お泊まり会
夕です!
「なんか、こういうのっていいよね」
借りた布団を由輝の部屋に並べる。
「オレ窓際がいい‼」
「朝弥は壁に穴開けるだろー、俺だよ‼」
「オレ、そんなに暴れねーし‼」
「まぁまぁ、落ちつけよ」
朝弥と真実が場所の取り合いでケンカしだして、それを由輝が宥める。
結局壁際は朝弥が勝ち取った。
「うっわぁ…朝弥の隣かぁ。蹴らないでよ?」
僕はその隣。
蹴られるどころか夜中僕の上で寝てたりするんじゃないだろうか。
「で、どうする?まだ勉強するよね?」
「俺はさんせー」
由輝と僕はいいけど、あの2人がねぇ。
“勉強”っていう単語を聞いたとたん、寝たフリをする朝弥と遠い目になる真実。
数学の教科書で朝弥をべしっと叩き起こす。
「……オレ、寝てるし」
「寝てる人はしゃべらないよね」
「寝言…」
「寝言ねぇ。うん、寝て言おうか」
もう一度べしっ。
「そこのお2人ー、遊んでないでやるぞー」
あ、真実が由輝につかまってる。
転がったまま数学のワークブックを広げる。
「うぅ……俺には暗号にしか見えない…」
「オレには暗号にすら見えない…」
勉強?を始めて30分。時刻は午後10:30。
「そういえば秋良さんて、どこの大学行くの?」
ごろごろ転がりながら真実が言った。
あれだけ場所取りしてたのにもう布団はぐしゃぐしゃで、どれが誰のかわからなくなってる。
「にーちゃん?紫祈って言ってたけど」
「紫祈いぃぃぃい!?由輝今なんて?」
「紫祈大学って言ってた」
真実が驚くのも無理ない。
なんたって紫祈大学は“超”がつく有名大学だ。
「しき?どこだそれ、この近所か?」
「朝弥知らないのか!?」
「おぉ…」
朝弥が真実の迫力に押されぎみ。
「ここからはだいぶ離れてるよ。秋良さんこの家出るんだ」
「次の春からな」
「えーオレやだなー。秋良さんおもしれーから」
まくらを抱えて不貞腐れる朝弥。
「朝弥も紫祈に入ればいいじゃん。そしたら会えるよ」
「場所も知らねーのに入れるかっ」
「入れるよ。今からでも勉強すれば僕が教えてあげるから」
「そんなとこ入学したら毎日勉強ばっかりだろ。はぁ、秋良さんすげぇな」
僕らにしたら紫祈なんて夢のまた夢だもんなぁ。
「とりあえず、再開しよっか。ほら次は世界史‼」
「「うえーい…」」
「朝弥と真実がシンクロしたっ」
あんまり上を見過ぎてもよくないはず。
今は自分のできることをやってればいいよね。
「茜ー、ここはー…?」
「僕に聞かないで、由輝に聞けば?」
「えぇ!?」
初めての勉強会。部屋の明かりが消えたのは午前0時ちょうどだった。
次は秋雨さん!