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 ベル・ユイミナの現状

 ガーリッシュ達が一時間の講義を受け始めた頃、アイファウストはユイミナの店の中に居た。


 「あ あれ?お客様は?」


 「たまぁぁにいらっしゃいます」


 「やはりあれですか?」


 「それで中々定着しないんです」


 「ユイミナ様。お力をお借りてもいいと思いますよ。

 聞くところによりますと、王都の無理難題を次々に解決したとか。

 その手腕をお借りしては?」


 「チェルッシュそれわぁ」


 「いいですよ。遠慮なくどうぞ。

 ただ、スカイメインやポートハウスのようにうまく行く保証は無いですよ」


 「妨害を受けていたんです。例の男爵に」


 「ガジサーダ・ド・ファドレ男爵?」


 「はい。ただ、標的だったので恐らくお客様は戻っては来ないと思います」


 「標的にした理由は?」


 「この場所の立地条件。両隣含め五軒。十年前以前まではこの噴水を囲む店の中で売り上げ上位五店舗でした。

 両隣四件は既に移転。わたくしの店へのいやがらせを避けるために」


 「噴水が止まっている今は好立地では無いですよねぇ」


 「それでもあのように人は行き交い、立ち止まって、集まり座ります。

 未確認ですが、いかがわしい店を出そうとしているとの噂もあります」


 「まぁそんなとこでしょうねぇ。

 四軒の権利書は?」


 「ギルド預かりになっています。他の組織も狙っていますので、抗争の火種とならないように」


 「ハルサーラ様は勿論ご存じ」


 「はい。ただ王都の商工協力会の会員に入れないので何に対する発言力も持っていません。

 スカイメインやポートハウスと同じで背後に貴族です。

 何も対応できません。

 そして、ご存じの通りのエマルサーラ商会。

 民事介入してこない警察が何かの拍子の頼りです。

 美味しさでは勝っているんです。確信を持てます。

 しかし、男爵の息がかかったお店の原価度外視の嫌がらせにどうしても勝てないんです」


 (仰る通り、スカイメインやポートハウスと同じですねぇ。

 ハルサーラ様も言ってくれればいいのにぃ。遠慮して言いにくいのかなぁ)

 「いわゆる外堀を埋めるという方法ですか」


 「はい」


 「その店は、もう潰れるのでは?」


 「その前にここが」


 「なるほどです。借入金は?」


 「母が立て替えてくれています。

 必ず夢を叶えなさいと・・でもこれ以上は」


 「理髪店と共にこれからもケーキ作りはしてきたいですか?」


 「勿論です。でも母に借入金を返済して、単独で黒字にできなければ納得できません」


 「今できるのはイチゴの三角ショートケーキ。ロールケーキとアップルパイですか」


 「はい。多分他の店舗も似たり寄ったり。女神様の規制が入っています」


 「女神様のお力を借りても納得できますか」


 「謂れの無い風評被害を消して頂けるなら。発端さえ頂けたなら自力で立ち直せる自信があります。

 そして、もしできるのなら。母が昔買って来てくれたプリンアラアモードが作りたい。母や妹達にも食べさせてあげたい。

 妹達は覚えが無いと言います」


 (もうね、全力で応援、協力しちゃいますよ)

 「先ずは二つ増やしましょう。はい。レシピ」


 「お写真?」


 「それを真似て下さい。片方はイチゴムースです。レシピはこれです。

 今日はそのレシピで僕が作った物を提供します。足らなくなったらユイミナさん。頑張って下さい」


 「はい」


 「お店の子はあの方だけですか?」


 「はい。こっちに来て」


 「店長。この方は?」


 「木こりさん。と言うの。わたくしの遠い従弟なの」


 「初めまして。モリッツと申します。宜しくお願いいたします」


 「木こりです。モリッツさんはこの店が好きですか?」


 「はい。ケーキもですが店長が大好きです。もぉぉし、まんがぁぁぁいち。の時でもどこでへでもついて行きます」


 「頼もしいですねぇ。分かりました。

 チェルッシュさんとジムさんは食堂なんかの給仕の経験は?」


 「勿論ありますよ」


 「クエストを選ぶ権利は無かったからな」


 「みなさん。ケーキの棚の方へ下がってください。

 はい、良いですよ。では動かないで。えいっ」


 「えぇぇぇ?


