冒険者の鑑のホワイトゴッドネス
それから一時間後。
ギルド一階に降りて来た四人とエウマイアー。ガトリング。
既にガーリッシュが騎士爵に叙爵された事が広まっていて、ギルド内の冒険者達が周りを囲むように集まって来た。
「「「「ガーリッシュ様。叙爵おめでとうございます」」」」
「「「「ガーリッシュ騎士爵様。お疲れ様です」」」」
「あぁぁおぉぉ。ありがとう」
「シュベッタ様。先程は無礼な事を申しました。申し訳ございません」
「あたしは爵位は無いよ」
「あの掲示板に【ガーリッシュ騎士爵パーティー・ホワイトゴッドネス】に、失礼の無いように。
と、マウレス・ジルミナ宰相様直々の告知が御座います。
既にあちらに王国監視員が配置です。
申し訳ございませんでした」
「いいよ。あたしも嬉しかったさ。ありがとう」
「こちらこそありがとうございます。失礼いたします」
「ガーリッシュ。俺達も真面目に頑張って、爵位を貰うわ」
「おぉぉ。頑張れよ」
「ああ。じゃクエストに行ってくるわぁ」
「気を付けてなぁ。って、ギルド内どえらい事になっているんだけど。
エウマイアーギルド長。どうなってんの?」
「何かえらく真面目になってんな。
クエストの取り合いとか見た事ねぇぞ」
「あれはあれで問題ですねぇ。
ガトリング」
「あのアホ共がぁ」
「それでドンコ。この状況に至った経緯を後で教えてあげなさい」
「了解」
「ああ。そうそう、ギルド長。あたし達に肩書が必要は判った。
リーダーの叙爵式以外に何か必要あんの?」
「後程と思っていましたが、今が良いでしょうねぇ」
「何それ」
「シュベッタ君とエリンキ君。ドンコ君の肩書が必要なのは陛下主催の晩餐会やダンスパーティー。妃殿下主催のお茶会などに招待されるからです
「「「「えぇぇぇ」」」」
「「「「「え”ぇぇぇ?」」」」
「「「「「何だってぇぇぇ」」」」」
ギルド内が声で振動した。
「わたくしはギルド長としてたまに呼ばれますが、特にシュベッタ君は多いでしょうねぇ
「なんでよぉ」
「ギルドカードのメモ」
「「「「あ”ぁぁぁぁ」」」」
「逆らえますか?」
「い 行かせていただきます」
「ご心配は無用ですよ。冒険者としてはカスミナ君も同席になります」
「「「「そっかぁぁ」」」」
「「「「「なんでぇぇぇ」」」」」
「「「「「カスミナがぁぁぁ」」」」
「ご存じの通りガルカク兄妹はフジミヤ君の奴隷です。
それでガルカク君と一緒にマスケット君とカスミナ君は猫探しや人探し、紛失物のクエストを地道にこなして来たのは知っていると思います。
それが溜まりに溜まっていて、昨夜賊討伐を完了。
奴隷なので公表はされていませんが、マスケット君とカスミナ君はBランクに昇格
「「「「「え”ぇぇぇ?」」」」」
「ガルカク兄妹三人全員Bランク
「「「「「あ”ぁぁぁぁ」」」」」
「猫探しや人探し、紛失物のクエストを凡そ七百件をクリアー。
冒険者の模範。特筆すべきパーティーとして、奴隷では有りますがそれを凌ぐ実績としてノネジット陛下から直々にガルカク兄妹へ金一封と感謝状
「「「「「えぇぇぇ」」」」」
「お妃様からカスミナ君へ、ドレス三着とお茶会への招待を随時受ける冒険者枠の特別招待状を授与なさいました
「「「「「あ”ぁぁぁぁ」」」」」
「「「「「全部マジだったぁぁ」」」」」
「カスミナ君はあのフジミヤ君の奴隷ですから、貴族のお嬢様待遇となります
「もうそんなの奴隷じゃないよぉ」
「「「「「それなぁぁ」」」」」
「何を言っているんですか。
あなた達が知らないだけで、十年以上前の貴族は登城、会合、会食、外遊、各種パーティに奴隷を連れて行き、その品格と素養を競い合い自慢し合っていたのですよ
「「「「「え”ぇぇぇ?」」」」」
「まぁそれが元でいい奴隷を入手しようと闇の奴隷商が出来たと言う黒歴史が有りますが。
ですから、奴隷に関する約定や規定が厳しいんです。どの項目も最終刑は死刑ですからね。
今でも良き貴族や商家に引き取られた奴隷などは案外好待遇なんですよ。
ですからフジミヤ君の奴隷となったガルカク兄妹は借家持ちの三食付きで一日の半分は自由が与えられています
「「「「「はぁぁぁぁ?」」」」」
「フジミヤ君がキッチン、バス、トイレ、庭付きで生活物資が全て揃った家一軒を借り上げ、ガルカク君とマスケット君で一室。
カスミナ君は一人で一室で生活に入りました。
食料はフジミヤ君が支給します。
判りましたか?」
「「「「「全然わかりませぇぇん」」」」」
