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光明見える極東露西亜

更新する前に読み返していますが、書き直したほうがよかったか、という感が強くなります。今書いたら、少しはまともなものになるかもしれない、そう思いますが、以前に書いておいて完結までしていたので、そのままです。

みかんのものを含めて三話ほど使わなくなったパソコンから発掘していますが、考慮中です。

 マガダンの露西亜軍が増強されているとはいえ、燃料事情から稼働率はそう高くない、というのが皇国および周辺国の見解であった。つまり、石油をマガダンまで輸送しなければならない、その一点により、皇国海軍および沿岸警備隊が常に監視しているためである。そして、露西亜製艦艇が千島列島を通過する際にその船種を特定することでおおよその稼働率が判明する。史実とは異なり、樺太島が皇国領であるため、黒海から運んでこなければならないからであった。陸路ということもありえるが、輸送量は圧倒的に海上輸送のほうが多いからである。


 燃料事情といえば、東亜細亜諸国も同様であるが、こちらは中東からの輸入が順調であるため、それほど窮乏することはなかった。また、近隣に黒竜江油田、山東油田と大陸の産油(質はともかくとして量は確保できていた)こともあり、もしも、という場合でも一定期間は対応可能とされていた。皇国でも、扶桑州の尾羽、瑞穂州の枯淡の両油田からある程度は供給可能であった。


 この時期、皇国を含めて世界の先進国がもっとも恐れたのは核の使用であったといわれる。冷戦崩壊後、核兵器は幾つかの条約によって所有量が制限されていたが、明確な確証は得られていなかったからである。この時点では、日英米仏ソが核武装しており、他に、インド、パキスタン、東露西亜が配備していたとされている。もっとも不透明だったのが、中東と中華人民共和国であるといわれていた。特にアメリカとの緊張が続く中東のイラクでは核開発が進められているというのが定説であった。


 皇国軍上層部が把握している限りでは、ベーリング海やオホーツク海には米露の戦略核ミサイル搭載原子力潜水艦が待機していることは確認されていた。ずれも皇国に対する備えであることは明白で、皇国海軍も対抗処置として北極海と北太平洋に各一隻ずつ常駐させている。これが日米安全保障がなく、国際連合常任理事国たるこの世界の皇国の勤めでもあった。また、東欧に影響力を残すため、黒海沿岸部にも一時配備されていたが、現在は存在しない。特に、部分的に三極構造であったこの世界ではそうせざるを得なかったといえる。


 部分的に、というのは東亜細亜や東南亜細亜では皇国の影響が強く、欧米の影響が弱いことからきている。特に極東亜細亜では、中華人民共和国とソ連(現露西亜)を除けば、ほぼ皇国の影響が及ばない地域はなかったといえる。中華人民共和国を除けば、各国で採用されているのが、通貨の円であった。これが国際通貨のドルを導入しないこれら地域が米国に不信感を買っている原因といえた。


 しかし、露西亜政府がどのように宣伝しようとも、一般民衆はいやおうなしに目にするのが、自国と東露西亜および皇国との発展度であったといえる。マガダン周辺の漁民にとっては北樺太沿岸にそびえる高層ビル群であり、ザハ共和国民衆が目にする東露西亜域の高層ビル群であった。また、東露西亜ではテレビやラジオといったメディアに露西亜のシベリアや極東域向けの政略放送ともいえる電波を発信していた。そういうこともあり、政府が思うほど統制されてはいないのがこれら露西亜領土であったといえるだろう。


 当然として、同地域に駐留する露西亜軍兵士にも大なり小なりの影響を与えていたといえる。そうして、この時期、貧困に喘ぐこれら地域で住民による暴動が各地で発生することとなった。そして、下級兵士をも巻き込んでレナ川以東の各地に広がっていくこととなった。これらは当地に入っていた欧米のメディアによって世界中に発信されることとなった。むろん、皇国メディアも規制を受けながらも報道を始めることとなる。


 ロシア政府は武力による鎮圧を行おうとするが、軍人、多くは下級兵士であった、が持ち出した武器を使用するにおよんで内戦へと発生することとなったのである。つまるところ、軍内部でも反政府派というのが存在するため、鎮圧は不発に終わり、さらに混迷を増していくこととなったといえる。陸軍だけではなく、海空軍においても反政府派が多く存在したといわれる。それがもっとも現れているのが、彼らが静観していたということにあるだろう。彼らは現場で彼我の格差を身をもって体感していたからだろうと思われた。


