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 親族にツケが回り、屈服するジャクリード

 「止めてくれ。頼む。止めてくれないか」


 「わたくしは説得いたしました。

 国王の座に座りたいだけ。一族郎党の処刑かその矜持かを。

 君たちのお爺ちゃんは自己満足を得るためにあなた方のお父さんやお母さん。孫の命を捨てました。

 処刑台に連れて行け」


 「はっ」


 「待ってくれぇぇ。頼む。命だけは取らないでくれ」


 「誰の」


 「孫たち。娘達の。わしは


 「何処までバカなのですか?一族郎党と申し上げています。

 そんなに国王の座は大事か?そんなに国のトップになりたいのか?それは捨てられない矜持なのか。成れないのなら死を選ぶほどなのか?そんなに人に頭を下げるのは嫌な事なのか?

 三歳の時のアイファル姫様を殺してまで守りたい矜持なのか?


 「嘘。あなた嘘よね「お爺ちゃん?「お父様。本当にそうなの「おやじうちの娘と同い年だぞ。それを殺そうと」

 「お爺ちゃんバカなの?」


 「あなた方の処刑は決まっています。平和な生活をたった一つのバカな矜持の為に失いました。

 それは玉座に座って、目上がいない存在になる為だけ。

 連れて行きなさい」


 「宰相閣下」


 「いいですよ」


 「殴ってもいいですか」


 「どうせ死ぬ身です。縄をほどいてあげなさい」


 「「「「はい」」」」


 「どうぞ」


 「バカ野郎がぁぁ「死んで。父さんじゃないお前なんか死ね「おじいちゃのバカバカバカバカ

 「母上。学校わぁぁ「もう行かなくていいのよ」「シャイちゃんわぁぁ「もう会えないわ。ごめんね。ごめん な さいね」


 「すまん。みなすまん。わしのせいだ


 「遅い。死んで俺達に詫びろ。先に女神様の所で待っている。覚えてやがれよバカ野郎が」


 「マウレス宰相様。この通りだ」


 ジャクリードは手枷のままその場に土下座をした。

 それをマウレスは見下ろし。


 「それはどういう意味なのですか」


 「従う」


 「何に」


 「先ほどマウレス宰相が言ったことに。

 わしの・・私が行った蛮行に謝罪をいたします」


 「床に頭を付けろ。貴様の謝罪はそれが謝罪と民に言っていた」


 「こうか。うぐっ」


 「貴様もこうして民の頭を踏んでいたな。どうだ気分は。

 いいか。よぉぉく覚えておけ。王族や我々貴族は国民に養ってもらっているのだ。畑一つ耕せない者が威張るな。

 貴族の身分を剥奪されたら何も出来ないだろう。

 銅貨一枚も無く森に投げ出され生きて行く自信があるか?毒草と見分けがつくか?飲める水はどこに?住む家はどう建てる?

