ザ・撮影中
プー太です!
茜の人選はちょっとミスったのかもしれない。
「えと、あの…こんな姿で人前に出るなんて無理だってばぁ!」
「中元。時にはあきらめという潔さが必要だ。俺もこんなカッコだしさ、おそろいだと思えば恥じらいはなくなるって!」
髪を染め、化粧もした中元。
なかなかカメラの前に立とうとしない。
やっぱこういう時って俺の出番?
「中元」 ぽんっ
「はいっ!…あ、北村くん?」
「まぁまぁ 落ちつけよ」
きまったくね?
「ななな…」
「な、がどうしたんだ?」
「なんだかできる気がしてきた!」
「そっか。がんばれよ、俺は差し入れ調達に行くから」
さっきまで柱の陰から出てこなかった中元が先陣きって演技を始めた。
なんだかんだ言ってけっこーお似合いじゃね、あの2人。
王子の真実と波長みたいなものがピッタリっぽいし。
「さーてと、行ってきますか」
…そういえば黄色の男役、いなくね? なんだか嫌な予感がした。
両手に差し入れ(という名のおやつ)を抱え足早に撮影場所に戻る。
その瞬間、茜と目が合った。
即行で逸らしてなかったことにしようとしたが、茜には通用しなかった。
ニッコニコしながらこっちに歩いてくる。その手には朝弥も捕えていた。
「由輝、朝弥とジャンケンしなよ」
「由輝ぃいい!オレはやだ!由輝がやってくれぇぇ!」
「や、やめろ朝弥!俺を巻き込むな!俺は差し入れ係で満足してるんだ!」
「や・れ」
「「す、すいやせんっしたあ‼」」
なんだ。なんなんだ茜。俺はお前をそんな風に育てた覚えはないぞ!
俺から差し入れの品を強奪すると黒い笑みを浮かべる茜。
視線が怖すぎておずおず手を出した。
「一回勝負だからね。負けたら…わかってるよね フフッ」
何が、とは言わない。
「い、いくぞ?」
「お、おう…」
「「最初はグー、じゃんけんポンッ‼」」
俺が出したのはチョキ。朝弥は――――…。
あれから30分。
俺は歓喜に満ちていた。
「クッソぉぉ…なんでパー出したんだオレ」
俺は朝弥に勝ったんだ。
「がんばるがいい朝弥クン」
「けっ!オレ当分由輝と口きかねえもん!」
ブツブツ言ってカメラの前に立つ朝弥。
撮影が始まる。
中元が黄色の男にほれるシーン。
これがなかなか進まない。何度も何度も撮り直す。
…真実ってすげぇんだな。一回でOKとかすげぇよまじで。
結局Okが出たのは12回は撮った後。
「次は大臣を呼んで国を滅ぼすシーンいこっか」
部長さんの仕事を横取りして監督をしている茜は活き活きしている。
「今日はもう帰らねぇと下校時間だぞ?」
「なら明日だね。みんな練習しといてね」
それはもう恐ろしいほどに。
「はぁーつかれた」
「お疲れ様。帰るか」
「おう」
次は緋絽さん!