新装開店 ベル・ユイミナ
「さぁみなさん、覚えましたか。わたくしがフォローに入ります。
今日新装開店です。
背後の貴族は居なくなりました。問題は有りませんよ。
心機一転で始めましょう。
もうすぐ、最初のお客様の登場です。
入り口に行きますよ」
「「「「はい」」」」
ベル・ユイミナの店の前に豪華な馬車が止まった。紋章は入っていない。
止まっている噴水付近の人々や往来中の人々が足を止め、その豪華な馬車に注目していた。
サクラが。
「あの馬車が第一号のお客様です。
ユイミナさん。お出迎えを」
「はい。えっ?デービッシュ?」
「初めまして。一介の御者にございます。
確認なのですが、こちらが貴族御用達のケーキ屋【ベル・ユイミナ】で、間違いございませんか?」
「はい。わたくしが店長のユイミナです。こちらは店員の」
「モリッツでございます」
「後は店舗内で。本日はようこそおいでくださいました」
デービッシュは御者席を降りて、扉を開けて。
「マーガレットお嬢様。着きました。どうぞ」
「ありがとう。こちらが今日新装開店の貴族を唸らせるケーキを出すお店なのね」
「さようでございます」
「ようこそおいでくださいました。マーガレットお嬢様。中へどうぞ」
「ハルサーラ様。行きましょう。エルファサ様もどうぞご一緒に」
「参りましょうエルファサ様。お手を」
「ありがとう。ハルサーラ」
店舗の周りには人だかりができ始めた。
エルファサとハルサーラ、マーガレットが被る十年以上前に貴族夫人の間で大流行だった大きなつばの帽子が目立った。
店の中を見渡せる一面のガラスにも興味が行った。
デービッシュは馬車を出発させ、店の前には近衛姿のアルミスが立った。
そのアルミスに一人の若い女性が。
「あのっ。兵士様」
「はい」
「大変失礼とは思いますが、あのお方は?」
「何か問題がございますか?」
「いえ、こちらのお店はさるお貴族様から
「あぁ。その件ですか。既に解決し。ノネジット陛下からのご連絡で地下牢に居るそうです」
「本当ですか?」
「陛下をお疑いに?」
「滅相もございません」
「金髪のお嬢様はお忍び中の他国の伯爵のお嬢様です。
今の時間は貸し切りとなっておりますのでお控えください」
「まさかですがあの髪型はマーガレットお嬢様?」
「昨日の件が噂に?」
「はい。救世主様です。お目に掛かれてうれしぃ。ああ。直視して良いのでしょうか?」
「店の構造ですから問題は無いですよ。ただ、常識の範囲でお願いします」
「はい。マーガレットお嬢様はここのケーキがお好きなのですか?」
「こちらの国のある貴族。伯爵様の推薦でございます。
ガラスがあり茶器があり、氷で冷やした紅茶。何よりプリンアラモードを提供できると言う事で参りました。
ああ。出てきましたね。プリンアラアモードとイチゴムース。アイスティーですね」
「消滅したあのプリンですか?」
「見た事ございませんか?あぁアイスクリームも出てきました」
「あのっ。中で食することも可能なのですか?」
「ご覧の通りです」
「庶民でも?」
「こちらのお店自体、元々庶民のお店と聞いておりましたが?」
「はい。お幾ら位するのでしょうか?」
「少々お待ちください。
サクラ殿。外で見る事が可能な料金の載ったメニュー表はございますか?」
「はい。こちらの看板にお示してございます」
「背が高くて可愛ぃぃ」
「あぁぁ女性限定のお店ぇぇ」
「はい。男性の目線を気にせずに食べられますよ。本日は新装開店の応援で給仕に一人男性がいるだけです。
テーブルや椅子は貴族のお方達とほぼ同等の材質にデザイン。十年前に消えた陶器製の茶器にシルバーのスプーンとフォーク。
伯爵のお嬢様もご納得の給仕の所作は貴族の屋敷に務めるメイド並。
そうですねぇ。後一時間後でしたら入店可能になります。
お嬢様がた。よろしければ是非」
