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02獣王の側近に大怪我をさせられて覚醒した妖精を統べる空腹の少女。許すまじ

 ノンファンを大切そうに抱き寄せる仕草にしくじったと、誰かが指摘せずとも周りも理解が及んでいった。


「え、ち、違う……違います」


「は……妖精に好かれたと傲慢になった女の末路は悲惨だぞ」


 ノンファンの実姉がふるふると、首を振る。


「違う、違わない。そんなことはもう関係ない。すでにことは起こってる」


 こと静かに、真実だけを告げていく。その段階を踏むごとに命のカウントダウンは、種族もろともまとめて払い出している。それを誰も知らないまま冷徹な瞳で男は一瞥していく。


「ま、待つんだ。知らなかった。妹気味が妖精の愛し子など」


「妖精?」


 男はくつりと笑う。馬鹿にするように、愚か者と目が周りを見渡す。


「うう」


 誰一人動けない中で、頭を摩り目を開けるノンファン。それに、一声かけようとするのは意識が戻ってよかったと今更ながら気を遣おうとする獣王。


「大丈夫だろうか、ノンファン……様」


 手遅れだ、どうしようもなく。それを知らずに声をかけるのは悪手。今更様付けをしようとしても。


「……ノンファン、わかるか?おれがわかるか?覚えているか?」


 ノンファンに声をかける精霊と思われる男に、彼女は視線を横に動かす。瞳が状況や人物を把握すると、憎悪と嫌悪に染まっていく。

 ガオンに対して、実姉への恨みが実体化した瞬間。

 起き上がると直ぐに状況を把握して、恨みを宿す瞳をまっすぐに舞台の上にいる二人へ寄越す。


 近くにいる側近と名乗りノンファンを床に引き倒した大罪人。腕を負傷して痛みに呻いている。そのまま引きずっていったのだった。

 冷えた目で横に目をやると魔法を発動して額に罪という文字を刻む。


 さらに、己にしたように魔法で床を引きずって主の元へ返却させた。血が床に擦れて見え、周りは悲鳴を上げる。どうでもいいので、気にしない。

 己が無罪なのにここまでされたというのならば、有罪のヤツはここまでされてもまだ罰が少ないな。


「やめて!」


 他に何を追加しようと考えていると、その思考を邪魔する声音が響く。


「家族を売った裏切り者は……舌を抜かれるのだけど?」


 煩い口を閉じておこうか?と問いかけて姉の言動を封じる。

 両親に関しては有罪と言っていい真実なのでどうなろうと、預かり知らないことだがノンファンに関しては、調査不足極まりない。

 姉が取り敢えず元凶であり、なにも理解してなかったからこうなってるわけだし。


「す、すまない」


 小さな声が唐突に耳に入ってきて、ステージを見ると獣王のガオンが膝を大理石の床につけて頭を下げ出す。大国の王の下げる頭は決して低くはない。


 だからか、周りは固唾を飲んでいる。

 けれど、ノンファンはちっとも嬉しくはないしそんな程度で許す範囲ではないと思っていて、何度頭を下げようと撤回はしない。

 下げることは誰だってできる。間違いは誰だってやらない。結果が全てだ。もう結果は全て出てしまっている。


「手遅れ」


「くっ」


 ガオンは全身を逆立てて、苦しげに身体を震わせる。圧倒的な威圧感に震えが止まらないのだろう。


「私をさっきまで血まみれのまま引きずってきて、罪人として処理しようとしたくせに。どうせ安易に奴隷にしようとしたくせに。鉱山で働かせようとしたのかな?王宮の下級使用人?皆のストレス解消用?」


 どんな立ち位置に落とすつもりだったのかは、不明だが明らかに処刑相当の扱いにしようとしていた。

 たかだか人間であり、妖精の愛し子如きが被害に遭った程度で。別に毒殺しようとしたわけでもないので罪に対する罰が大きすぎる。

 国際法に伴う法律を無視して、大国というだけで勝手に私刑をやろうとする傲慢さの末路だ。


 調査もしっかりしてなかったくせに、罰だけはしっかり考えている辺りが独善的なものを感じる。

 愛し子であり最愛の女にいいところを見せたいからといい気になって。ノンファンに処刑を望んだのなら、こちらも同等に処刑し返すのが礼儀というものだ。


 姉だった過去の遺物に視線を向ける。妖精の愛し子だったとは。それならば己と違って健康面や安心感は桁違いに差がある。

 自分はご飯がある時とない時の差があったからお腹が空いていたのに。姉はのうのうと、妖精たちの差し出すものを食べていたのだ。

 妖精が姉に食べ物を渡さないわけがない。


 そこで自分の妹はどうしているとか、と様子を見させなかったところは減点ものだ。

 少しは気にして欲しかった。服も滅多に買ってもらえないから、服をもらっていただけだと。前の意識ではまだ子供なので言語化できず、家に閉じ込められているので表現の仕方や話し方、姉を姉とあまり意識をしてなかったことを加味する。


 逆に言うと姉は自分を妹と認識していたことに驚く。それならば話しかけてくれればよかったのに。服をもらう時に悲しげにしていたのは被害者だと思っていたから?服を奪われる余韻に浸っていたと言うことなの?


 それは随分と……頭の中がお花畑すぎる。受け身にもほどがあるのでは。ということは、家の中の状況を正確に把握できなかったわけではなく、把握するつもりはなかったのだな。


 ノンファンは腕を組んで姉についていると思われる妖精たちに目をやる。呆然としているようで、固まっていた。

 それもそうだ、母なる精霊王が降臨したのだから。

 おまけに言うと、怪我をするのをただ見ていただけになっている。自分たちが誰を治し、のうのうと怪我をさせている場面を高いところから見ていたのか、把握しきれていない。

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