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白紙に綴る夢  作者: 緋絽
111/111

ありがとうって言ってあげてください

夕です。

なんかもう最近すごい忙しいです。

来年の今頃を創造するのが怖い。


木登りなんてできる人のほうが少ないんだって。

「あったー?」

「いや、ないなぁ」

木の上から朝弥が飛び降りてきた。

このおサルめ。

「こっちもなかったぞー」

隣の木を探していたふたりも帰ってくる。

んー…校内じゃないのかな。

でも重いアクセサリーを盗ったカラスが、そんなに遠くまで飛んでいくとは思えないんだよな。

「おい茜。どこ行くんだ?」

由輝に呼び止められる。

「ちょっと先輩に詳しいこと聞いてこようかなって。どこで盗られたとか、そういうの。だからさんにんはもうちょっと木登りしてて」





先輩は教室の窓辺にいた。

「ここから木の上が見えないかなと思って」

ちょっと無理そう。そう言って先輩は笑って見せた。

でも焦っているのは伝わる。

「その…ネックレスはどこで?」

「放課後に屋上で」

屋上?

「なんで屋上なんかに?…一応…許可なく出入りするのは禁止になってるはず…ですけど」

先輩はあははと今度は自嘲気味に笑って、近くの机の上に座る。

「行かなきゃ、なくさなかったのにね。最後にこの辺をぐるっと見ときたかったの。…私、4月から大学でこの町出てくから」

なるほど、そういうことか。と納得する。

「それで…。じゃあ、カラスがどこへ飛んでいったか見ました?」

「それが、その時はパニくっちゃって」

そうですかと僕が言うと先輩は窓の外を見ながら話し始めた。

「あのネックレスね、私のおばあちゃんがくれたの。受験前にお守りにって、大事にしてたネックレスをね。それで最初は私それを断ったの。だってあんな重いネックレスをお守りになんて…恥ずかしいじゃない?…あ、おばあちゃん実は少しボケが始まってて、私が焦ってるのわかってないのかなとも思っちゃって。それでもおばあちゃんはしつこく持ってなさいって言ったの。で、ダメそうだった本命校の受験にホントに受かったから…」

それから、受かってすぐにおばあさんは体調を崩して入院。お礼もごめんなさいも言えていない。

最初だけとはいえおばあさんを突っぱねたことに罪悪感を感じていたという。

そしてさらにそのお守りのネックレスさえなくしてしまった。





「そういうわけらしいよ」

「「なるほど」」

なかなか広い校内の木に交代しながらも連続で登っていた朝弥たちは、死にそうな顔をして僕を待っていた。

「どうでもいいけどさー、茜がだんだん女子恐怖症を克服してきた気がするな」

「うるさいよ真実。女子恐怖症って何さ」

そういえばひとりで先輩に話を聞きに行くなんて前の僕にはなかったかもしれない。

小森さんの時とか、結構ひどかったし。

治ってきたって言い方はしたくないけど、治してくれた人には心当たりがあるというか何と言うか。

「あれだな、それはあれだ。吉…」

「朝弥君?それ以上言ったら一文字ごとに一殴り」

グーをかまえると由輝に必死な顔で止められた。

「とりあえず女子恐怖症の話は置いといて。先輩のネックレス探す方が先だろ。後三日なんだし」

確かにさっきの話を聞いてしまっては見つけないわけには行かなくなった。

「あと…この校内で見てない木は?」

真実が目線をやって答える。

「あそこ。校門のところの一番高いやつ」




たぶん秋雨さんでこの依頼は終わりかな?


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