「「「お嬢様ぁぁ」」」
「お好きなケーキ一点と紅茶又はアイスティー一杯で大銅貨一枚と銅貨三枚」
「ねぇ。お貴族のお茶会。試してみない」
「やってみたぁぁい。ああでもメイドさん。この服装でいいのかしら?」
「畏まったドレスコードは設けていません。
ただ、女性冒険者に多いお腹を見せたり、胸が露わなど半裸状態はご遠慮願います。
こちらのお三方は大丈夫ですよ」
「ありがとぉぉ」
「ここユイミナ店長の妹様。スカッシュ様のお店【暁のエマルミューズ・スカッシュ】で『ベル・ユイミナの服を』と、ご注文なされば見繕って頂けますよ」
「あの大きな帽子は?」
「明日以降でしたら販売できると聞いております」
「髪型は?」
「わたくしを含めた給仕の髪はエマルサーラ商会の系列店。
こちらユイミナ店長の理髪店。店名を改めております。
【ビューティーサロン・ナチュレ】
で、整えております。
お嬢様方の今の髪型でしたら何の問題もございませんよ」
「あそこのお店もどこぞの」
「もう全ての脅威は払拭されておりますよ」
「ぶーてぃ?」
「ビューティーサロン・ナチュレ。自然に美しく仕上げてくれるお店。と、言う意味です」
「「「「髪型変えたぁぁい」」」」
「是非ご贔屓に」
「今はこれでいいのね」
「はい」
「「お嬢様気分味わいたぁぁい。そう考えたらお安いかもぉぉ」」
「兵士様」
「はい」
「お忍びの旅で他でプリンアラアモードやアイスクリームは?」
「わたくしも十年ぶりにこのベル・ユイミナで聞きました。女神様が皆様に許しをされたのでは?」
「ここに並んでも?」
「往来のご迷惑になるといけません。横の方へお並びになり、そこの路地裏の方へ連なってください」
「ルミアス様。並びそうですか?」
「はい。既に五組は?」
「この看板を最後のお方にお願いできますか?」
「持って頂くのですね」
「はい」
【新装開店 ベル・ユイミナ
創世の女神エルファサ様のご認可を頂きました
プリンアラアモード イチゴムース アイスクリーム始めました
アイスティー。冷たくておいしぃぃ。
店内でお嬢様の優雅なひとときを。女性限定。
お好きなケーキ一つと紅茶又はアイスティーで
大銅貨一枚と銅貨三枚。
こちらが最後尾です。
限定販売に付き、無くなり次第終了。
服装は露出が少ない服装に限ります。
お嬢様が半裸では出歩きませんよね】
「ここが最後?」
「そう。並ぶ?」
「エルファサ女神様の許可が出たって。どうする?」
「並ぶ。絶対に食べたい」
悩む二人の前の女性が。
「お決まりになりまして?」
「「食べまぁぁす」」
「はいこの看板持って。お嬢様になる試練よ。そして、お店に協力よ」
「判った。わかりましたわ。おほほほ」
「サクラ。盛況になりそうだな」
「エルファサ様のお陰ですよ」
「それにスカッシュとサロンの方の店の宣伝もしたのか?」
「はい」
「サクラさんありがとぉぉ」
「サクラありがとう」
「いいえ」
「いやぁぁひっさしぶりにプリンアラアモードとイチゴムースはうまかった。
しかし、締めはやはりイチゴの三角ショートだな。
ユイミナ。非常に美味しかった。
また
「ユイミナさん。こちら金貨十枚。気が向いたら、その盾の前に置いてください。勝手に持って行きますからね」
「言うねぇサクラぁぁ
「三十個はどうしたんですか?」
「三人で十五個づつだぞ。もう無い」
「どう割り算をしたんですか?」
「三人居たが二人で十五個で無くなった。おかしいか?」
「エルファサ様。それだと何方かがお食べになっていないのですが?」
「そうなのか。ハルサーラもおかしなことを言うなぁぁ。三人居て二人がぁぁ
サクラ。外にテーブルと椅子。パラソルは出せぬか?」
「何名様がいらっしゃいますか?」
「三人と三人」
「お時間は?」
「ここは幸せな空間だ。まだまだいいぞ」
「はい」




