恨みを買った三人を巻き込む案件第二十三号指定
木こりの頭に向かって光の粒が集まって来た。
「お帰りぃぃ。どうだった。これがそうなの。なるほどぉ。へぇそうなんだぁぁ。ありがとう。みんなお食事をどうぞぉぉ。美味しい?良かったぁぁ」
「何か手掛かりが?」
「少しお待ちくださいねぇ」
(なるほどねぇぇ。教会にぐっさりじゃぁぁんもぉぉ。僕の名前を何度も勝手に使わないで欲しいなぁ。
って、えぇぇ?王様になんか成りませんよぉ。いやこれ神様だよぉ。嫌ですぅ。
はぁぁなんてことをもぉ。強硬手段で来るのかぁ。止めなさいよもぉ。
で。えへっへっへ。エウマイアーギルド長様もジャックレイ署長様もマウレス宰相様もガッツリ関係していらっしゃる。
僕の楽しい一人旅の夢を儚く散らせようとした報いを受けて頂きますよぉ。最低二日は。いえ、後処理まで考えると三日は眠れませんね。
ふっふっふ
「木こり様。なぁぁんか悪い顔をしていらっしゃいますよ」
(えっ?顔に出てた?やばいやばい)
「ちょぉぉっと長期戦になりそうです。ハルサーラ様にご相談です。妖精さん達の件は内緒ですよ」
「判りました。誰も信じませんよ。調理パン。ありがとうございました。お茶も美味しかったです。
盾と矛の前に行きますよ。立ってください」
「えっ?ここで?向こうの人の往来は?」
「転移」
「あっ」
盾と矛の往来を避けた転移場所で待っていたハルサーラ。スカッシュ。アルミスは鬼形相で向かえ。
「「「木こり様っ。何をしているんですかっ。正座っ」」」
「えっ?えぇぇぇ?」
「「「お母様に言い付けます」」」
「あんぎゃぁぁぁ」
往来の隅で正座でしょぼくれる木こり君。
ガルカク兄妹を盾と矛に残し、木こり達はギルド長と共に警察本部の地下牢にいた。
「木こり君。何故ここ?」
「ジャックレイ署長様は入ったこと有ります?」
「一応。内部確認のため。さすがにお茶は飲んだこと無いです。
しかし、カルッテ警部以外を入り口から人払いで施錠せずとも」
「ジャックレイ署長は今」
「警視正です。カルッテ警部はわたくしの補佐」
「判りました。カルッテ警部にお願いが有るのですが僕から直接お願いしてもいいでしょうか?」
「どうぞ」
「すみません。しっです」
そう言ってカルッテ警部にメモを見せた。
カルッテもメモを見せた。
【どなたか翻訳をお願いいたします】
(なんでよぉぉ。ここの文字ですよぉ)
ハルサーラが手を挙げ、サックと翻訳して。
【署長の襟首に念話。所謂盗聴の魔石が付いています。ここへ来る前に仕掛けられたようです】
「判りました」
木こりはもう一枚ハルサーラに渡した。
【念話で構いません。外のお二人を使って、このメモの三人を捕縛。もしくは処刑してください。
罪状は盗聴による署内の情報漏洩。証拠は僕が十分と言う程持っています。
捕縛できた場合は手枷をしてここへ】
「えっ?はい。判りました」
「カルッテ警部。連れて来ました。三人です」
「入っていいぞ」
「はい。入れ」
(来ましたねぇ。結界)
「向かいの牢に頼む」
「はい。施錠は」
「しなくていい」
「はい。では。ここから出るぞ」
「「「「了解」」」」」
捕縛され、手枷足枷で床に座る一人の男が牢の通路を挟んで。
「ジャックレイ署長。これは不当な逮捕では?」
木こりが。
「セルファンさん」
「はい」
セルファンは床に座り手足に枷を着けられた男三人の胸ポケットから魔石を出し、それを一人づつの片耳に突っ込んだ。
「どうぞ」
男三人以外が耳を押さえた。
木こりは署長の襟首にあった魔石を持って口の前で。
(結界を解除っと。魔石の経路を辿ってぇぇ繋がった。この石の限界までの魔力を声に乗せてぇぇ)
「すぅぅぅ。俺わぁぁ一人旅に行くんだぁぁ
魔力の乗った、木こりのでかい声は牢屋中に響き渡りハウリング効果もあって。
「ぎゃぁぁ「ぎゃぁぁ「ぎゃぁぁ」
アイファウストのでっかい声とその悲鳴は中央の教会の事務所や王城の教会事務所でも響き渡り数名が泡を吹いて倒れた。
「よっしゃぁぁ。逆探知成功。
地図で示します」
「木こり様。少々お待ちください。耳が」
「あぁはい。ごめんなさい。ヒール。いかがですか」
「治りました」
ジャックレイ署長が呆れるように。
「はぁぁヒールねぇぇ」
「眠気が吹っ飛びました。ありがとうございます。フジミヤ様。あっ」