 その子らを守りながら食べ物を探し、着る物、履く物を与えられるか?ご子息どうだ」


 「いえ。自信が有りません」


 「民達や農民はそうして生きているんだぞ。そうして子供を育てているんだ。そうやってやりくりしながら税金を納めているんだぞ。

 それを守る使命を帯びているのが貴族だ。民の上に立っているのではない。民に寄り添うのが貴族だ。そのために税金を頂いているのだ。

 むしり取り、贅の限りを尽くすために国は称号を与え、手当てを出しているのでは無い。

 貴族のなすべきこと。貴族の在り方を履き違えるな」


 「はい」


 「今後は学校の教育方針と叙任内容を変える。

 一年間で陛下が認める功績が無ければ降爵、もしくは剥奪。最悪奴隷となる。

 ご子息が嫡男となるだろう。よく覚えておくように」


 「はい」


 「ジャクリード。国民に対し、謝罪の言葉は?」


 「も もうし わけ ございませんでした」


 「陛下」


 「良きに計らえ」


 「はっ」


 「ご家族にも言っておく。ご子息。夕べは何時間寝た」


 「七時間ほどです」


 「都内の騒乱で陛下は一時間だ。わたくしは寝ていない。貴族の成人とは良いご身分だな。

 家族を地下牢へ」


 「はい」




 「ソファに座れ」


 「はい」


 ジャクリードのおでこは擦れて赤くなっていた。


 「わたくしの部下になる決心はついたか」


 「はい」


 「ノルトハン国王エルファサ女神様の誓約書にサインしろ。それで家族は解放する」


 「判りました。ですが本当に処刑はしませんか?」


 「しない。しかし、少しでも妙な動きをすれば即刻行う。そこに明記している」


 「サインいたしました」


 「これで、公爵の地位を残したまま、わたくしの忠実な部下になる。

 ノネジット陛下に忠心を改めて誓え。いいな」


 「はい。

 ノネジット・ファウス・ノルトハン国王陛下。わたくしジャクリード・レ・イザルッシュは改めて心より忠心を捧げ国に民に尽くす所存でございます。

 改めて先の件を心より謝罪し、処罰を受ける所存です」


 「精神誠意を以って国に尽くせえ。裏切りは許さん。

 直っていいぞ」


 「はい」


 「おじぃぃちゃぁぁぁ「あなたぁぁ「とうさぁぁ「お父様ぁぁ」


 「お前達


 「兵隊さんがここで待っていなさいって。宰相様にあやまったらきっと許してくれるって言ってた。

 宰相様。おじいちゃんがごめんなさい。私も謝る。ごめんなさい」


 「はいいいですよ。痛くなかった?」


 「痛かった。でも、あのお姉さんがなおしてくれた。ありがとう。

 で、もうがっこういってもいいの?」


 「明日から学校だよ。頑張るんだよ。でも今日の事はずぅぅっと内緒だよ」


 「判ったぁぁ。母上。いいって」


 「よかったわね。よかったわね」


 「父上。ちゃんと罪を償えよ」


 「あぁあぁ皆を頼むぞ」


 「兄貴はダメらしいぞ。近衛を切った」


 「そうか」


 「皆さん。秘匿できなければ死にます。

 お子さんにも良く言い聞かせてください。いいですね」


 「はい」


 「屋敷に送ります。控室でお待ちください」


 「はい」


 「宰相様。おやすみなさい。ありがとう」


 「はい。おやすみ」




 「ここまでの事はしたくなかったんですよ。あんな可愛い子らを縛り上げさせるなんて。一生怨みますよ。

 もっと早くサインしてくれればいいもを」


 「申し訳ございません。自分でも何故あそこまで意地を張ったのか判りません」


 「返り咲く一縷の望みでも見出そうとしたのではないですか」


 「は   い」


 「バカな事を。

 家族を人質に取られていても考えますか。

 まぁそれも有るでしょうが、長年、王家に携わった血です。簡単な事です。頭は下げるものではない。反りかえるものだと」


 「そうであったかもしれません」


 「それでですね。あなたには大任をお任せします。国家事業です」


 「わたしに?」


 「はい。確認ですが北の海側。砦辺りが元の領地と聞いておりますが間違いありませんか?」


 「はい。公爵になる前に二年程。侯爵で辺境の地でしたね」


 「そこを改めて治めて頂きます。

 目的は劣化した城壁と領内の再建。ホルカイ帝国がお嫌いなあなたなら意味は解りますよね」


 「動く可能性が出て来た?」


 「そこも含め調べて頂きます。

 あそこの現領主は処刑されています。そのまま中の者は使えますのでお知り合いも多いかと。

 左遷ではありません。国家の地盤固めの工事と言っていいですよ。

 実質は、言わば労働奴隷です。判りますね」


 「判っております。

 それで予算は?」


 「現地に入り、概算で要求してください。わたくしの部下三名も同行させます。

 ご家族からは今の次男と男性ばかりを四名。それとあなたの奥様のみ。

 他の方は申し訳ございませんが王都を出る事無く人質とさせていただきます。

 エルファサ女神様の誓約書にサインをしたことをお忘れなく。

 出発は明後日の朝。転移が使えるならどうぞ。

 こちらがあなた方の処遇と極秘中の極秘の国家事業内容。お渡しします。

 次男には見せ現場の責任者になさい。良い勉強になるはずです。

 入れ」


 「はい」


 「手枷を」


 「はい。外します。回復魔法。おでこの方にも致します。ご気分はいかがですか?」


 「あぁ。ありがとうございます」


 「こちらは終わりましたよ」


 「ご家族がお待ちです。行きましょう」


 「ノネジット陛下。マウレス宰相。身を粉にして働きます事をここに誓います。

 ただの傲慢で奪った尊い命に謝罪し償い、国民に五万枚を返済できるように」


 「頑張ってくれ。良い、報告を待っておるよ」


 「はっ。失礼いたします」


 ジャクリードと近衛兵が扉から出ていき、ノネジットとマウレスの二人になって。


 「「はぁぁぁ」」


 深い溜息をついた。

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