姉さんなんて…
夕です!
「鎌田教授ー‼ここですよー‼」
姉さんに呼ばれて女の人がこっちに歩いてきた。
ショートカットでなんというか…きれいな人。
「呼んだかしら?あら、その子達は?西川さんの知り合い?」
「これは私の弟で、あとは弟の友達です」
これって僕、物じゃないんだけど。
「で、教授に用があるようなので…でしょ?茜」
「…そうだよ」
真実をちらっと見る。
それだけでわかったらしい、真実が例の書類を出した。
「鎌田 梨沙さんですよね?カマさ…じゃなくて鎌田先生から預かりました」
「何かしら」
鎌田教授は、というかカマさんの奥さんは封筒から書類を出してぱらぱらっと目を通した。
「あの人…カマさんの奥さんに見えるか?」
朝弥が小声になる。
「「「見えません」」」
「だよなー。カマさんが結婚してるのにも、びっくりなんだけど」
4人でこそこそ話していると、姉さんが顔をのぞかせた。
「何の話?」
うんざりした顔になると、姉さんに肩をつかまれた。
「…姉さん、肩変な音が」
「えー?」
笑顔の姉さん。
真実と由輝がひいてるじゃん。
「…あなたたち、あの人に気に入られてるのね」
書類に目を通し終えた鎌田教授がぽつりと言った。
書類の裏に何か書き留めると、その封筒をまた真実に渡した。
「え、これ…」
「あの人に渡しといてくれる?」
「でも」
「いいから。あまりふざけたことをしないようにって伝えといて」
それだけ言うと教授は行ってしまった。
「これをカマさんに渡せと…なんで?」
由輝が真実から封筒を受け取る。
「中見ればいいじゃん」
朝弥がかるーく言うと、真実がべしっと叩いた。
「見んなよ!?カマさんはともかく、教授さんはぜぇっったい怖いし。あの人怒るとぜぇっったい怖い」
「うん、そんな気がする。…そろそろ帰ろうよ、ね?」
さっきから肩がメシメシいってるような。
「茜、もう帰るの?」
「帰る。帰らせて」
「それなら途中でアイス買っといてくれない?箱ごと」
あぁ…さっきと帰ってればよかった。
姉さんがただで帰してくれるとは思ってなかったけど。
「私のだからね。名前書いて冷蔵庫入れといて」
僕が拒否する前に姉さんは「次の授業行ってくるわ」とか言っていなくなった。
「茜…わかるよ、その気持ち」
同じく上の兄弟をもう由輝になぐさめられる。
「すいません、途中でコンビニ寄ってください…」
次は秋雨さん!