アイファウスト中毒のマウレス
そしてマウレスが。
「いやぁぁあそこまで頑固とは思いませんでしたぁぁ。ミスリル級ですねぇぇ。
例え全国国民の為と言え傲慢な処刑を不問にし、子供を縛り上げるのは心が痛みました。ひっじょぉぉに疲れましたぁ。
これも放置した罰なのでしょうか。
陛下。ご苦労様でした」
「わしも疲れた。
これで反国王派のトップが消えた。
後はどうなる」
「反国王派の名簿は出来ております。
明日、ジャクリード公爵をいきなり再登城させ反国王派をジャクリード公爵の城内の別邸に集め、全てが露見していることを告げさせます。
重職に就いている者もおりますので改心を促します。
エルファサ女神様の誓約書にサインできたものは一年間の執行猶予期間内にこちらが求める功績を残すこと。
一年後の検証で罪状を言い渡します。
サイン出来ない者は国王毒殺未遂で国家反逆罪。三親等まで処刑です。
いかがでしょうか」
「明日、その席にわしも立ち会う」
「畏まりました」
「はぁぁぁ。本当に疲れた。
で、食事は」
「今から一時間です。お待ちかねですよきっと。ドレスをお召しになり本を持って」
「そうか。楽しみだな。
それで私の愛娘を傷付けたエウリマデ・リン・ゼウガリー子爵は」
「現在、家族全員を地下牢に収監。
王都の屋敷他、領地の屋敷や手持ちの土地全てに近衛兵と国軍を派遣。調査の途中経過で既に国家反逆罪規模の罪状が確定しております。
やはりと言っては何ですが、無辜の女性も囚われておりました」
「全てを詳らかにしてわしが断ずる」
「御意」
「クソの騎士達の方は」
「処刑は確定しておりますが、どうも城の教会と繋がっているようで現在極秘に調査中。
城内への噂として遠征中にしております。
教会側も信じ切っているようですね。
それで処刑の方は今しばらく待っていただきます」
「マーガレットお嬢様の方は」
「サプタミン・ビーシ・チョザイキョク侯爵の長女のリノシャイラ嬢がベル・ユイミナにたまたま居合わせておりました。
オレアシン・タミン・バレシアン子爵の長女。スタッドレース嬢の傍若無人振りに対し、協力をしてくれたお陰で事なきを得ております。
その周辺に集まった貴族や豪商の十数名の我が儘お嬢達も逃げ帰ったと、報告が来ております」
「スタッドレース嬢かぁ。
色々報告は来ておったが、本当にどうしようもない娘だなぁ。
リノシャイラ嬢やマーガレットお嬢様。ユイミナ殿には怪我は無いのだな」
「はい」
「マーガレットお嬢様こと、スカッシュ嬢やユイミナ殿に何か有れば大事になるからな。
それこそわしらが燃える。
その場にサクラ様としていらしたのであろう」
「はい。いらっしゃいました。
一部始終をご覧になっておいでです」
「まぁ貴族の娘として地位の有るリノシャイラ嬢のお陰で事なきを得てよかった。
そのリノシャイラ嬢をパーティーの席で何度も見ておったが、お淑やかで美しく所作言動も他のお嬢達の鑑と見ておった。
学校の成績も優秀で才能も有ると聞き及んでおる。
それでな。マウレス。
実はな。わしとユーミルナはそのリノシャイラ嬢とお主がくっ付いてはどうかと思っておるのだぞ」
(えぇぇぇぇ?)
「そ それでですね。ご ご報告がございます。
ユーミルナ王妃に提出されたサプタミン・ビーシ・チョザイキョク侯爵と長女のリノシャイラ嬢の調査結果を精査。
その結果オレアシン・タミン・バレシアン子爵がヨルデイット・ト・ジャグボ伯爵の妻とナーガ橋に通じていました。深い間柄でも有ったようです。
先程も申しました通り、妻は逃走中。
調査報告書を基に国軍と警察で関係機関を捜査中。
そのお陰で捜査対象が絞れ、賊仲間の逃走を阻止でき捜査時間が大幅に短縮されております。
事前の準備が完璧にできましたので周辺の民や警察側に被害は出ませんでした。
またしてもわたくしはダメダメでした」
「そうか。サプタミン・ビーシ・チョザイキョク侯爵とリノシャイラ嬢に感謝せねばならんな。
抗争は消えたのだな」
「はい。もうご心配には及びません。
ポートハウスで捕縛したセルファンの情報も大いに役立ち、絶大でした。
今回の件で被害ゼロの立役者とも言えます。
こちらがその資料です」
「ふむ。
これは凄いな。
教会へもギルドへも協力をしたと言う事か」
「はい。
さすがはアイファウスト・カミミヤ王子殿下が選んだ証言者です。
感服せざるを得ません」
「セルファンの処遇は」
「現状は国家奴隷。行先は検討中。
妹のメルスは施設送りとなっております」
「セルファンの方を司法取引成立で刑を軽減。
国家奴隷で無い方で監視役が付く方向で考えて欲しい。
メルスの方は本人の思う方向で可能な限りセルファンと離さない方法で頼む」
「畏まりました。
担当裁判官に申し伝えます」
「それとサプタミン・ビーシ・チョザイキョク侯爵二人に何か褒章を授けることを考えておいてくれるか」
「御意」
「それで、何でもかんでも自分で解決しようと思わなくてもいいぞ。
十二分に君は宰相の務めを果たしておる。
そして宰相の身分で自由に貴族連中を使えばいいのだよ。
それをアイファウスト・カミミヤ神官長。いや。アイファウスト・カミミヤ王子殿下が教えてくださったのだよ」
「宰相の身分に関しての事は何も伺っておりませんが?」
「何を言っておる。
マウレス・ジルミナ宰相。
わしもユーミルナも貴君に絶大な信用と信頼を以って、貴君の才能にノルトハン王国の民。ユーミルナとアイファルの命を預けておるのだぞ。
たった今。アイファウスト・カミミヤ王子殿下のお話しを受けて職務を全うしたではないか。
この国家の。この大陸の存亡を賭けて、今わしの目の前で指示を出したではないか。公爵に」
「あぁぁぁ」
(そうでしたぁぁ。陛下から公爵の件を一任され、全てを解決。そしてお褒めのお言葉。
アイファウスト王子殿下ぁぁ痺れますぅぅとろけるぅぅ。この快感は中毒ですぅぅ。もう離れませんよぉぉ
「では、食事に行ってくる」
(あっ)
「はい。その後、南を誰にするかを決める公爵派の残り三人ですからね」
「寝る。任せた。さらばだ」
「あぁぁダメですよぉぉ」
(やっぱり今夜も眠れないぃぃ)
マウレスが床に手を付いて伏せた。




