一九三八年皇国海軍
実際のところ、史実に準ずる形で書いていたと思いますが、ちょっとやりすぎかもしれません。私は航空母艦ファンですが、『蒼龍』『飛龍』『大鳳』がすきなのです。だから登場させました。ちなみに元は別の艦名でした。
一九三五年第二回ロンドン海軍軍縮会議においてイタリアが脱退、これによって海軍休日は終焉を迎えることとなった。すわっ建艦競争かと思われたが、もともとが日英米三国の海軍力統制が主目的であったため、皇国が代替艦のみの建艦を宣言していたこともあり、史実のような海軍軍備拡張には至っていない。「扶桑」型戦艦二隻と「伊勢」型戦艦二隻の代艦を建造中であることは公表されていた。
この間の出来事として、『天城』『赤城』『翔鳳』『翔龍』が太平洋戦争での損傷がひどく、修理するよりも新造の方が費用が安くなると判断され、廃棄処分とされたことがある。現在、純粋に航空母艦として設計された「蒼龍」型航空母艦が代艦として建造されている。
一九三八年初頭の帝国海軍所有艦(主要艦艇のみ)
戦艦
「金剛」型巡洋戦艦四隻
『金剛』『比叡』『霧島』『榛名』
「伊勢」型戦艦二隻
『伊勢』『日向』
「長門」型戦艦二隻
『長門』『陸奥』
「加賀」型戦艦二隻
『加賀』『土佐』
航空母艦
「龍驤」型航空母艦二隻
『龍驤』『龍鳳』
「蒼龍」型航空母艦二隻
『蒼龍』『飛龍』
「隼鷹」型航空母艦二隻
『隼鷹』『飛鷹』
重巡洋艦
「古鷹」型重巡洋艦二隻
『古鷹』『加古』
「青葉」型重巡洋艦二隻
『青葉』『衣笠』
「妙高」型重巡洋艦四隻
『妙高』『那智』『足柄』『羽黒』
「高雄」型重巡洋艦四隻
『高雄』『愛宕』『摩耶』『鳥海』
軽巡洋艦
「球磨」型軽巡洋艦三隻
『球磨』『北上』『大井』
「長良」型軽巡洋艦六隻
『長良』『五十鈴』『名取』『由良』『鬼怒』『阿武隈』
「川内」型軽巡洋艦三隻
『川内』『神通』『那珂』
「最上」型軽巡洋艦四隻(主砲交換後は重巡洋艦)
『最上』『三隈』『鈴谷』『熊野』
「天龍」型軽巡洋艦二隻
『天龍』『瀧田』
駆逐艦
「若竹」型駆逐艦八隻
『若竹』『呉竹』『早苗』『早蕨』『朝顔』『夕顔』『芙蓉』『刈萱』
「神風」型駆逐艦八隻
『神風』『朝風』『春風』『松風』『旗風』『追風』『疾風』『夕凪』
「睦月」型駆逐艦一二隻
『睦月』『如月』『弥生』『卯月』『皐月』『水無月』『文月』『長月』『菊月』『三日月』『望月』『夕月』
「吹雪」型駆逐艦二四隻
『吹雪』『白雪』『初雪』『深雪』『叢雲』『東雲』『薄雲』『白雲』『磯波』『浦波』『綾波』『敷波』『朝霧』『夕霧』『天霧』『狭霧』『朧』『曙』『漣』『潮』『暁』『響』『雷』『電』
「初春」型駆逐艦六隻
『初春』『子ノ日』『若葉』『初霜』『有明』『夕暮』
「白露」型駆逐艦一〇隻
『白露』『時雨』『村雨』『夕立』『春雨』『五月雨』『海風』『山風』『江風』『涼風』
「朝潮」型駆逐艦一〇隻
『朝潮』『大潮』『満潮』『荒潮』『朝雲』『山雲』『夏雲』『峯雲』『霞』『霰』
「峰風」型駆逐艦一六隻
『峰風』『澤風』『隠岐風』『志摩風』『名田風』『耶風』『羽根風』『潮風』『空風』『夏風』『立風』『穂風』『矢木風』『浪風』『湖風』『凪風』
水上機母艦
「千歳」型水上機母艦六隻
『千歳』『千代田』『千早』『千島』『瑞穂』『日進』
護衛艦
「占守」型海防艦
『占守』『国後』『八丈』『石垣』
「択捉」型海防艦
『択捉』『松輪』『佐渡』『隠岐』『六連』『壱岐』『対馬』『若宮』『平戸』『福江』『天草』『満珠』『干珠』『笠戸』
「鴻」型海防艦四八隻
さらに多数建造中。
その他雑役艦や施設艦、工作艦、給油艦、輸送艦など所有。
「金剛」型巡洋戦艦四隻は改装中であるが、完成後の要目は次のようになる予定であった。排水量三万五〇〇〇トン、全長二一六m、全幅三二m、吃水九.五m、ボイラー瑞穂重工重油焚×一二基、主機瑞穂ブラウン式オールギヤードタービン×四基、四軸推進、出力一三万八〇〇〇馬力、武装五〇口径三六cm連装砲四基、五〇口径一五.二cm単装砲八基、五〇口径一二.七cm単装高角砲八基、二五mm連装機銃一〇基、水偵三機搭載、最大速力三二kt、航続距離一六ktで一万浬。
「長門」型戦艦の改装後の要目は次のようになっていた。排水量四万トン、全長二二三m、全幅三四.五m、吃水九.五m、ボイラー瑞穂重工重油焚×一○基、主機瑞穂ブラウン式オールギヤードタービン×四基、四軸推進、出力一一万五〇〇〇馬力、武装五〇口径四〇cm連装砲四基、五〇口径一五.二cm単装砲八基、五〇口径一二.七cm単装高角砲一〇基、二五mm連装機銃一〇基、水偵三機搭載、最大速力三○kt、航続距離一六ktで一万浬。
