両親の仇と挨拶。そして脱出
医務室の外では。
「ジーナ医術長」
「陛下」
「中は?」
「いま、異国の伯爵の近衛兵のお方が施術中。必ず治ると仰っていました。かれこれ二十分です」
「やはり心臓部分は手こずるか?」
「はい。私では時間がかかり過ぎて命の危険がありました」
「そのお方の名は?」
「わたくしがお答えいたします。守衛隊長のイージズです。
彼のお方は冒険者Aランク、ポコマイミとメリースが連れて参りました。
伯爵お嬢様のお忍びの旅の途中でたまたま会ったようです。
表で聞き込みをしましたが二人が突然、何処からかお連れになったようです。
お名前をララヴール様。Aランクの回復魔法上限でした」
「何処の伯爵かは・・・お忍びか」
「はい。ですがノルトハン国王の国王陛下からの謁見招待状をお持ちでした。
書状には王家の魔力が乗っていましたので間違いございません」
「各国を回っているのだな」
「詳細は不明です」
「結界が解かれたな」
「陛下。お待ちください」
「あぁすまん」
「お待たせいたしましたジーナ医術長。
こちらの方は?」
「マッドジョイ・ロ・レンジャー国王陛下」
(え”ぇぇぇぇ。ここでご対面なのぉぉ。
うわぁぁぁ。って、両親の仇なのに全然敵対心が生まれませんねぇぇ。俺って薄情なの?
とりあえず傅いておきましょうか)
「申し訳ございません。マッドジョイ国王陛下。
わたくしはとある国の
「挨拶は良い。もう聞いている。して、メイデスは?」
(なるほどぉ。こう言いう人なのね。アイミーナ姫様はイフィス様の血を色濃く受け継いだのでしょうか。
嫌味を込めちゃお)
「これはこれは。噂に聞きしに勝る、下々へのご対応。
どの国の王侯貴族のお方でも例えわたくしのような一介の近衛であっても自己紹介はさせて頂けておりましたが?」
「すまない。気が動転していた。許してくれないか。
立って良いぞ」
「はい失礼いたします。
まぁお聞きになっているとの事。もう自己紹介は必要無いでしょう。
結論から申し上げますと意識は回復しました
「おぉぉでかしたぁぁ褒美を取らせるぞぉぉ
(なんじゃぁこのおっさんんん。声がでけぇよぉぉ)
「あのっジーナ医術長。陛下を外していただけませんか?
患者が居る場に相応しくない大声です。体に障ります」
「すまない」
「陛下。わたくしが後程ご報告を申し上げます。応接でお待ちください」
「判った」
(さすがにアイミーナ姫様の専属医のジーナさんには従うのですね。
陛下がこうなら他もでしょうねぇ。利用しちゃお)
「出来ればジーナ医術長のみ、お残り下さい。念話ですら体に障ります」
「仰る通りに」
「はっ。失礼いたします」
「どうでしょうか?」
(すげぇぇ。一言で終わったぁぁ)
「お入りください」
「はい」
「ご気分はどう?」
「はい。腰から下が痺れていますが問題は有りません」
「歩けないと?」
「はい。痛みや感覚は有るのですが歩行は無理なようです」
「ララヴール様。完治は?」
「何処かの神経が何かに触れていると推測します。ですが今ここの機器とわたくしの知識では難しいです。
我が国に針を使った施術方が復活致しております。
彼女を連れ帰り、暫く療養生活を送って頂きます。医療費はご心配無く。特殊な例なので研究の検体として施術を行います。
メイデスさんのご了承も頂いております」
「その旨を陛下に」
「時間が経つと変に固まってしまうのはジーナ医術長もご存じのはず。
今の陛下の言動から直ぐに向かわせて頂けるように思えませんが?」
「判りました。わたくしの判断で了承致します。
凡そどの程度?」
「申し上げました通り、特殊な例です。明日に治る可能性もあれば半年。一年と要するかもしれません」
「判りました」
「で、メイデスさんたってのお願いで仲の良い仲間もと。
異国の地です。寂しいでしょうし、不安でも有ると思います。変に気を回すと回復にも影響が出ます。
ご存じのはずです」
「サチ妃殿下の療養でも重視なさっていたリラックス。でしたか。
精神の安定が回復を早くする事例は多いです。
判りました彼女たちがそうですか?」
「後四名が門の向こうで待っています」
「判りました。九名の出国許可を
「ギルドカードで出ます」
「判りました。馬車は?」
「我が国が誇る十人乗り馬車が既に到着していますので、ご心配無く」
「そうですか。で、どちらのお国なのでしょうか?」
「聞いた事があるか判りませんがアキツシマと言う場所です」
「何処にあるのでしょうか?」
「そうですか。やはり何方もご存じないですね。また、機会が有ればお教えいたします」
「それでは困りますが?」
(うぅぅここまでのやり取りを想定していなかったぁぁ。えぇぇい無理無理だぁ)
「あなたは意識を取り戻せなかった。わたくしは出来た。何か不都合でも?」
「いえ」