「もう構いませんよ
「ここに至るまでの会話はよろしかったのですか?」
「報告に至る内容ではありませんでしたハルサーラ様。事実、報告された痕跡は有りませんのでご心配無く。
で、地図で言うとこの五か所です」
「四か所の教会と王城?」
「北都教会の件は筒抜けでした」
「あの三人は諜報部の連絡員だ。だだ漏れで尻尾が掴めなかったのか」
「はい。これで盗聴されていた事実は隠せません。
ちなみにあの三人は下っ端の下っ端。バレたら知らぬ存ぜぬで、さようならです」
「でも、これだけでは踏み込む理由になりませんよ」
アイファウストが書類を出しながら。
「ハルサーラ様。いえ。真エルファサ女神様教会の大司祭ハルサーラ様。
こちらをご覧ください」
「これは。えっ?はぁぁなんてことを。署長」
「ありがとうございます・・・・・はぁぁバカな事を」
「「お母様?」」
「まず初めにあなた方も聞いているホルカイ帝国とキューレット王国の密約。上下弦の月作戦。
これを教会も掴んでいたようです。
真っ二つにされてからでは教会と言えど発言力が無くなり、お金の循環も悪くなる。
後手に回らないように少なくともガウレシア・ト・シャウトリーゼ辺境伯爵領ぐらいは押さえておきたい。
そう考えているようです。
それで、二点目以降は端的に言うと武器を教会は正規ルートでは購入できません。盾と矛を隠れ蓑に使ってほぼ無料で武器を購入。
王城内で得たエルファサ女神様のお言葉を書面で回付。
三日後に東門の一つ手前のヘッルズ村の教会へ順次転移で向かい、東門の教会を制圧して乗っ取る。
人員は元冒険者も含め凡そ千人。この時点でほぼ、戦争です。
既に偵察要員が向こうに居るようです
孤児院が十五歳以下を放置又は危害を加えると、さすがに警察沙汰。だから改築を理由に手放した」
「「繋がったぁぁ」」
「スカッシュ。アルミス。声が響いていますよ。
もう少しおしとやかに」
「「申し訳ございません」」
スカッシュが。
「ああ。でも、盾と矛や周辺の他のお店の話しだと三か月ぐらい前から本格的に取集に入っていたようだけど」
「今言った計画の前段階が有るの。
極端に言うとノルトハン王国を完全に裏から武力的に支配し、アイファウスト王子殿下の発見、懐柔でノネジット・ファウス・ノルトハン国王一家を女神様を冒涜した罪をでっちあげ処刑。
神聖アイファウスト皇国を誕生させ、今の大司教とやらがトップの教皇とやらになってアイファウスト王子殿下は神様としてお飾り。
これの準備に半年以上前から着々と進めていた。
十五歳の誕生日を契機に表舞台に出てくると踏んでいたようよ。
で、予想より早く、本当に出てて来ちゃった。それも東に本物の教会を建てて。
これが世間や各国の教会に知れ渡る前に阻止したい。慌てて動きが活発になった。
ところが歩けば棒に当たる木こり様に尻尾を掴まれた。
(僕は犬ですか?そうですね犬です。わん)
で、素晴らしいお声の宣戦布告宣言で脳が揺さぶられて文字通りあのように泡を吹いた。
こんな感じかしらね」
「何人居ても勝てる訳ないのに」
「エルファサ女神様に敵意むき出しです。
でもぉぉあれ?お母様のお話しですと警察やギルドはあまり関係してきませんよね。
武器や物資の購入ぐらい?」
「ジャックレイ署長様が呼ばれたのはその物資の購入だけでも十分なのだけれど、この案件の前段階で北都教会は国の案件第二十三号指定の事件としてユーミルナ王妃殿下がご担当なの」
「はぁぁジャックレイ署長様。連日連夜のご公務。心中お察し申し上げます」
「いやいやスカッシュお嬢様。これも治安維持のため。職務を全う致しますよ」
「目の下のクマが『一日開けて欲しかったぁぁ』と、呟ていますよ」
アルミスも哀れむように。
「第二次ナーガ橋の件もありましたものねぇ」
「ヒールの効果があっという間に切れる激務。少し寝たい」
ジャックレイは木こりを見たが、木こりは目線を逸らしながら。
「うっうん。エウマイアーギルド長は例の教会職員のなりすまし偽造ギルドカード。
今回の件でその輩が暗躍しているのは確実。
ギルド長権限でおおよその位置は特定できる。もう、していらっしゃるはず。
ただ、ギルドの威信に掛けて『実わぁぁ』と、言って公には探せない。
今回の件を利用し一掃。
