ジーナ医術長の辞職と理解できない面々
トウショウ王国。王宮の応接で待っていたマッドジョイにジーナ医術長が報告。
マッドジョイが。
「なぁぁにぃぃ。帰ったぁぁ」
「はい。『アキツシマ』と言う場所が
「はあぁぁ?アキツシマぁぁ。だとぉぉ?」
「はい。間違いなくそう仰いました」
「まぁ、先ずは座ってくれ」
「失礼します」
「みんな知らないと思うがイサム達が召喚された国の二つ名がそのアキツシマだ。
あいつがその名を出したのは俺とイフィス、サチ達居る野宿の時一回だけだ。
クラウス辺りは知っていたかもしれない。
ならばララヴール隊長がアイファウスト王子殿下の変装だ」
「そう言われてみれば背格好が同じでしたね」
「なぜ、私に相談しなかった」
「お言葉ですが人一人の命と捜索。どちらに重きを置いていらっしゃるのでしょうか?」
「両方だ」
「アイファウスト王子殿下と判ったら」
「説得する」
「患者を置いて?」
「そうは掛からない」
「はぁぁ。アイファウスト王子殿下のご判断は最適解でした」
「知っていたのか?」
「転移の寸前にアイミーナ姫様の完治の報告を頂きました」
「なにぃ確定じゃないか。おいっ、何故、医術長バッチを置く」
「聞けばギルドで陛下はあの状況で何もせず立っていたと。
わたくしに連絡されたのも彼女達が促したと聞いております。それも不敬罪覚悟の口調で有ったと」
「ギルド長の身分でなければそうなっていた」
「メイデスがもし死んでいたらお立場はどうなるとお思いですか?」
「いや、何も思いつかんが」
「メイデスはこのトウショウ王国内のギルド受付嬢として屈指の指名受付嬢です。
仕事内容の完璧さ。処理の素早さ。容姿も含め男女構わず愛されています。
都のギルド内でも信頼度は抜群です。
門の前をご覧になられましたか?
地方に居た冒険者までもが転移で続々を現れました。
何故だと思います?」
「見舞いか何かだろう」
「メイデスに何かあれば・・・です」
「集合罪ではないか?」
「見舞いです。ランクA、B、Cを敵に回さずに済みました
「自殺したのは彼女のせ・・・
「向こうで護衛兵の前。彼女達の前で責任をお認めになっていますよね。十年前のあの日から今日のあの時までのを」
「言葉の綾だ」
「ギルド長の宣誓書に安易に責任を認めてはいけない。熟慮することとあります。
出た言葉は戻りません。Aランク冒険者の陛下がご存じないとは思えません。国王の模範解答にも記載されています」
「・・・何が言いたい」
「彼女。メイデスが死んでいたらギルド長の身分として尋問を受けることになっていたでしょう。
その上、Aランクで有りながら救命処置を行わなかった。
職務をメイデスに一任。職務の怠慢。
ギルドの連絡網を私的利用。国王でもできない事。ギルド側は黙認していたようですが全面に出てきます。
そして彼女の自殺の原因。ギルドの冒険者のほとんどが知っているようです。
そして、ギルドの最優秀職員の命よりアイファウスト王子殿下の懐柔を優先させた。
陛下のご質問にお答えしました。言葉を選んでいますので不敬罪を適用されれば出るとこに出ます。
では、長々お世話になりました」
「待てぇぇ
「失礼いたします」
「ジーナ医術長」
「公爵閣下。申し訳ありません。仕事がありますので」
「バッチを置いてできる仕事など、ここには無いぞ」
「ここの外には幾らでもございます。今までありがとうございました」
「待てと言っている」
「一言申し上げます。
あの部屋に人数より一つ多いお茶のカップがありました。カップには口紅が付いていたので間違いなく女性。
冒険者は基本化粧をいたしません。
この厳重な警戒の中。また、Aランク冒険者でも破れないアイファウスト王子殿下の結界。
わたくしが中に入った時にはもういらっしゃらなかった。
そして、ララヴール隊長は間違いなくアイファウスト王子殿下。
陛下。あの部屋の残り香に覚えがあるのでは?
