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白紙に綴る夢  作者: 緋絽
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思春期だもの

下書きなしで書いてupしようとした直前で2回もデータを飛ばしてしまったプー太です。

やけくそになって書きました。

俺は見てしまった。―――朝弥が何食わぬ顔で小森を抱き寄せている姿を(ただ写真を撮っただけ)。

小森も満更ではないようで顔を赤くしながらも笑っていた。

あの二人は顔を合わすたびに(当人たちは無自覚だが)バカップル顔負けのイチャつきを見せている。

だが、あんな大胆な行動をしているのは自分に親しい間柄の人物ということもあって抵抗がある。

ましてや今日、というのが俺にとって悪かった。


事の発端は真実の一言。

『俺てっきり由輝は平方が好きなのかと』というこれだ。

俺が、平方を、好き……だと?

そ、そんなわけない。

だいたい平方は俺のストーカーで。一緒にいるときあいつはいつも怒ってばかりで。でもあいつといるのは嫌じゃなくて。寧ろ安心できて、不本意だけど本音を漏らしてしまうこともあるけど。

―――って、これって平方が特別な存在みたいに感じれるのはアレか!?

いやいや、別の視点から考えよう。うん、それがいい。

曲がり角でぶつかってきた時のことから考えることにする。

平方は決まって鼻をぶつけるようで、小さな形のいい鼻を赤くして、痛さのあまり涙を浮かべて睨んでくる。身長差があるせいで睨みは上目遣い。これは欲目なしに可愛いといえるだろう。

その次は一方的にいちゃもんをつける。もちろん謝罪はない。謝罪云々はさておき、改めて考えれば若干上擦った声も可愛いと感じる。

それから横を通り過ぎた後に鼻を押さえて急ぎ足で去っていく。意地でも俺に弱いところを見せまいと意地になっているところも、文句なしに可愛い。

―――おいおい。どれも結論は可愛いに辿りつくってことは、やっぱり俺って……。

いや待て。結論付けるのはまだ早い。ほかのことから考えろ。

そもそもぶつかられること自体どうなんだ。

ぶつかられることはいやなわけではない。

曲がり角に差しかかるたびにどこか期待している自分もいたりするわけで。

やはり、こういうのを、好き、というのでしょうか。

俺って知らないうちに好きになってたのか。

いままで全然考えたこともなかったのに急に自覚をするとテンパってしまう。

必然的に周りの目と、周りのカップルに意識がいってしまうようになった。


そんなこんなで今に至る。

好き、という感情を自覚してすぐにああいうのを目にするのは刺激が強すぎる。

動揺しているを感づかれる前に廊下に逃げだした。

しかし、今日は宝岳祭。つまり祭りだ。祭りに色恋沙汰は切っても切り離せないものなわけで。

あちこちにカップルの姿があり、意識したくなくても目がそれを追ってしまう。

これなら教室の方が安全だと判断して教室の隅に身を潜めた。

「なにしてんだ?」

「いえ、これっぽっちもやましいことなんてありません」

不意に真実に肩を叩かれ、冷や汗が吹き出した。

「指名されてるぞ」

「わかった」

客の前でだらしない顔は見せられない。きゅっと引き締めて持ち場に戻った。


それから喫茶店は大繁盛。猫の手も借りたいという言葉の意味を身をもって理解した。

やっとのことで午前の部が終了し、交代の時間になった。

「疲れた」

俺と真実、茜の情けない声が重なる。

「わりい。もうすぐ飛鳥のファッションショーが始まるからオレだけ別行動していいか?」

一緒に行くと答えようとする茜の気配を察知して、すかさず割りこむ。

「しっかり見てこい」

「おう!」

茜が眉を顰めてこちらを一瞥する。

苦笑いしながら目をそらすと教室の扉の所で不安げにこちらの様子を窺っている中元をみつけた。

どうやら上手く誘えたようだ。

ここで別行動にしてやなないと中元がかわいそうだ。

それに俺が行動しないと真実は自分からは切り出し難いだろう。

「あとでなにか奢るから俺と回ろうな、茜」

真実の肩を押して中元のほうに追いやる。

「……そういうことね。それならそうと言ってくれたらよかったのに」

仲間外れにされた感じがして嫌だとぼやく茜にたこ焼きを奢ることで事を収めた。

「次どこ行く?お化け屋敷とか?」

ふと曲がり角に差し掛かる。

そんなわけないと思いつつ足を一歩踏み出すと胸に衝撃が走る。こけそうになる女子の腕をとっさに掴んだ。

「ごめんなさい、けがはない?」

「あ、吉野さん」

「西川じゃない」

あらら、平方は?

「初流ちゃんにぶつかったんだから謝りなさいよ……って、あんた!」

キョトンとしながら吉野を見つめる。平方ではないということを理解すると手を離し、にっこりしながら謝罪を述べた。

「咲、ぶつかったのはこっちなんだから謝るのは私。そうそう北村くん。西川貸してほしいんだけどいい?」

探す手間が省けてよかったと呟くと吉野は不敵に笑うと、ずいっと顔を近づけると耳打ちをしてきた。

「代わりといったら悪いけど咲あげるから。ね、いいでしょう」

返事をする前に茜の腕をひっつかむ。発言に呆気に取られる。

「じゃあね。西川行きましょ」

「え、ちょっと……」

おいおい、なんで吉野が知ってんの?っていうか、急に二人っきりにしないでくれよ。心の準備ができてないんですけどー。

「……よかったらご一緒しませんか」

「一人で食べ歩くのはイタいものね。仕方ないわ、付き合ってあげる」

こじつけたのはいいが、これからどうしよう。

前を歩く平方を見失わないようについていくが人ごみの多いこと。

痺れを切らして平方の手を取る。

「迷子防止」

「あんたね、せめて一言くらいかけてからしてよ。痴漢かと思ったじゃない」

痴漢、ねえ。乾いた笑みを浮かべる。ショックを受けて凹む反面、振り払われないことに安堵した。

俺がお前を好きだってこと気付いたりしないんだろうな、きっと。

「平方」

「なによ」

「……やっぱいいや」

訝しげにこちらを見る。鼻を赤くしていないのも可愛い。コイツが何をしてても可愛いと思ってしまうだろう自分は変態なのか。まあ変態でいいか。

「どっか行きたいとこあんの?」

「とりあえず珍しい食べ物を制覇していくわ!」

吉野が俺に『貸す』と言った理由がわかった気がした。

―――その後平方に付き合わされたのは普通の見た目をしていないナンセンスなものばかりだった。


長文(由輝の長考モードも含め)を書ききった達成感って気持ちいい。


次は緋絽さん、お願いします。

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