教会が壊滅出来ればここの人員とわずかな人がお墓まで持っていけば世に出る事は無い。
恐らく修正したとご連絡があったのでは?」
「はい。もう修正頂きました。でもね。セルファンの方もあったでしょ。あぁぁ」
「エウマイアーギルド長。あれは誰も触ることが出来ない。まさか
「ジャックレイ署長。神の思し召しですよ」
「木こり君。もしかして、生きていらっしゃる?」
「ジャックレイ署長様。カルッテ警部様。しぃぃです。死んじゃいますよ」
「「上?」」
「「神様?」」
「木こり様?」
「セルファンさん。僕が十年間行方不明だった張本人です。黙っててごめんないさい」
「あぁぁあおあれおぉぉいぃぃいぃもうとがぁぁだきついたぁぁ。しょちょぉぉ教えてくれればぁぁ
「わりなぁ。忘れてたよ。てへっ」
「きしょくわるぅぅ」
「カルッテ酷くない?」
「あ”ぁぁアイファウスト王子殿下様ぁぁぁ不敬をぉぉ
「ハルサーラ様。お願いします」
「セルファン。落ち着きなさい。そこに座っていなさい」
「ひゃいひゃぁぁ
「で、あちらに大挙して行かれると非常に厄介です。人質が沢山います。森に逃げ込まれても厄介。
ここで潰します」
「今のでバレたのでは?」
「スカッシュさん。今頃慌てていますよぉぉ。隠す気も無いほどにぃぃ」
「我々警察は?」「ギルドは?」
「先ずはこちらの教会作戦計画書を熟読してください。書き写しは出来ません」
「「了解」」
「僕達は一旦東門に戻りスパイ探しをします。五人ですから直ぐです。僕のスキルを使えば」
「この書は?」
「熟読したらセルファンさんに預けて下さい。
僕が指示を出すまで何も動かないで下さい。向こうも動けませんから」
「セルファンは?」
「転移でメルスちゃんの居る
「宿の名前は【虹の泉】に改名です」
「そちらへ」
「りょ了解で、いいですか?」
「セルファン。この事は極秘案件。口外すると燃えるわよ。メルスちゃんと一緒に」
「は はいっ。本物の王子様に助けられちゃったぁぁ」
「良かったわね。それで、事実を知る前までの対応よ」
「了解」
「で、木こり君よぉ。徴税局の方は?」
「はい。北都教会のスパイの報告書をコピー取って来ました。
ジャックレイ署長様。どうぞ」
「はぁぁもう許して」
「署長ぉぉ?えぇぇぇぇキムカスイコム・ポット都長様とホルカイ帝国の南部国防軍指揮官の密約書じゃないですかぁぁ」
「カルッテ警部。声がでかい」
「んっ」
「助かりましたぁぁ。ギルドは関わり合いが有りませんでしたねぇ。木こり君これは?・・・えぇぇぇ?」
「エウマイアーギルド長様。楽しい読み物が頂けましたか?」
「カルッテ警部殿どうぞ」
「はぁぁぁ。楽しそうですね。
北門入り口のアルーモアギルドのギルド長ファンザテットのご親戚があちらと通通。キムカスイコム・ポット都長様を含め関連を要調査。
関わっていないはずが無いですよねぇぇ。
で、こっちがアルーモアギルドの冒険者が北門テントエリアの婦女子誘拐の犯人もしくは幇助。
あぁあ。ジャックレイ署長まで絡まっちゃった」
「全く何をやらかしているんでしょうかねぇ」
「何でこうも次から次へと。なぁカルッテ警部」
「署長?巻き込まないで下さいよ。私は遠いとこが嫌い」
「俺は高い所が嫌い。気が合うじゃねぇかぁぁ」
「いぃぃやぁぁ」
「で、先ずは北都教会からです。
因みにキムカスイコム・ポット都長様。アルーモアギルドの方は教会に一切関りがございませんので、そちらでお願いいたします」
「「「あ”ぁぁぁぁぁマウレス宰相様ぁぁ」」」
「頑張って下さいね」
「で、木こり君。あの三人はどうしたらいいの?」
「ああそうでしたね。あの三人は明日の夕方には魔法の全てを失って、目覚めると思います。その後は署長にお任せします。
教会の方のお方は死んじゃうでしょうね」
「声だけでか?」
「声に振動系の魔法を乗せて有ります。そうですねぇ、頭の中をぶん殴られたようになっています。
こちらの三人には少しだけ回復系の魔法を掛けていました。
教会のお方はまともに喰らっていますのでもしかしたら、もうお亡くなりになっているかもしれませんね」
「聞きたい事が山ほどあったから助かった」
「ではハルサーラ様行きましょう」
「スカッシュ。アルミス。行きますよ。一旦向こうで打ち合わせします」
「「はい」」
「では行きますね。転移」