さて、何方がいらっしゃったのでしょうか?」
「思い出した。サチとイフィスの香水。そしてエルファサ女神様」
「イフィス妃殿下は先ほどまでこちらに。サチ様は不可能」
「まさかぁ
「あの部屋の四人の冒険者とメイデスにお会いになった。
こちら側の誰一人会っていない。
そして目の前のマッドジョイにアイファウスト元王子は何も仰らなかった。
何もなさらなかった。
答えは皆様にお任せいたします。
今回この件で知り得た情報を口外すれば国民が災いを受けると思いますよ。皆様は死ねませんから。
失礼いたします」
「待ってくれ。ジーナ医術長」
「バッチも置きました。既に職を辞することもお伝えいたしました。
門を出た時点
「我々にできることは無いか聞きたい」
「公爵閣下。この十年。いえ、姫様が救われたあの日から何をなさいました?」
「考えあぐねている」
「これ以上は不敬罪の領域です。手を御放しいただけませんか?振りほどけば不敬罪です」
「不敬罪の適用は無い。保証する」
「これを申し上げたら、わたくしを解放して頂けますか?」
「本当に辞めてしまうのか?」
「はい」
「それも含めて教えて欲しい」
「辞める理由は陛下にお伝えしました。
出来る事。こちらは恐らくこれだと思います。
アイファウスト王子殿下も正面切って現れない理由でもあると思います。
そしてわたくしもそれを聞き、この十年の全てが納得できました。
その言葉は。あいつがお優しいエルファサ女神様を悪魔に変えた。
あいつはザイスターではありません。
では。失礼。手。痛いのですが公爵閣下
「なぜ、いまそのような言葉が」
「陛下。アイファウスト王子殿下にご執心のあまりお忘れではございませんか?
創世の女神エルファサ様への日々の謝罪を。
イサム様とサチ様は恨んではいないと申されました。
しかし、エルファサ女神様は苦悶の日々を送れと申されたまま、許すとは仰っていません。
この大陸全土の人にエルファサ女神様に悪魔の印象を植え付けたあなたは謝罪し、許しを請う必要があったのでは?
少なくともこの十年。一度も公衆の面前で見聞きしたことはありません。
もう一点。
イサム様は市井を見て回れと仰っています。
これも先ほどの冒険者から聞いて意味が解りました。
女神様の怒りで破壊された町を見て回り困っている人はいないかを見てこい。
陛下も公爵閣下も視察と言う名目で国内を回ったことは一度もありません。
アイファウスト王子殿下発見報告の時に間違った少年を見に行き帰ってきただけです。
難しい事は申しません。一度、十年前から八年前に奴隷に落ちた者の資料を見ると良いです。
あなたが破壊した職種の者がほとんどらしいですよ。
手を放していただきありがとうございます。
失礼いたします」
「なぜみんな別れ際に言うのだ
「わしらがわしらの功績にしようとしていたから、誰にも相談せなんだ。聞く耳も持っておらなんだ。
たった一度の裏切りで二度と戻らない英雄を生み出してしまった。
そして魔王討伐以外にもイサム様達の功績が浸透していることを自覚できなかった。
アイファウスト王子殿下はこの世に現れ、ようやっとそのことに気付かされた。
十年捜索に明け暮れ女神様を国民を顧みなんだ報いがこれから訪れるのであろうな。
死ぬことも殺されることも王座を譲ることも出来ぬこの身で」
「何故ここまで俺を苦しめるぅぅ
「お主は言った。行方不明だったアイファウスト王子殿下を誘き出すために断頭台に固定されたお二方をエサにすると。
お主はたった五歳のアイファウスト王子殿下が父上ぇぇ。母上ぇぇ。と、叫びながら駆け寄って来るのを待っていたのだ。お二人を待たせておったのだ。
その心中を思うとわしは胸が押し潰される。
お主はアイミーナを誘き出すためにお主とイフィスの首を固定された姿をアイミーナに見せたいか。見られたいか。大衆の前で晒したいか。駆け寄って来るのが待っていられるか。
お二人はその精神的苦痛と愛する子から引き離される寂しさと悲しさと辛さ。行く末を案ずる不安の中でもお主に民達を託した。
苦しめられて当然の所業を我々はしてしまったのだ。魔王をも凌ぐ鬼畜の所業だ。何の罪もないお二方に。
そして、サチ様はアイファウスト王子殿下を溺愛しておいでだった。
可愛い盛りの五歳の子を手放さなければならなかった。その我が子の誕生日の日に永遠に。
その日を選んだのはザイスターでは無い。お主だ。人々の心に深く刻み込む。と言って。
そしてお主が望むようにカミミヤファミリー涙のバースデーとして世界に知らない者が居ない程。何処の家庭でも継承される程に知らしめた。
そして創世のエルファサ女神様を悪魔の化身にした。神にまで記憶させた。
苦しめられて当然だ。それを声に出して言うなど愚の骨頂」
「あぁぁぁぁ
「しかしよう考えてみよ。
痛みを伴う苦痛は起きておらぬ。精神的な重みを伴った苦痛だけだな。
改心し女神様に謝罪し、国民を幸せに導く政を行うほうが良いのかもな。
先程、アイファウスト王子殿下は二度と会わぬと申された。
もう捜索の必要も無くなった。
今度は会っていただけるように最善を尽くすのみ」
「判りました。お義父様」
「先ずは手元に置く人選からだな」
「はい」