 「お貴族様のお茶会のテーブルに椅子のようです。八セットも」


 チェルッシュが驚いたように。


 「モリッツは見た事があるの?」


 「はい。くっそだぁぁ(男爵)が、何かして来る前は時々お貴族からも注文が有ってお届けに行きましたので。その時手伝いで給仕なんかもしていました」


 「ではこれは?」


 「センターポールのケーキスタンドと茶器です。陶器製ですね。って言うかどこから出してきているんですかこれ」


 「今は内緒です。で、後ろを見て下さい」


 「ガラスのショーケースぅぅ。つめたぁぁい。ケーキもぉぉ」


 「はい。それとユイミナさん。これは創世のエルファサ女神様から試食の感想です。真エルファサ教会認定。ケーキ優良店第一号店の水晶の盾です


 ユイミナが。


 「木こり様」


 「あ”っ」


 「えぇぇぇ?木こりさんって何者ぉぉ


 「あ”


 「モリッツ。

 あぁぁうん。木こり様。無理そうですよ」


 「そうですね。

 チェルッシュさん達もご存じ無かったですね。

 このお店の中だけの内緒にしてください。少々問題になってしまうので。

 わたくしイサムとサチの息子。アイファウスト・カミミヤと申します」


 三人が一斉に傅いた。

 チェルッシュが。


 「アイファウスト・カミミヤ王子殿下。数々のご無礼を


 「あまり世間を騒がす事が出来ないんです。

 だからハルサーラ様もユイミナさんもアルミスさんも秘匿していたんです。

 皆様お立ち下さい。

 今まで通りの木こり。フジミヤでお願いできませんか?」


 「「「はい」」」


 「チェルッシュ」


 「なぁにジム」


 「王子様に助けられて・・その


 「バカねぇ。それは別よ」


 「良かったぁぁ」


 「それで王子様。ああフジミヤ様。ユイミナ店長のお店を救って頂けると」


 「モリッツさん。先にも言いましたが、お手伝いをする程度ですよ・・少々お待ちください」

 {アイよ。わたくしも手伝うぞ}


 {来ちゃうんですか?}


 {アイが助けると決めたのであろう}


 {はい}


 {ならばわたくしも手助けするのは当然。アイスクリームと付随するチェリー。ウエハースも許可する。これどうだ?}


 {ありがとうございます。どの様にいらっしゃいますか?}


 {あとで連絡する。サプライズで頼む}


 {はい}

 少々、考え事をしていました。すみません。

 それで、この盾にはこのお店の名前。ベル(belle)・ユイミナの屋号入りです。

 ユイミナさん。ちなみにこのベルは?」


 「母がいいからと」


 「そうですか。多分ですよ。僕の思い違いだったらごめんなさい。

 意味は美人のユイミナだと思います」


 「もう。お母様のバカ」


 「内緒ですよ」


 「勿論です。恥ずかしくて言えません」


 「では。新装開店の準備ですよ」


 「お願いよ。サクラ」


 「「「あぁぁぁメイドになったぁぁ」」」


 「はい。お手伝いいたします。チェルッシュさん。ジムさんもですよ」


 「あらぁぁ?メイド服ぅ?」


 「むかぁぁし見た男性給仕。とても憧れておりました。あれ?」


 「とっても素敵よ、ジム。口調も冒険者じゃないわよ」


 「君もとても可愛い。よく似合ってる」


 「ありがとう。ジム」


 両手を恋人繋ぎで見つめ合う二人。


 「あ”ぁぁ暑くてケーキが溶けそうですよぉぉ店長ぉぉ


 「モリッツったら」


 「皆さん奥へ。アイスティーとホットティー。リンゴジュースの出し方のレクチャーです」


 「「「「はい」」」」

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