「長門」型戦艦は三万五〇〇〇トンを超えているが、太平洋戦争の損傷修理で既に工事に入っていたために認められることとなった。それに対して、各国戦艦保有規則の中に二艦のみ三万五〇〇〇トンを超えて四万トン以下の戦艦を認める、という条件を皇国は提案している。
「龍驤」型航空母艦の要目は次のようになっていた。排水量一万一五〇〇トン、全長一九〇m、飛行甲板長一九〇m、全幅二二m、飛行甲板幅二八m、昇降機二基、カタパルト二基、吃水七.五m、ボイラー瑞穂重工重油焚×八基、主機瑞穂ブラウン式オールギヤードタービン×二基、二軸推進、出力九万二〇〇〇馬力、武装五〇口径一二.七cm単装高角砲一二基、二五mm連装機銃一〇基、航空機四〇機(艦戦一六、艦攻二四)+補用一二機、最大速力三三kt、航続距離一六ktで九○○○浬。
「蒼龍」型航空母艦の要目は次のようになっていた。排水量二万五〇〇〇トン、全長二四五m、飛行甲板長二四五m、全幅二八m、飛行甲板幅三四m、昇降機三基、カタパルト三基、吃水九m、ボイラー瑞穂重工重油焚×一〇基、主機瑞穂ブラウン式オールギヤードタービン×四基、四軸推進、出力一六万馬力、武装五〇口径一二.七cm単装高角砲一二基、二五mm連装機銃二〇基、航空機七八機(艦戦二四、艦爆二四、艦攻二四、艦偵六)+補用一二機、最大速力三二kt、航続距離一六ktで九八○○浬。
「隼鷹」型航空母艦の要目は次のようになっていた。排水量一万六〇〇〇トン、全長二二五m、飛行甲板長二二五m、全幅二四m、飛行甲板幅三〇m、昇降機二基、カタパルト二基、吃水七.四m、ボイラー瑞穂重工重油焚×一二基、主機瑞穂ブラウン式オールギヤードタービン×四基、四軸推進、出力一三万八〇〇〇馬力、武装五〇口径一二.七cm単装高角砲一二基、二五mm連装機銃一六基、航空機五八機(艦戦一八、艦爆一八、艦攻一八、艦偵四)+補用八機、最大速力三二kt、航続距離一六ktで九四○○浬。
この三艦とも設計段階から空母として設計されたもので『鳳翔』の真の後継艦といえる。排水量の割りに艦体が大きいのが最大の特徴とされる。この艦たちは『天城』と『赤城』の運用の経験が活かされていた。瑞穂州経由で入ってきたカタパルトを採用しているのもこれまでと異なる点であり、以降の空母はすべてカタパルトが標準装備されることになる。また、「蒼龍」型航空母艦は以後の皇国航空母艦の礎となるほど優れた艦であり、後に「雲龍」型と称される縮小戦時急造艦が多数建造されることになった。
「占守」型海防艦の要目は次のようになっていた。排水量一〇〇〇トン、全長七二m、全幅九m、吃水三m、主機瑞穂重工製一二五型ディーゼル機関×四基、二軸推進、出力五○〇〇馬力、武装五〇口径一二.七cm単装高角砲二基、二五mm連装機銃二基、爆雷五〇個搭載、最大速力二○kt、航続距離一六ktで八○〇〇浬。
「択捉」型海防艦は「占守」型海防艦を基にしたものであるが、違いは寒冷地での運用が考慮され、暖房機能が付与されていることである。両艦とも起工から竣工まで三ヶ月という建造期間であった。さらに、対潜および対空戦闘に特化した護衛艦である。後述の「鴻」型海防艦とで編成された護衛部隊の旗艦機能をもたされているため、通信機能は重巡洋艦並に整備されている。
「鴻」型海防艦の要目は次のようになっていた。排水量六〇〇トン、全長六二m、全幅六m、吃水二.三m、主機瑞穂重工製一二五型ディーゼル機関×二基、二軸推進、出力二五○〇馬力、武装四五口径口径一二.七cm単装高角砲一基、二五mm連装機銃二基、爆雷五〇個搭載、最大速力二○kt、航続距離一六ktで五○〇〇浬。
「鴻」型海防艦はロンドン軍縮条約下で規制されなかった六〇〇トン以下の排水量でありながら、対潜戦闘に特化した護衛艦であり、航洋性に優れた設計の高性能艦であった。一九六〇年まで建造され、自国および後進各国に輸出され、輸出艦は一九八〇年まで現役でいたといわれている。
「択捉」型海防艦一隻と「鴻」型海防艦八隻からなる戦隊は太平洋はもちろんインド洋や地中海、北大西洋でもその名を知られるようになった。皇国海軍では鎮守府防衛から箔地護衛、沿岸哨戒、船団護衛とよく重宝されていた艦であった。特に、「鴻」は世界でもっとも有名な日本語ともいえたし、有名な艦級で知られている。
両型とも第二次世界大戦後に後進各国の造船所でライセンス建造され、最終的には合わせて五一二隻も建造されている。各国ごとに微妙な違いはあるものの、大きく分けて前中後期型の三つに分類され、相違点は電装関係にあった。いずれにしても、この艦で海軍軍人生活を始めた、という軍人は世界中に多く存在する。後進国の中には一兵卒として乗り組み、下士官候補生課程に進んだ後、海軍司令官となって大将までに上りつめた軍人が一〇人近く存在するのである。つまりはそれほど有名な艦種であったのである。