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 九死に一生のノネジット家と中央協会の目論見

 ノルトハンの城のノネジットの執務室にノネジット。マウレス。ユーミルナがソファに座り、国の南の守りを誰にするかで難しい顔をしていた。

 ジャックレイから念話を受けたマウレスが。


 「陛下。お妃様。

 ジャックレイ署長から念話です。

 アイファウスト・カミミヤ王子殿下が案件第二十三号指定の尻尾を確実に掴んだ模様です」


 ユーミルナが。


 「確定なの?」


 「王城内の教会を含む王都の教会全ての証拠資料が揃っているそうです。

 他にもあって、キムカスイコム・ポット都長。徴税局。北都教会との繋がりのある証拠書類が目の前にわんさか。

 それの関連でキムカスイコム・ポット都長とホルカイ帝国の南部国防軍指揮官の密約書。

 全く別口で北門入り口のアルーモアギルドでの誘拐事件への関与。

 他にも揃っているそうです」


 「凄いわね。

 どうして今まで尻尾が掴めなかったの。警察の怠慢かしら」


 「そうとも言えます。

 署内に教会側のスパイがいました。三名。既に捕縛して地下牢に。

 三人は署内での通信係。

 全てが筒抜け状態」


 「はぁぁぁ。教会めぇぇ。

 他には」


 「アイファウスト王子殿下の領地に目掛けて千人規模の兵員を集めているそうです」


 「戦争でもする気かぁ」

 「戦争でもおっぱじめる気なの」


 「そして国王陛下とお妃様。アイファル姫様の処刑まで計画をしているそうです」


 「何じゃとぉぉ。アホどもがぁ」

 「はぁぁぁ全くもう。

 あなた」


 「ああ。分かっておる。

 マウレス。

 全ての国境を封鎖。念話も転移もできぬようにしろ」


 「第二十三号指定の計画ですね」


 「そうだ。

 教会も含めて各方面に緊急事態発生に付き国境を閉鎖する。

 詳細は調査中。閉鎖期間は現状無期」


 「テントエリアは?」


 「そうだなぁ。

 今この王城内の状況で、懐にわしらの首を狙う教会も居る。

 上下弦の月作戦への協力者が居ると想定して、帰投させろ」


 「魔法師団に念話を入れます。

 少々お待ちください」


 「またわしらの命を救ってくださった。

 やはりアイファウスト王子殿下には頭が上がらんな」


 「はい。感謝しかありません。そしてようやくです。

 テイア。入って」


 「はい。失礼いたします。

 お呼びでしょうか」


 「侍従長のハウラサは」


 「アイファル姫様のお部屋でお勉強中でございます」


 「アイファルとハウラサをここへ連れ来て」


 「畏まりました。失礼いたします」


 テイアは扉を閉めた。


 「マウレス。

 近衛兵五人を回せ」


 「手配いたしました。もう扉の外で警戒に入りました」


 「それでジャックレイのとこに行ってくれるか」


 「はい。詳細を聞いて来ます」


 「頼んだ」

 「頼みますね」


 「はい。お任せください」




 王都ノルトハン。中央協会の大司教の執務室。

 ソファのテーブルに金貨を縦に並べ数えている大司教。教会の白い衣装に金の装飾をちりばめた衣装をまとう四十前後の男。

 執務机の上にも金貨が無造作に並べられている。

 突然戸が開き。


 「フイッシー・クッサスメル大司教ぉぉぉ


 「何かね。騒がしい」


