任務完了!
緋絽です!
―――撮影が終わり茜が眼鏡をかけた後、編集係が即行で持って行った。
「うっっっし終わったぁー」
由輝が伸びをする。
「じゃあ俺着替えてくるから」
「ちょっと待って」
「え?」
ニヤリと笑う。
「皆の衆集合‼」
「何ー?」
「どうしたの」
朝弥と茜が寄ってくる。
顔を寄せ合わせた。
「我らにはまだ1つ、重要な任務が残されているな?」
「重要な任務って?」
由輝がのんびりした声で聞いてくる。
「お前だけは忘れちゃ駄目だろ」
ジト目で由輝を見ると半分顔を引き攣らせた。
「え?」
「あぁ‼」
茜が声を出した。
「あれね‼」
「そう、あ・れ‼」
ウインクしてみせてから高坂部長のほうに体を向ける。
「部長ー上映っていつですかー?お願いがあるんですけどー」
当日。
控え室の隅がどんより曇っている。
「由輝…いい加減にしろよ…」
「お前はいいよな‼男だから‼俺女装だぞ‼」
角のほうでしゃがみこんでいる由輝が涙目で俺を睨みあげた。
「俺髪赤いんだぞ」
「俺は青いよ‼」
「…ま、まぁ」
「行くよー真実、由輝」
茜が入ってきて言った。
朝弥がしきりに髪を気にしている。
上映は全校生徒の前で行われる。
その後出演者全員から挨拶があった。
『3・2・1…』
音楽が流れ始めパッと組んである足が映った。どんどん上にあがっていって俺の顔が映った。
生徒が一瞬固まる。
『さぁ、跪け!』
セリフが一言あってからテロップが流れる。“昔々、あるところに――”とナレーションが入る。
それから白の王女――中元が出ると歓声があがり、黄色の国が焼き払われ王子――朝弥が死ぬと沈黙し、青の女剣士――由輝が出るとざわついた。誰だ‼と声があがる。
隣を見ると由輝は蒼褪めていた。
「ほらしっかり。あとちょっとだから」
それにしてもすごい。クオリティの高さには舌を巻く。
体育館が明るくなって拍手が鳴った。
『それでは出演者の皆さんに――』
舞台に吉野があがってくる。由輝は口を開けていた。
それにしても、吉野が由輝を好きっていうのも意外だよなぁ。
逆ならわかるけど。
「なっやっぱり吉野綺麗だよな」
小声で朝弥に話しかけると頷いてから唇を噛み締めた。
「凛としてるよな。カメラ持ってくればよかった」
ぶっちゃけ由輝以外は皆吉野が来るのを知っていた。
そろそろ学校に来いと部長に催促させ、華を添えるために出てくれと茜に説かせたのだ。
吉野を前に進ませないとな。
これぞ重要な任務。
ちなみに由輝は女だと吉野は思っている。気付いていないのだ。
どうにかなんとかなるといいんだけど。
あとは由輝次第だな。
上映会が終わり控室に行く途中に吉野が由輝に話しかけていた。
エンディングで出演者の名前を流していないからだ。
ただし、舞台にあがった時に、部長が万屋同好会に協力してもらったと宣伝してくれたので、また我が同好会は有名になった。
由輝は困惑した顔で俺を見たが俺は素知らぬふりをした。
「仲、戻るといいね」
中元がいつの間にか隣に立って言った。顔を見ると目が合って笑いあう。
「な」
「綺麗ですねーお名前なんていうんですか?」
ニコニコと魅力的な笑みを浮かべながら由輝に話しかけている。
中元の腕を掴んで影に隠れた。
「え、えと…」
「?」
「き…北村 由輝…で、す…」
「……え?」
「北村 由輝…」
一瞬の沈黙。
「やだ‼本能‼嘘‼女の子だと思ってた‼」
「やめてくれー今泣きたいの‼」
「やだ、もう、ホントやだ‼」
吉野が噴き出す。
そして2人で話して笑っていた。
よし、任務完了‼
俺と中元はこっそり成功に笑いあった。
次は夕さん!