(うっしゃぁぁ。逃げるっ)
「ポコマイミさん。メイデスさんを抱きかかえ下さい」
「了解」
「ジーナ医術長。お耳を」
「はぁ」
「アイミーナ王女殿下は完治しています。もう心配は要りません。僕の防御もかかっています。
脅したお詫びの金貨百枚を収納に入れました。女神様からです。誰にも内緒。ご自由に。
では、ごきげんよう。転移」
「あぁぁアイファウスト王子殿下ぁぁ
「ポコマイミ。お帰りぃ」
「おうっ。待たせたな。しっかし、でけぇぇ馬車だなぁ。おうっみんな乗っているな」
「メイデスぅぅ。助かったんだねぇぇ
「みんなごめん。心配かけちゃった」
「おうっ。乗るぞ」
「了解」
「ポコマイミ。何処へ行くんだ」
「アキツシマに治療だ。もう少しで歩けるとこまで来てる。ものすげぇぇぇ時間はかかるだろうがな」
「近衛兵の方。メイデスを頼んます」
(あぁぁ早くしないとぉぉジーナ医術長が来ちゃうぅぅ)
「はい。お任せください。離れて下さい」
「メイデスまたなぁぁ「早く良くなれよぉぉ「気を付けて行くのよぉぉ」
「出発。はっ」
「良かったなぁ「ああ笑っていた「こっちの心臓が止まりそうだったぜ」
「ポコマイミのあの言い方って」
「帰ってくる気ねぇんじゃねっ」
「アキツシマって何よ」
「場所だろうよ」
「おい。明日から誰が受付を?」
「ハデネイルとアーシラ。アパシーの三人しかいねぇ」
「それと、無能Aマッド」
「ここのギルドも死んだな」
「俺、南に下るわ。じゃあな」
「俺も行くぜ「私もぉぉ「俺達のパーティーもだな」
「ポコマイミさん。聞こえますか?」
『御者席と話せるのかい?』
「はい。で、付けられています」
『ですよねぇぇ。何か対策は?』
「一時間で海まで行きます。引き離せなければそのまま」
『そのまま?って、一時間で行けるの?馬車だと早くても半日かかるよ』
「戸棚の中にお茶やお菓子の用意があります。ごゆっくりどうぞ」
『ありがてぇぇ』
「あぁしつこいですぅぅ。短距離転移も織り交ぜて追跡されています」
『ありゃ教会とイフィス妃殿下の下部。ホルカイ帝国だね。
しっかしおかしいねぇ』
「ポコマイミさん、何がおかしいのでしょうか」
『ララヴール様がアイファウスト王子殿下と知らないはず。
何で追いかけてきているかって事です』
「そう言えばそうですね」
(ジーナ医術長様が密告ぅぅ?)
『メイデスの原因がマッドジョイにある事は知れ渡っているのは事実。
だが、マッドジョイの弱点を握っても、今更。
解かんねぇなぁ』
「理由も無く追われたら逃げる。動物の心理です。
このまま空に向かいます。落ちませんのでご心配無く」
『えぇぇ崖ぇぇぇぇ『海にぃぃぃ『落ちるぅぅ』
『飛んでる?』
『おぉぉぉ海の上を飛んでんぞぉぉ』
「このまま十キロ沖合まで行って、転移です」
『了解』
(あぁぁ海なのにぃぃ海なのにぃぃ何もできないよぉぉ。でも月明かりが反射して奇麗だなぁぁ)
崖の上から暗い海の空中を月に向かって飛ぶように走る馬車を呆然と見つめる三派閥各二人の六人。
帝国と教会が各男二人。イフィス妃殿下が女性二人。
帝国の一人が。
「はぁぁぁ?」
「馬車が空を走ってるよ?俺疲れてる?」
「寝不足かもな?」
「皇帝に報告?」
「信じちゃ貰えねぇ。逆に首が飛ぶ。俺はなぁぁんも。見てねぇよ」
「帰ろっか?」
「腹減ったぁぁ。おぉぉい。イフィス妃殿下のぉぉ」
「サチ妃殿下のお話しのトナカイが引くサンタクロースの夢見てるわよぉぉ」
「寝不足が祟っているかもぉぉ。煙突の下で待っていなきゃぁ」
「サンタさんはプレゼントも置かずに行ってしまいました。
俺からの労いのプレゼント。飯でも行くかぁぁ」
「「おごってくれるぅぅ?」」
「プレゼントだぁいいぞぉぉ」
「やったぁぁ」「うっしゃぁぁ」
「教会はどうするぅぅ」
「もうよ。なんかあほらしくなってきた。
クリスマスプレゼントとやらの酒は俺が出すぜ」
「あぁ俺も酒代出すぜぇぇ」
「暫く休戦だな」
「帝国は休戦する」
「イフィス妃殿下もきゅうせぇぇん」
「教会も休戦だ。誰が海の上まで追えるかぁぁ
「満場一致で休戦する」
「さんせぇぇ「りょうかいだぁぁ「ぱぁぁぁっといくかぁぁ」
「「「「「「オーケー」」」」」」
「教会さんよぉぉ」
「何でしょう帝国Aさん」
「俺Aなの?まぁいいか。何でここまで追いかけたの?」
「見た事もない豪華な馬車だから、もしかしたらアイファウスト王子殿下が乗っているかも」
「妃殿下の方は情報が有ったのか?」
「なぁぁんも。教会さんと同じ理由。疑わしきは追えっ。これが鉄則。帝国さんも教会さんも同じですよね」
「まぁね「一緒」
「せいの
「「「何も見なかった」」」
「妃殿下のとこは何喰いたい」
「「お肉ぅぅ」」
「「ですよねぇぇ」」
海上で馬車ごと転移したアイファウスト達はそのまま虹の泉に入った。