「フジミヤ君がハルサーラやガーリッシュ達。この近辺の方々から三人の素行を聞いて大変気に入ったようです。
ギルド規定に沿った行動と服装もだそうです」
「「「「「はいぃぃぃ」」」」」
「それとチェルッシュ君とジム君のパーティー【草原の風】はフジミヤ君の専属護衛依頼を受けて同じように借家を与えられました」
「私もなりたいですぅぅ」
「多分ですが無理だと思いますよ。きのうここに居た冒険者は」
「「「「「あ”ぁぁぁぁ」」」」」
「陛下の褒章に話しを戻しますが、他国では案外そう言った事例が有るのですよ。
二桁後半から三桁の報奨金が多いようですが、そう言ったパーティーはひけらかしたり自慢したりしないので、ご存じ無いかもしれませんね。
まぁそうなれば素行に問題ありと判断されますからね。
ノルトハン王国は魔物の出現率が低いのであまりないと言う事です。
判りましたね」
「「「「「はい」」」」」
ガーリッシュ達の周りに冒険者達が集まって来た。
その中の一人の女性が。
「シュベッタさん。一点良いですか」
「まぁ良いよ」
「ホワイトゴッドネスは計画的に討伐にお出掛けになるですか?」
「それはあたしよりリーダーだな」
「まぁ計画的ではあるが、困っている人が居りゃぁ助けるのが冒険者だわな。だからイレギュラーも多い」
「報酬金が見合わなくても?」
「そうだなぁ。ネコちゃん探し。したことある?」
「「「「無いですぅ」」」」
「あれ大体が依頼主が子供なんだよ。だから多くても大銅貨一枚。
で、それを受ける。
実は魔物に追われて居たり、魔物の洞窟に居たり、盗賊の飯を漁っていたりと全く割に合わねぇ場合が往々にして有る
「「「「えぇぇぇ?」」」」
「さっきの話しにも有ったがガルカク兄妹も大変だったと思う。
それこそ命懸けだ。
でもな、飼い主の僕ちゃんやお嬢ちゃんが待っている。なけなしのお小遣いをはたいて。お友達のネコちゃんの為に。
連れて帰るだろ。大喜びで抱き着いて来る。ありがとうって言いながら。
そん時に思う。冒険者に成ってつくづく良かったと。
勿論、手遅れの場合も有る。居なくなっちまっている時なんかはどうしようもないが、遺体が有れば持ち帰る。
それでもその子達は感謝をしてくれる。大泣きになりながら『ありがとう』ってな」
「あぁぁあ。リーダー泣かせちまったぁ」
「俺が悪いの?」
「あのっ。シュベッタさん。確認させてください」
「ああいいよ」
「冒険者って自由な職業では無いんですか?」
「なぁぁんかみんな勘違いしているよねぇ。おめぇらぁもガトリングに叱られていただろう。
冒険者なんかに自由なんてねぇよ。
ギルドの創世の時代からイサム陛下とサチ妃殿下が改定された今のギルドの規律や約定の何処にも自由なんて文言は出て来ねぇ。
創世のエルファサ女神様。魔王を討伐したイサム陛下とサチ妃殿下がお造りになったギルドだぞ。
生半可な職業じゃねぇことぐらい解かるだろう。
技量に見合わないクエストは選ばなくてもいい。そこは自由だ。
遠征費用がねぇのもしゃぁぁない。
だが、おめぇも含めてここで酒代があるなら、掲示板に一年間放置されている・・・
「姉御。無いですよ」
「エウマイアーギルド長」
「色々有りましてねぇ。依頼を受けて頂きましたよ」
「まぁいいや。
でな。冒険者は規律や約定で死刑宣告を受ける。
冒険者程にガチガチに懲り固められた職業は他にはねぇよ。
国軍や警察の方がまだマシなぐらいだよ。
だってそうだろ。
さっきも言ったが魔王を討伐したイサム陛下とサチ妃殿下が作ったんだぞ。自由満載な訳があるか。
冒険者は魔物の討伐をして。一般人を命懸けで助け、命懸けで野宿を楽しみ、荒野で食事を楽しみ、魔物との命の駆け引きを楽しむ者。
まぁそこが自由かな。
それらを解かって、理解し、納得して、命を掛けて冒険者になった。
今日は酒を飲んでいる奴は居ねぇが、イサム陛下とサチ妃殿下が見たら事情を聴いて、無事の帰還でおめでとぉぉ。ならいいが、場合によっちゃぁその場で処刑だぞ。
ガトリングが口を酸っぱくして言っていて、耳にタコができるほど聞いているだろうが」
「エウマイアーギルド長。どったの?」
「き 気にしないで下さいガーリッシュ」
「ああ」
「冒険者は自由な職業なぁぁんて誰が言ったんだろうねぇ。ああ。裏ギルドの残党かなぁ
「「「「あぁぁぁぁ」」」」
「いったいおめぇらぁどうしたんだ」
更にシュベッタの周りには女性冒険者が集まり。
「この服を何処で買ったかって?
