要領がいい…天才?
緋絽です!
俺は自分の歴史上最も難しい(見たことのない)問題に直面していた。
『次の値を求めよ。
(1) (-64)3分の2乗= 』
こ…っ、公式が…、公式があったはず…‼思い出せ、俺‼海馬よ働け‼まだ若いはずの俺の脳よ‼
由輝と茜を見るとすらすらと解いていっている。
朝弥は途中で止まっていた。
3分の2ってなんだ?なんで指数なのに分数なんだ?何乗すればいいんだよ‼
授業ちゃんと聞いてるのに何故わからない!?
「真実、なんで解いてないの」
茜が不思議そうに聞いてきた。
「逆になんで解けるの‼」
「いや、公式あるじゃん」
由輝が少し汗を浮かべて言う。
「公式使っても解けねぇよ?」
朝弥がシャーペンを指で弄びながら口の中でアメを転がす。
公式も思い出せません。何故。
「これちょっと発展問題だからな~」
由輝が教科書をめくってあれこれと教えてくれた。
でも…
「わからねぇ…」
頭を抱える俺の頭を由輝が叩いた。
「なんでだよ‼もう3回も説明したろ‼」
「なんでここがこうなんの?」
「だから~‼」
「はい、休憩‼」
俺と由輝の間にクッキーが差し込まれる。反射的に食いついた。
「糖分しっかりとらないと。わかるものもわからなくなるよ?」
「秋良さん…」
「にーちゃん」
「はい由輝の分」
秋良さんが由輝にクッキーを渡してこっそりウインクをしてくる。
由輝が不服そうにそれを受け取ってかじった。
ありがとう秋良さん‼
「ありがとうございまーす」
「すみません」
朝弥と茜にクッキーを渡し終えた後、秋良さんが後ろから問題を覗き込んできた。
「あー指数の計算かー。真実達、面倒なところやってるね」
俺は項垂れる。
「はい…」
「にーちゃん、わかる?だったら真実に教えてあげられない?」
んー?と秋良さんが問題に目を向けたまま声を出した。
「いいけど。どうする?真実」
その手があったか‼
「秋良さん‼お願い‼」
――数分後。
「…てことは…(-64)3分の2乗=(-2の6乗)3分の2乗=[(-2の6乗)2乗]3分の1乗=(2の12乗)3分の1乗=2の4乗、イコールで16?」
窺うように秋良さんに目をやる。
パチパチと秋良さんが拍手をした。
「そう‼よくできました‼」
「すげー」
朝弥が目をパチクリさせる。
「わかりやすかった」
茜が感嘆の声をもらした。
「ありがとう秋良さん‼」
「いえいえ可愛い真実のためなら‼」
「………ありがとう‼」
「今の間きっついよ真実ー」
ズココッとストローで飲み物を飲みきった朝弥が口を開いた。
「秋良さんて今、何年ですか?」
「え?3年~」
「まじすか!?受験まっしぐらじゃないですか‼」
「ところがどっこい‼もう終わってるんだな俺‼」
「え?」
由輝以外が変な声を出した。
「推薦で一足お先に合格で~す」
…そうだった。
秋良さんはそういう人だった…。
次は夕さん!