07「ガオン様の奴隷です。訂正して」精霊王の発言に大陸は震える
ブラーシュが自ら率先して変身魔法を使い、ブラックドラゴンに変身する。
姉メーライと獣王でありメーライの番でもある、ガオンらの住んでいる国の城へ向かう。少し手前に一瞬で移動してから現れると国自体がパニックに陥る。
わあ!わあ!と国民がブラックドラゴンにこの世の終わりだと走り回っていた。
「人間ってそろそろ慣れないかな」
今まで色んな登場の仕方をしていたのに、今回は毛色が違うから普通に襲われる前提に思っているのだろう。それもこれも、こちらを奴隷にする宣言を勝手にした王のせいだ。
ほら、奴隷としては主人のところに顔を出さないと罰を受けるでしょ?ね?
もう来てほしくないと言われようと、非難轟々に晒されようと一生このていで行く。ノンファンを側近を使い、引き倒させて怪我をさせて殺されかけたから。
獣王ガオン曰く姉の服のお下がりをもらうだけで死刑になるらしいもん。なので、精霊王をしょぼい罪で連座して処刑しようとした大罪人も、国も、姉も。まとめて滅ぼされても当たり前なのだ。
王城のところにある庭に降り立つと、兵士たちが出てくるが大声で「奴隷のわたしが!奴隷で!処刑にしようとした獣王様にー!会いに来ましたー!」と大声で叫んだら慌てて武器を下ろす。系統がとれてていいんでないの?
適当なことを思いながら伸び伸びとブラックドラゴン型のまま、ブラーシュは小さくなりながらものしのしついてくる。歩き方が可愛いな。癒されながら、今回はなにをしようかと考えた。
今この城では、獣人国のやらかした数々の違反行為を世界各国が断罪するために会議を開いているのだ。
何ヶ月目になるだろう。知らないけど、新聞に書いてあった。獣人国がガオンと姉、祖国の責任問題を詰めている最中。その間に来たのは初めてだったかな?
城に堂々と入る。兵士たちは直立不動だ。他国の兵士らしき、紋章の模様をつけた者もいる。
今ここは国際会議、国際裁判の準備中だから他国のさまざまな人たちが寄り集まっていると、新聞紙に書いてあった。なので、ちょうどいいやと立ち寄ったのだ。自分こそ、彼らの罪を決める権利があるからね。
「精霊の愛し子であるノンファン様ですね」
どこぞの偉い人みたいな雰囲気を持つ人が来た。しかし、怯むことはない。ノンファンはこの人たちの祖先が生きていたときから、長い時間を生きていたので彼らよりもずっと貫禄のある思考をしていた。幼馴染曰く場慣れしてるだけだろと突っ込まれるだけだけど。
そんな幼馴染は今は側近モードなので、彼らに威圧感を与えている。ブラックドラゴン形態だが、大理石を傷つけることはない。
うまく歩いているから静かだ。彼らも流石にドラゴンを見る目は、恐怖と冷や汗に塗れていた。
「ガオン様の奴隷です。訂正して」
「ど!?……いえ、あなた様は」
「いえいえ、王国と獣人国の王が定めた決まりでわたしは姉を虐げた……古い服をもらっただけで連座にされた罪人らしいので、公式的に奴隷ですね〜」
そこにきて、にこりと笑顔を浮かべ特大の嫌味を投げつけた。どうせこの人たちだってノンファンが精霊の愛し子でもなんでもなかったら、奴隷に落とされて死んでも記憶から薄れさせて、そのまま安眠してたことはわかってるんだよ?
大事になったのは、単にノンファンが精霊の愛し子だったからなだけ。親に放置されてようと気にするわけがない。
酷いなぁとは思うけど、妖精の愛し子様とツガイの大国の王が決めたことに、あとから言える国なんてなかった。本心もバレバレなので、取り繕ったところで。仰々しく国際裁判を開いているところを見ても、ノンファンへのパフォーマンスとしか思えない。本来なら、妖精や精霊たちと他の生命以外の生きる人類型を、エイッてしてもいいかなと思う。
せっせとこの世界を整えてきた側からすると、やれやれ暮らさせてあげようかと定住を許していたのに喉元に噛みつかれたようなものだし。
この世のバランスに人型は関与してないしなあ。その他の生物たちと違って、感受しかしてないのだ。花に花粉をつけて回りもせずに食べて寝てるだけで、竜脈に関わってもこない。
「いえ、あなた様は愛し子様ですっ」
どうやら罪人を裁く方の人は、考えている間に色々言っていたけれど話を一切聞いてなかった。あとでブラーシュに聞こう。
「罪状はどうなるの」
相手はこちらへ何もかも響いていないことを知ると、頬を引き攣らせてへとへとな顔になりながら告げた。
「奴隷落ちです」
「奴隷落ちか」
ノンファン的には、今も王座に居座ってもらって世間や国から亡国になるまで四面楚歌になって欲しいのに。それを決めるのは彼らと言うのならば。
「奴隷落ちは国が無くなってからでいいでしょ。立場はそのままでいさせておいて」
「へ、な、それはっ」
予想外だったのか、目を何度も何度もぱちぱちさせる。気持ちはわかるけど最後まで聞いてほしい。ノンファンは姉を思い浮かべてからいいことを閃く。
「ガオンとメーライの結婚式もしてあげて、王妃にしてあげて。結婚式は即やってね」
「結婚!?」
「元両親も出席させて」
「な、な、なんですと」
彼は前代未聞な行為に絶句した。だから、最後まで聞いて。
結婚をさせて、逃げられないようにしたいだけなのだ。今のままだとメーライは婚約者であり番なだけでバッシングは受け流すことが可能。王妃になれば獣王と同じく立場は揃う。なにがなんでも、人前に行く時は強制的なことも付随して追加させておく。
そうでもしないと体調不良と言って欠席できてしまう。そんなことができるのならば、初めから国の夜会を使って断罪劇なんて、国家間の越権行為させなきゃよかったのにね。そんなことさえなければ、国々も走り回らなかっただろう。
ノンファンに直接怪我をさせたピルスンという側近は実家から縁を切られていたが、細工をして縁を切れないようにしておいた。彼の名前を書くことができなくなったのだ。そうすれば縁切り書は作成できない。
一番怒り心頭のブラーシュが念入りに日々なにかしらやっているらしいが、詳しいことは見ないようにしている。興味がそこまでないから。
死なないように健康状態を全盛期にしている、とだけ知っていた。なのでどれほど食欲がなかろうと誰かに毒を盛られようとピンピンとしている。