何で知りたいの。
てか、そう言ぁぁおめぇらビキニアーマーはどうした」
「ビキニアーマー禁止だった」
「今更かよ。
まぁいいか。
貴族や怪しい大店が背後におらず、魔王軍討伐戦に従軍して過酷な実戦経験から生み出された生地と装飾。
世界で唯一、イサム陛下とサチ妃殿下のアイデアを頂いて機能性も品質も良くて、この都で一番安い店
「「「「スカッシュさんのお店?」」」」
「しかねぇだろ」
「何着持っていますか?」
「ああ。最低で三着だな。今は五着持ってる」
「何か意味はあるのでしょうか?」
「そりゃお前、冒険者なら当然知っていると思うけどな。
あたしも当然ビキニアーマーは持っている。
もっともお前らぁより機能性重視だ。湖や川用で現地で着替えるけどな。
草原や荒れ地、森や鬱蒼とした背丈の高い草むら。沼地や湿地帯。崖が多い山岳地帯。雪原や雪山用だな
「「「「やっぱりぃぃ」」」」
「どうした?」
「靴とかも?」
「地面の状況に合わせて履き替える。当然だろ」
「他には?」
「他にはって?」
「身を護る物」
「ああ。それか。
そういやぁぁ何度もお世話になったなぁぁ
「もしかして、それが無かったら死んでいた。とか?」
「ああ。間違い無くこの四人は死んでいたな。
ゴブリン達の無数の投石で。
魔石をはめ込む覗き窓付き盾と、おめぇらがでぇぇっきれいなイサム陛下考案のヘルメット」
「防御魔法で防げるのでは?」
「あんたはアホかい。
まぁ無限に売るほど魔力があるならどうぞご勝手に。
スカッシュの店に行きゃぁ魔王軍討伐戦で魔力枯渇で死んで逝ったお方達の理由が掲示してあるよ。
その中でビキニアーマーは常に防御魔法を使って魔力を消費しているから、魔法がいざと言うとに使えねぇ。
だから、ビキニアーマーは断トツで死亡率が高いんだよ。
そんなビキニアーマーを守らなきゃならねぇから、余計に被害が拡大する。
言ってみりゃぁビキニアーマーに殺された討伐兵も多数だったようだ。
陣形を乱すし、統率も取れず、性欲もそそって無茶苦茶。だから最高刑が死刑で禁止。
で、体も冷やすから体力も消耗。夜ぐっすりお休み。朝起きたらすっぽんぽんで、周りが素っ裸の男達。
襲われても抵抗が出来ない。
そう言うやつに限って、イサム陛下とサチ妃殿下に文句を垂れていたそうだな。
実際にビキニアーマーで出陣して被害甚大でそいつは生き残った。命令違反で死刑にされた奴もいると書いてある。
それが魔王戦で起きた事実だ。
あたしゃ魔力が少ないからね。高機能の布地に守ってもらって、盾とヘルメットで魔力は温存するんだよ」
「スカッシュのお店に盾とヘルメットは売っていないのですが」
「ああ。体格なんかに合わせて作るから特注なのさ。
あたしの盾とヘルメットでドンコが身を守れると思うのかい?」
「ヘルメット。小さい。被れない。盾。小さい。守れない。無理。死んじゃう」
「「「「やっぱりぃぃ」」」」
「「「「ありがとうございましたぁぁ」」」」
「ああ。良いよ。って、何だあいつ等?」
「あいつ等、仲間の男達の方は聞かなくてよかったのか?」
「男向けはそこいらの武器屋に売ってるからいいんでねぇの?知らんけど」
「あんなボッコをか?
デービッシュの息の掛かった店じゃねぇとヘルメットに小石が当たっただけで【パカッ】って、割れるぜ」
「国軍の鎧ならいいんでねぇの」
「死を恐れないゴブリン様相手に?訓練も鍛錬もしていない冒険者がフルプレートアーマー?魔力の消費も半端なく視界も悪い。
あっという間にゴブリン君達に抱き付かれて終わっちゃうよ」
「エウマイアーギルド長さんよぉ。みぃぃんなに教えてやんな。死んじゃうよ。って」
「知っているはず。なんですけどねぇ。
まぁ注意喚起はしておきますよ。
シュベッタご苦労さんでした」
「なぁぁんもしてねぇさ。うんじゃぁ家に帰るわ」
「ギルド長。またなぁ」




