いざ映研部へ
夕です!
「俺は行かねぇ‼」
「いいじゃん、由輝。せっかくの依頼なんだからさ」
僕らは映研部の部室の前にいる…んだけど、由輝がなかなか入ってくれないんだよねー。
「なんで今なんだよ‼吉野がいる、俺はここで待ってる‼」
「由輝は依頼内容聞きたくねーの?オレは聞きたいけどなぁ」
「俺も。映研部だぜ、映研部」
「僕も内容知りたいなー」
だって2つ目の依頼で個人からじゃなくて、部からなんだから。
有名になったねー、うん。
「俺だってそりゃ聞きたいけど…あ”ぁああぁっ…」
変な声で唸っている雪を無視して、真実がドアをノックした。
「これも由輝のため‼失礼しまーす」
ドアが開いた。
「…もしかして、万屋同好会?」
「はい」
出てきたのはのほほーんとした男子生徒で、たぶん3年だと思う。
「来てくれたんだー、あ、入って入って」
『『失礼しまーす』』
1歩中へ入ると、そこにはよくわからない機械がいっぱいあった。
そして5人ほどの男子生徒がいた。
ん、あれ?
「吉野さんは…?」
「んー?あぁ、吉野さんは欠席だよ。3日前くらいから」
「3日前…」
それって…
「由輝が告白された日じゃね?」
朝弥にニヤリとされ、由輝の顔が引き攣る。
ふーん…吉野さん学校休んでるんだ。
よっぽどショックだったとみえる。
「俺は喜ぶべきなのか、落ち込むべきなのか」
「落ち込んどけっ」
「えぇっと、いいかな?」
ドアを開けてくれた男子生徒さんが苦笑しながら言ってきた。
「吉野さんが休んでる理由はだいたい分かったよ。で、依頼なんだけど――――…」
「どんとこい‼」
朝弥が胸をはる。
「頼もしいねー。今、作ってる映画のことなんだよ、これ」
見せてくれたのは台本で、かなりのページ数。
タイトルは…『悪ノ娘』?え、これって…
「これ、歌ですよね?」
「うん、詳しいね」
「姉がうちで聴いてました。歌を映画にしたんですか?」
「そうだよ」
すごいな、映研部。レベル高っ。
「俺も知ってる」
「俺もー」
「オレもー」
お、全員?けっこう有名なのかな、あの姉さんが聴くくらいだからあんまり知られてないのかと。
「で、ここで問題が起こっちゃったんだよね。実はこれ吉野さんが主演なんだよ」
ナイスキャスティング‼って叫びそうになった。
うん、吉野さんピッタリだと思う。
「でも、その主演の吉野さんが休みだしちゃったんですね」
真実が由輝をちらっと見て言った。
「しかも台本を書いたのも吉野さん。映研部には彼女以外の女子はいない。映研部初めてのピンチってわけ」
「だからオレらが呼ばれたのかー」
朝弥がまたもやどこから出したのかアメを転がす。
「そう。お願いしてもいいかなぁ?あ、僕は高坂 護、映研部部長、いちおうね」
それから部長さんが依頼内容を教えてくれたんだけど、ちょっと困ったことになってる。
「さぁどうする?」
「俺は慎んで辞退します‼朝弥は?」
「オレにはムリ‼由輝だろ」
「嫌に決まってんだろ、そんなの。茜は?」
「僕も絶対やりたくない」
僕らが何を押しつけ合ってるのかと言うと…そう、主演。
吉野さんの代わりに主役を演じてくれって言われたわけ。
もちろん“娘”はできないからタイトルを『悪の王子』に直してやるんだって。
「僕は台本やりたいから」
その台本も吉野さんしか書けないから頼まれてしまった。
「いいよね、文芸部だし」
「茜、お前は名前だけだろ‼」
「いいよね?」
「「「……」」」
あはっ、いち抜け。
「んじゃ…3人でジャンケン?負けた人が主演で」
溜め息混じりに真実が言う。
「そうだな、覚悟はいいか?」
なぜか楽しそうな朝弥。
「「「ジャーンケーン…ポン‼」」」
どれどれ?
「ぐああああぁっ」
「やりぃっ、真実が主演なっ」
そんなこんなで始まった2つ目の依頼。
すっごい楽しめそうなのは、僕と朝弥だけ、かな?
ジャンケンの結果
真実…グー
由輝…パー
朝弥…パー
以上っ、次は秋雨さん!