 暴徒と化した群集は東露西亜領へとなだれこむこととなった。ここにいたって、東露西亜政府および軍上層部は治安維持と称して露西亜領へ出兵することとなった。そして、皇国に介入を要請することとなった。皇国は国際連合安全保障理事会にはかることとなった。露西亜が対応できないなら国連軍を派遣するべきであろうとしたのである。むろん、露西亜は反対し、国連軍が派遣されることはなかった。


 しかし、当事国である露西亜が手を打つ前にこの暴動が鎮圧されることとなった。レナ川以東の露西亜領が独立を宣言し、多くの兵士がその中に含まれていたのである。これは、陸空軍の多くの兵がこれら地域出身者で占められており、ヨーロッパ露西亜から派遣されていた高級将校の多くがレナ川以西に脱出するか、拘束されたからに他ならない。また、海軍の多くは千島のいずれかの海峡を通過して北太平洋に脱出、最近は疎遠となってはいたが、ベトナムに向かったのである。


 つまり、彼らは本国からの指令、武力による暴徒鎮圧を不可能と判断するだけの理性が残されていた、ということになる。艦艇乗員による陸戦など、本職の陸軍兵に比べたら対応しきれないことがわかっており、あえて被害の出る事態を避けた、その点において彼らは多くの国から賞賛されることとなった。むろん、本国の判断は別であり、彼らの多くは帰還後、軍法会議にかけられ、シベリア送りとされたという。後に彼らはあらゆる手段を講じて東露西亜に亡命することとなった。


 独立を宣言した極東露西亜領は間をおかずに東露西亜に帰属することを宣言し、国際的には認められなかったが、レナ川以東地域は東露西亜によって統一されることとなった。むろん、東露西亜は合併を宣言することなく、食料支援や日常品および医薬品の供給など、主に人道的処置として介入している。露西亜は国軍を派遣して奪還を目指したが、日英米仏による圧力によって断念せざるを得なかったのである。露西亜を支持した国は中東の一部の国であり、いずれも開発途上国ばかりであり、先進国はこぞって反対することとなった。つまり、露西亜は孤立することになったのである。


 結局、レナ川以東地域は二〇一〇年に国連決議により、東露西亜領とされ、一応の決着を見ることとなった。当初は露西亜も常に奪還の意志を表明していたが、未開の地ともいえる極東領を消失したことで、露西亜国内の経済が上向いたこともあり、国連決議前に、公式にレナ川以東地域の放棄を宣言している。実際、それまで旧西側諸国の中流以下だった経済が上流国に近くまで発展していたのである。


 東露西亜は逆に経済的負担が増加し、経済が低迷することとなった。しかし、国連決議が出されたころには回復していたといわれる。治安も回復し、皇国を含めた東亜細亜諸国が国土開発支援に参入、レアメタルなどの地下資源を輸出することで、経済面でも回復の兆しをみせていたといわれる。特に、チュクチ州において油田が発見されたのが大きく貢献していたといえる。ロウ作物を輸出したい米国も幾つかの事業に参入していた。


 一九九九年一二月、千島列島最東端に位置する占守島(しゅむしゅ島)に進出していた第一一師団、師団司令部は釧路にある、隷下の第一一三連隊第三大隊第二中隊所属の将兵たちはカムチャッカに向かう最後の船を見送っていた。第一一三連隊司令部は択捉島にあり、第三大隊本部は幌筵島にあった。第一一三連隊は千島列島に配備され、皇国の防衛最前線にある部隊であり、この五年間は彼らにとっては激務に追われる日々であったといえる。


 ソ連崩壊によるカムチャッカ動乱、それによって発生した難民が千島列島の北千島といわれる地域に押寄せたのが五年前の九月であった。最終的な難民数は二万五〇〇〇人にも達し、皇国政府はそれの対応に迫られることとなった。二万五〇〇〇人という数字がどれほどかといえば、当時のカムチャッカ半島は二五万人ほどの人口であったから一〇パーセントが難民として北千島に押寄せたことになるのである。そうして五年、一応の安定をみたいま、二万人がカムチャッカに戻りはじめ、この日、最後の船が難民一〇〇〇人を乗せて出港していったのである。


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