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マリアナ事変

ちょっと簡単に書きすぎかも知れません。十話ぐらい費やして核べきなんでしょうけど・・・・アメリカが第二次世界大戦に参戦しなかったら起こりえたかもしれない出来事ですね。ルーズベルトが大統領だったらこんな封にはならなかったかもしれません。お約束の米国軍人を出してみましたが、無理があるかもしれません。

 一九五五年八月一五日、トラック諸島夏島からサイパンに向かっていた海上保安隊所属の一七式大艇<晴空>がグアム沖で、ロケット弾攻撃を受けた、という発信後消息を絶ったのである。直ちにサイパン島から海上保安隊の「留萌」型巡視船一隻、「鴻」型小型巡視船三隻が出動し、「留萌」型巡視船に搭載している五三式回転翼機一機が捜索に当たった。グアム島北東二〇浬沖海上で不時着水している<晴空>と米国駆逐艦二隻を発見する。


 <晴空>乗員によれば、グアム沖東方二五浬で西南下方より高速飛行物体の接近を探知、回避行動に移ったが間に合わず被弾、一発は右翼に、もう一発は胴体後部に命中するも不発、何とか不時着水したところに米駆逐艦二隻が現れ、拘束直前だったということであった。


 米駆逐艦『サイラル』の機銃発砲により、砲撃戦となった。「留萌」型巡視船『礼文』は大破、しかし、「鴻」型小型巡視船の砲撃により『サイラル』大破、「鴻」型小型巡視船一隻中破という段階で戦闘が終了する。グアムから出てきた米太平洋艦隊グアム分遣艦隊が現れ、上空には小笠原から飛来した一〇機の攻撃機が現れたためであった。米側五九人、皇国側五一人の死傷者が出ることとなった。


 皇国側の調査要求に対して米国はこれを拒否、同海域では緊張が高まることとなった。皇国海軍は小笠原に空母二隻、重巡洋艦四隻、駆逐艦一六隻からなる臨編第五機動部隊を派遣、これに対して米側は戦艦四隻、空母四隻からなる二個任務部隊をグアムに増派していた。


 この間、皇国側が把握した状況は、米国の駆逐艦に搭載されているロケット弾が二発発射され、うち一発が右翼第三エンジン付近に、もう一発は胴体後部に命中するも不発であった。攻撃を受けた同時刻に米国の飛行艇が大型グライダーを曳航しているのが視認されている、などの理由から艦対空ロケット弾の発射試験に巻き込まれたのではないか、と判断していた。


 この時期、皇国軍では幾つかの誘導ロケット弾が開発され、正式採用されていた。五二式空対空誘導弾、五三式空対空誘導弾、五二式艦対空誘導弾、五三式艦対空誘導弾、五四式空対艦誘導弾、五四式地対空誘導弾などである。五二式空対空誘導弾は赤外線追尾方式で射程が五km、五三式空対空誘導弾はレーダー誘導方式で射程が二〇km、五二式艦対空誘導弾と五三式艦対空誘導弾はレーダー誘導式で前者が射程五km、後者が二〇kmであり、五四式空対艦誘導弾はレーダー誘導式で射程は三〇km、五四式地対空誘導弾はレーダー誘導式で射程が三〇kmで射高一万四〇〇〇mであった。五二式空対空誘導弾、五三式空対空誘導弾、五二式艦対空誘導弾は公表されているがそれ以外は未だ公表されていない。


 そういうわけで米国が艦対空誘導弾を開発していてもおかしくはなかった。ひとつは赤外線誘導でもうひとつはレーダー誘導方式であると考えられた。しかし、皇国にはなぜグアムなのかが判らないでいた。皇国では扶桑州か北東シベリアで試験を行い、米ソには判らないよう極秘で行っていた。結局、正式配備が成され、その試験であったと判断された。


 実のところ、今回の事件は皇国側の推測どおりであった。開発試験ではなく、採用直前の試射であったとされる。同様の試射は大西洋や南米、インド洋、フィリピンでも行われていたのである。ロケット誘導技術では米国は皇国に遅れていたといわれる。史実とは異なり、独逸からは何の技術も得ていないから当然といえたかもしれない。


 一九五五年九月二一日、グアム東方五〇浬の海上、日米の艦隊が三万mの距離を置いて西に向かって一六ktの速度で同航していた。両艦隊とも主砲を相手(日本側は左舷に、米側は右舷に)に向けており、上空には双方の航空機が四機飛行していた。皇国側の航空機は四八式ジェット戦闘機<疾風>であり、米国側はF86<セイバー>であった。この両機はよく似ていたといわれる。


 そうして事件が発生することとなった。米艦隊の最後方にいた駆逐艦『シュールリズム』から轟音と煙と炎が上がり、その中から四発のロケット弾が上空に向かって発射され、上空の四機の航空機のうち、二機の<疾風>に向かって行った。<疾風>には警告が発せられたが、あまりにも距離が近いために時既に遅く命中する。ロケット弾は<疾風>二機だけではなく、接近していた二機のF86<セイバー>のうちの一機にも命中する結果となった。


 両艦隊司令部は一瞬唖然としていたとされるが、先に動いたのは皇国艦隊であった。最後尾にいた陽炎型駆逐艦『不知火』が二基の一二七mm連装主砲を『シュールリズム』に向けて発砲したのである。皇国艦隊司令官柳本柳作中将は『不知火』に攻撃停止を命じると、緊急事態に備えて艦隊北方上空にあった二機の四九式ジェット攻撃機<新星>に対して、米空母への攻撃を命じていた。


 <新星>は順次二発の大型ロケット弾、五四式空対艦誘導弾を発射する。この時代、同時に多目標を攻撃できるわけではなく、目標設定は人が行わなければならない。結果的に発射された二発の五四式空対艦誘導弾は狙った空母のうち、一隻に命中、空母の近くにいた重巡洋艦一隻に命中したのである。空母に命中した五四式空対艦誘導弾は格納庫で爆発、飛行甲板の一部を内側から捲れあがらせた。重巡洋艦に命中した五四式空対艦誘導弾は艦橋基部に穴を開けて高圧ガスによって配線を破壊した。後に空母は大破、重巡洋艦は中破と断定されている。


 この時点で柳本中将は攻撃停止命令を出した。米艦隊司令官アーレイ・バーク少将も反撃を加えていた四隻の駆逐艦に攻撃を中止するよう命令している。ここで柳本中将は双方による『シュールリズム』の隔離と調査を打診し、バーク少将も応じることとなった。その後の調査で『シュールリズム』に乗艦していた武器製造会社の技術者が最初にロケット弾を発射したことがわかった。柳本柳作中将は米艦隊の小笠原係留と負傷者の救護を打診、バーク少将もこれに応じた。


 この戦闘で皇国側は死傷者一〇〇名、米側は死傷者一〇〇〇名を出していたとされる。この二ヶ月後、米国側は一連の事件を謝罪し、皇国側もこれを受け入れることとなった。以後、皇国海軍は米国を仮想敵国と再認識、小笠原には常時艦隊を配備することとなる。これにより、皇国側は当初予定していた軍縮案を一部変更し、常設艦隊を一個増強することとなる。


 これ以後、現在においても小笠原諸島は皇国軍の根拠地と化し、人口も史実の二〇〇倍近い数であり、本土とは離れているにもかかわらず、都会化していた。逆にいえば、グアム島が米軍の一大根拠地と化しているからこそ、皇国海軍も軍事予算が削られすぎることはなかったとされる。なにしろ、皇国の周辺域は中華人民共和国とソ連を除けば敵国と呼べる地域は存在しなかったのである。


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