 「申し訳ございません。帳簿の整理でしたか」


 「構わん。中に入り、戸を閉めろ。申せ」


 「はい。都内各教会の諜報連絡係が泡を吹いて倒れ意識不明。最高位の回復師による回復も効果なし。

 担当諜報員は警察本部担当です」


 「ここもか?」


 「はい。中央。北都。西都。南都。そして王城内教会です」


 「何が起きたか解らんのか?」


 「近くに居た者によれば『俺わぁぁ』と、言う声が聞こえたそうですがその後は『ボォォォン』っと、ものすごい音が聞こえてきたようです。

 各所同じ内容です」


 「通信用の魔石の故障や異常ではなさそうだな」


 「はい。他の者が警察内の者に返信を試みているようですが全く反応が無いようです」


 「連絡係の方は後で聞く。

 それでアイファウスト王子殿下の行方は?」


 「現在に至るまで警察署内を含め連絡は有りません」


 「そうか。東の方は」


 「教会の者が昨日ようやく東門に到着。

 東門近辺を捜索中ですがいまだ不明。

 全員が顔見知りの上、門の出入りも無いため一発で怪しまれたそうで捜索は難航。

 東の村は急速に発展。廃村状態だったエルドラット村に巨大な三本屋根の教会が出来ているそうです」


 「情報は正しかったな。詳細は?」


 「東の国境砦とほぼ同じ高さに接合した高い城壁約五メートル。全周囲およそ六キロ。ほぼ円と考えると直径でおよそ二キロ。

 高い城壁と中に入れない結界のようなものが在り、近付くことすら出来ず詳細は不明」


 「そんな大規模工事、国王の指示は何時有った」


 「ありません。資金の動きもありません。大規模工事が有った痕跡も無いとの事。何より東の村の農夫の住民が十年前と、ほぼ変わっていません」


 「引き継続き捜索を。こっちの詳細も調べよ」


 「はい。失礼いたします」




 〚大司教様。副司教のヨガブットにございます〛


 「入れ」


 教会の白い衣装をまとう初老の男。


 「ありがとうございます」


 「かけてくれ」


 「はい。こちらは例の」


 「ああ。明日、愚民どもに配る、お前が発案した偽金貨だ」


 「いかがですか出来栄えは」


 「金貨を見た事の無い冒険者や愚民や店の売り子達では見分けがつかんだろうな。

 本物の方が偽物と見間違うほどだ」


 「南都教会で増産いたしております」


 「こちらが正規の金貨になるかもな」


 「そこまでは


 「冗談だ」


 「で、あちらは本物」


 「ああ」


 「昨日の貴族や豪商からの献金ですか?」


 「あぁ。一気に半分以下になった」


 「城内や都内が騒がしいですからな」


 「何か判ったか?」


 「どうもエマルサーラ商会のハルサーラ殿がかなりの勢いで動き回っておられるようです。

 今朝決まりましたが王都の商工協会の議会長の席に座ったようです。

 謁見の間でのエルファサ女神様のお言葉でエマルサーラ商会へのエコ贔屓は確実だと確信いたしました。

 時を同じくして副議会長のタテヤリーノ殿が捕縛されました。どちらかの伯爵の奥方様を寝取ったようですな」


 「しらじらしい。

 で、またハルサーラ。十年前に生かしておくから厄介ごとになるのだ。

 せっかくこちらで・・・まぁいい。

 幾らエコ贔屓だとしてもだ。ハルサーラはなぜそこまで動くようなことになっている。

 エルファサ女神様が直接手引きしているのか?

