
悩んでいる中元がこれ面白い!と笑った。
「どれ?」
「ピエロだって」
「ピエロ?」
「紅茶の名前!」
「へぇ」
ピエロか。面白そう。
「じゃこれにすっか。2人共これでいいよな?」
尋ねると中元が頷いた。
注文して少し経つと品が届いた。
「わっ、いい香り」
「ホントだ。うまそう」
一口飲んでみると香りが広がる。
味はないけど。
砂糖を2個ぶっこんでまた飲む。
「いいかもー。これ、今度お茶屋行って買おう」
「俺も買おっかなー。お客様に出したら喜ばれるかも」
「お客様?」
あ、しくじった。
「あー、俺ん家ねぇ」
そこまで言ってふと知った声が聞こえた気がして顔を上げる。
「だから!そんなにくっつかないでってば!」
「何よ、いいじゃない。西川を楽しませるためでしょー?」
「僕はもうじゅーっぶん楽しんでるからっ!」
「嘘嘘、怒ってるー」
こ、これは…。
中元と顔を見合わせて苦笑する。
茜と吉野さんだな。
「邪魔しちゃ悪いな。次行くか」
「そうだね」
お金は払ってるので後は出るだけだ。
「行くか!」
色々回るとさすがに疲れて、少し休憩をとることになった。
階段に座ってドリンクを渡す。
「宝岳祭って規模大きいねー」
「確かになぁ。明日はステージだな」
「初流ちゃんの独壇場だろうね」
「だろーなぁ。あ、確か明日小森ちゃんのステージがあるんだよな?見に行こーっと」
そこで不意に言葉が切れる。
疑問に思って中元を見た。
「中元?」
「あ、あのさっ」
「え?」
「さっきの、どっ、どういう意味か、聞いてもいい?」
「さっきの?」
首を傾げる。
「す、好きな人が、どうとか。もーいい、とか」
「あぁ」
もしかして。あれって、相手見て言ったら、告白みたいに聞こえるのか!?
途端に顔が熱くなった。
とんでもないことを、していた。
焦ったおかげで今度は逆に頭が冴えてきた。
好きだ。多分、今まで会った人より好きになる気がする。
だからこそ。一回本気になったら、俺はそこに突っ込んでいくだろう。
そして、中元が応えてくれたら───。
俺は、もう手放さなくなる。
だから、本気になるわけにはいかなくて。
「好きな人が、できたんだ」
中元の顔が泣きそうに歪んだように見えたのは、気のせいだろうか。
中元から顔を背ける。
「………だから」
背中が強張った。
「時々、相談に乗ってほしい」
中元から返事はなかった。
無言のまま、階段を降りていった。
少しして膝に顔を埋める。
「あーぁ…」
仕方ないんだ。いつか、別れるよりはマシだ。
当主様がいる限り、好きな人を認められるわけがない。
まぁ、中元が応えてくれるかもあるし。
そこまで考えて無理矢理顔を上げた。
中元の気持ちがどうかなんて、さっきの質問を思い返してわかってたけれど。
今回は暗い…。
突然話が進んだのでめまぐるしいです。
すみませーん!