 それとも例の大司祭になったことが公表されたのか?」


 「さぁ、聞き及んではおりません。

 噴水広場が稼働したことは?」


 「聞いている。娘の経営するベル・ユイミナに女神様がご降臨されたとか。眉唾物だが」


 「それでハルサーラ殿の身近に、わたくしの配下を忍ばせようとしておりますが偶然のようにピンポイントで排除。

 それも有りまして少々調べましたら例の赤の増血剤のポーションのカラクリが見破られたようです


 「なんだとぉ」


 「ヤブヤのヤブツーツキ君が逮捕されましたからな。

 後は芋づる式に」


 「くそバカ息子が。

 まぁ直ぐにどうのこうのなる訳ではないだろう。引き続き生産は続けろ」


 「畏まりました。

 そう言った経緯で未だ接触には至っておりません。

 ギルド長も同じですな」


 「何か仕掛けでも?」


 「全く持って理解不能」


 「時間が無いと思うか?」


 「上下弦の月作戦はまだ先。

 本物の教会を含めたガウレシア・ト・シャウトリーゼ辺境伯爵領を手中に収めれば二国も何も言えますまい。

 こちらの事は先ずは良しとしましょう。

 教会の方は先程の騒ぎも鑑みますと、大司祭を仰せつかったハルサーラ殿の動きからすれば、本物と称される教会の発表が差し迫っているのは事実でしょう。

 ともすれば明日とかにも。

 今、ハルサーラ殿の近辺が厳重なのは。と、推測できます。

 謁見の間の情報を聞く限り、無理を推して急襲すれば今までの苦労が水の泡に帰するでしょうな」


 「準備の方は?」


 「予定通りに動いております。指揮系統の整備に最低あと一日は必要かと」


 「一気に方を付ける。向こうさえ押さえてしまえばハルサーラを傀儡にでも何にでも出来る。

 今より、閉門し愚民どもを排除。

 ジャクリード公爵のアホ息子に近衛兵を動かせと指令を出せ。国王は動かすなと


 「地下牢に入れますか?」


 「いや。まだ早い。

 今回のエルファサ女神様の降臨でノネジットに付いた貴族も多い。

 反国王派を黙らせるためにも、東を急襲する明日でいいだろう。

 タイミングはわたしが指示を出す」


 「畏まりました」


 「それで元冒険者全員を裏庭に集め明日午後から順次転移させろ。

 他の事は向こうでやればよい」


 「畏まりました。人員集めは明朝まで掛かります。ご承知おきください」


 「構わん。

 キューレット王国の真偽教会の方は」


 「同業者ですが?」


 「同業者にするな。こっちの方が本物だ」


 「城内大司祭のラマパーカ殿はさておき


 「あいつがトップではないのか」


 「今までの調べでは頭を牛耳っては居ないようです。大司祭のリコパリンが中心人物のようですな。

 派閥の大きさは大陸最大規模になりつつあります」


 「ここを凌ぐのか」


 「はい。現在で貴族も含め信者と称る者は二千を超えております。

 何を言ってもアバター様のおひざ元。冒険者をお辞めになったからこそ、囲い込みに成功すれば敵無しでございます」


 「そう言う事か」


 「アバター様は現在行方知れず。

 総動員をかけて血眼で探しているようです。その警戒もあってお辞めになったやも知れませんな」


 「そう言えばレマンはどうした。

 ここ数年目撃情報が無いだろう」


 「レマン君もそろそろ十五歳。

 独り立ちをなさったか、お父上とお母上の元に帰ったかもしれません」


 「なるほどな。

 アバターもお役御免で辞めたのかもな」


 「そうですなぁ。

 あのレマン君をお育てになった事は周知の事実。

 そんなアバター様ですから信者が安心できますし、神とも崇められるアバター様がいらっしゃれば教会としての権威も上がります」


 「こちらの今回の件は」


 「真教会の件すら漏れ出てはおりません」


 「ひと先ずは様子見か」


 「はい。今回真教会をこちらの手中に収めれば大逆転いたします事は火を見るよりも明らか。

 リコパリン殿の罷免すらあり得ます。

 必ずや成功させる必要があります」


 「当然だ。リコパリンの方はそれぐらいか」


 「脅威とはならないと思いますが、トウショウ王国の教会から密偵でキャレット君が。

 ホルカイ帝国の方から密偵としてサウリーナ君と妹のイルナーナ君がキューレット王国に入ったようです。

 勿論、アイファウスト王子殿下を探して」


 「どちらの国もここに居るとこを知らぬと言う事か」


 「まだ情報を得てはいないようです。

 リコパリン殿の方も三人の動向を注視しているようです。

 そしてつい先ほどですが、国境が封鎖されました」


 「何だと。

 理由は」


 「何かの調査に入ったようで、国境を封鎖するほどの騒ぎは先ほどの通信係の内容のみ。

 他には情報が入ってきておりません」


 「何某かが漏れたか」


 「判りかねます。

 ですが、明日の出立とするならばその件はあまり考えなくてもよいのではないでしょうか」


 「早急に事を進める」


 「畏まりました。

 後こちらを」


 「これは?」


 「明日、元冒険者どもを鼓舞する演説内容です。

 強弱を付け、時には力強く拳を振り、時には微笑みかけ、涙も誘う。

 耳と心を奪い、笑いを誘い、唯一無二の存在であると思い込ませる。

 後で聞きに参ります。反復練習を」


 「判った」


 「では、失礼いたします」

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